31―後の祭り
本日、オマケあります。
ショーマは魔人達を配下にした。意思伝達魔法の使い方をレクチャーした後、レオン達の居る部屋へ皆で移動する。
隣室でうっすらと話を聞いていたソラもシオン達の意見に賛同していた。魔法の内容的に隷属とは状態が違うが、自分が庇護を受けると言う概念が無く全く思い浮かばなかったらしい。きっとシドも驚くよと笑っていた。
ショーマは結局皆の言う通り隷属魔法を改名する事にした。ただ一悶着があり、紆余曲折を経て不本意ながら籠絡魔法となる。
魔族にも試してみようとショーマはレオン、ヒルダ、ナルアルトの三人に実験を持ち掛ける。了承を得た上で試してみるとヒルダとナルアルトは魔法が掛からなかったが、レオンだけは魔法が掛かった。
シオンが再度分析をしてレオンが獣化できる事が魔物と判断されたのでは無いかとの見解に落ち着く。
さすがに王様を配下にしたら不味いよねと魔法を解こうとするも、特に制限が無いのであればそのままで良いとレオンは言った。
いやいやダメでしょとヒルダに説得を頼むも、魔族から魔王が出るのだし王同士が通じているのは便利では無いか?と逆に説得されてしまう。
最終的に魔族の王がショーマの配下になると言うとんでも無い状況に陥った。
◇◇◇
ショーマ、ソラ、ソロンの三人はショーマ達が借りている部屋に戻って来た。
ショーマは部屋に入るなりベッドに沈む。俯せで寝転がりながら、この状況を覆せないかと考えている。
ソラからソファに座って待っててと言われたソロンは手持ち無沙汰に状況を見守る事にした。
「──あーもう!実験なんかしなきゃ良かった!!」
ショーマに妙案は思い浮かばなかったらしい。自身の迂闊さにバタバタと激しく暴れ始めた。ソラも流石に止める。
「こらこら、暴れないの」
「だって、成り行きとは言え王様従えちゃったんだよ!!」
ショーマは頭を抱えて蹲った。ソラはどうしたものかと頭を捻る。そっとベッドに腰掛け、ショーマの背中をポンポンと叩いてあやしながら話し掛けた。
「ショーマ。ソロン君だってレイカーの長だし、リンドさんだってドラゴンの長だよ。それと同等と考えて良いんじゃないか?」
するとショーマはがばりと起き上がり、ソラに反論する。
「全然規模がちがーう!レオンさんは一種族とか、そんな小さな単位の長じゃないんだよ!?世界を又に掛ける一国の王様じゃん!!」
「別に魔族を治めろと言われた訳じゃないんだから今までと変わりないだろう?ちょっと偉い人と繋がっただけじゃないか」
ソラの言葉を受けてショーマは考え込んだ。
「・・・それもそっか。ちょっとした手違いで総理大臣の電話番号をゲットしたようなもんか。うん。そう思う事にする」
「よくわからないけど、落ち着いた?」
「もう悩んでも仕方がないって事だよね。割りきる事にした」
ショーマはレオンを配下に加えてしまったことを悩むのは止めた。ふと前を向くと今まで静観していたソロンと目が合う。ソロンの幼子を見守る様な眼差しにショーマは少しだけ気まずい。
「──待たせてごめんね。家まで送るよ」
「よろしくお願いいたします」
ショーマはソロンと一緒に複製したベッドと鏡を持ってレイカーの湖にあるソロンの家の裏手に転移した。
ソロンの家にベッドを設置して、鏡は全てのテントに運び込む。鏡は女性達にとても感謝された。
◇◇◇
翌朝、ショーマは日の出と共に起き出してソラと日課の朝練を行う。
一通り身体を動かすと水を浴びる為に浴場へ来た。顔を洗いに来た人がちらほらと居る中、ショーマは衝立に入り水を被る。
ふぅ、運動して火照った身体に井戸の水が気持ちいい!でも、そろそろお風呂が恋しいな。
「父さん、一度家に帰らない?ゆっくりお風呂入りたい」
ショーマが送風魔法で濡れてしまった髪を乾かしながらソラに提案する。
「そうだね。暇をみて一度帰ろうか」
サッパリした二人は朝食を食べる為に食堂へ向かった。
今日ショーマが選んだ朝食は鳥肉の卵とじ煮定食。甘辛く煮込まれた鳥肉、玉ねぎと半熟気味な溶き卵の絶妙なハーモニー。
ショーマは躊躇無くそれをご飯にぶっかけ親子丼にしていた。器用に箸を操り胃袋へと収めていく。その箸の速度を見れば甘辛いその味に大満足なのは容易に想像出来る。
はぁ。昔から知ってる味って凄く落ち着く。醤油なんかはやっぱりジャポネから取り寄せてるのかな?あぁ早く行ってみたいな!
最後に付け合わせの沢庵をポリポリと齧り、温くなった烏龍茶風味の世界樹茶を啜った。
ずずず
ほぅ。世界樹の葉も発酵させれば烏龍茶っぽくなるんだね。一昨日ルーブさんに淹れてもらったお茶はハーブみたいにただ乾燥させただけだったもんな。
蒸せば煎茶っぽくなったりするのかな?そう言えば、あの研究書には蒸すパターンとそれを焙煎するパターンは書いて無かった気がする。あと粉末にした抹茶も。
俺、ほうじ茶とか抹茶菓子が好きなんだよなー。誰か研究してくれないかな。自分で研究してもいいんだけど、あまり時間がとれないしな。そもそもウチの世界樹でも同じ様に作れるのかな?
そうだ。こっちの世界樹の苗とか挿し木できる枝とか貰えないかな。花も実もどうなるか気になる。前世の記憶をうまく使えば研究書にあった食べ方以外を編み出せるんじゃないかな。
女神様が手ずから植えなければ、魔力製造能力の無いちょっと栄養価が高いだけのただの樹木と変わらないって言ってたし。あとでルーブさんの所に相談しに行ってみよう!
「ショーマ、そろそろ行こうか?」
ショーマが空の湯呑みを睨み付けながら世界樹について考察していると、ソラが話し掛けてきた。
「あ、うん。ごちそうさまでしたっ」
二人は食べ終えた食器を片付け、一度客室に戻る。そして地図など必要な物を持ち昨日言われた通りの時間にヒルダの部屋へ向かった。
「おはよう」
ヒルダの部屋にはヒルダしか居ない。
「ヒルダさん、おはよ!他の人は?」
「おはようございます。まだ早かったですか?」
「ほほほ。今から別の場所に移動するのじゃよ。着いて来るのじゃ」
ヒルダはそう言って窓へ向かい窓枠に足を掛けた。
「えっ、ちょっと、えっ!?」
「何を戸惑っておるのじゃ?置いていくぞ?」
ヒルダは翼を広げ、窓から外へ飛び出した。ショーマとソラも慌てて後を追う。
「ヒルダさんといい、レオンさんといい。窓は出入口じゃないんだよ!?」
「そうかの?出られる場所から出れば良いと思うのじゃが?」
「常識はどこに!?」
ショーマの突っ込みもなんのその。ヒルダはとある場所に向けて飛んでいく。
昨日ショーマが飛ぶ練習をした広場の更に先に大きな建物が見えてきた。そこが目的の場所らしい。徐々に速度を落としてヒルダはその大きな建物前にばさりと着地した。
目の前の建物はとにかく巨大。そして洋館の様な上品な佇まいの城とは違い、太い丸太で組まれた頑丈そうで無骨なログハウスだ。
ヒルダの先導でショーマ達はその大きな建物の中に足を踏み入れる。
玄関ホールのそこはそれなりに広いが、複数の扉と奥に伸びる廊下、上に上がる階段があるだけで城にあった絵画や工芸品などの装飾類が一切無い。機能的と言うよりは粗野と言った方がしっくりとする有り様だ。本来客をもてなすような建物では無いのだろう。
「ヒルダさん、ここは?」
「こっちは実動部隊の本拠地じゃ。ゴテゴテと飾り立てる必要も無いから向こうに慣れるとちと淋しいかの?」
ショーマはへぇーと感心しながら、前をスタスタと歩くヒルダに遅れることなく着いていく。
ヒルダは一階の長い廊下の一番奥、突き当たりの部屋の前で止まった。
「ここが大会議室。まぁ、作戦本部と言ったところじゃな。入るぞ」
ヒルダはノックもせずに扉を開いた。
☆オマケ☆
「やっぱ庇護魔法だとしっくりこない!」
『でも、内容は庇護だと思うが?』
「俺別に魔法掛けた皆を守って無いもん」
『じゃあショーマ君は何ならいいの?』
「うーん。従属魔法とか?」
『ハァ。だから、さっきからその魔法は従えて無いと言っているだろうが』
『友好、は対等な雰囲気からして違いますね。ソロンさんはどう思いますか?』
「ワタシですか?そうですね。誑し込まれたと言うか、籠絡されたと感じました。一番しっくりとする言い方は囲い込まれたでしょうかね?」
「囲い込み…内々定だね」
「内々定とは何でしょうか?」
「あ、今のは冗談だから気にしないで!」
『なぁショーマ君、さっきソロンさんの言った籠絡がいいんじゃないか?』
「籠絡って、そんな色魔みたいなのやだよ」
『あら。それでは誘惑ですよ?籠絡は言葉巧みに手懐ける事です。確かにそれが今まで出た案の中で一番合っていますね』
「いや、手懐けるってなんなの!?」
『ショーマ君の魅力でどんどん魔物を籠絡して行くんだね!あなたに着いて行きます!って感じ?』
「ミオンさんまで!?」
「確かにミオンさんの仰る状態ですね。最早ワタシは崇拝でも良いような気もいたします」
「それ何の宗教!?もう、籠絡魔法でいいよ!!」
隷属→庇護→………→籠絡魔法に落ち着いた。
◇◇◇
ショーマ「やらかしたー」
朝木 「ドンマイ。まぁ、予定通りだ」
ショーマ「…マジで?」
朝木 「うん。マジでマジ」
ショーマ「オゥノォー」orz
ショーマがレオンを従える…
違った。籠絡するのは予定通りです!
ただ、本当はもっと早い段階で配下にする予定だったんだよ…
もうやーね。
朝木の脳ミソったらすぐ展開を忘れるんだから。
。。(;_ _)σ∥
次回、ニューカマー!です。
今度こそ、何処に行くか相談するよ!
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
キャーっ!♪ε=(ノ〃∇〃)ノ
嬉しすぎて走り抜ける朝木↑
※次回更新は10/21(月)です。よろしくお願いします。




