30―顔合わせ2
大変遅くなりました。
本日オマケあります。
ショーマ達の集まる客間にシオン、ミオン、ルーブの三人がやってきた。別の場所に住む魔人との交流など無いソロンは一瞬不安な顔を見せるも瞬時に隠した。
『レオン様、お待たせいたしました。ショーマさんの隣にいらっしゃる方が魔人の方ですか?』
「ああ。ルーブ達も挨拶をしたらどうだ」
レオンの言葉に三人は畏まった。そして自己紹介を始める。
『わたくしはフェール族のルーブと申します。ここディラントで世界樹の管理を任されています』
ルーブがスカートの横を摘まみ、ちょこんとお辞儀をする。まるで人形劇の一幕の様だ。
『俺はヴェルエルフ族のシオン。元はここの者では無いが、今は魔族に世話になっている。同じ魔人として親交できたら嬉しい』
シオンは堂々と言ってから右手を胸に礼をした。偉そうな口振りだが、きちんとソロンの事を敬っているらしい。
『僕はシオンの弟のミオンです!仲良くしてね』
ミオンはソロンに近付いて握手を求めた。シオンに馴れ馴れしいだろと叱られるも、いいでしょ?と返している。
「レイカー族の長、ソロンと申します。よろしくお願いいたします」
ソロンはミオンに対して自身の手を差し出し握手をする。そして改めて自己紹介をした。
部屋には少しだけ張りつめた空気が漂っている。
「互いに親睦を深めた方が良いじゃろ。ナル、隣の部屋へ案内するのじゃ」
ヒルダの一言でソロン達は隣の部屋へ移動した。
「ソロン大丈夫かな。普段他の人に会わないから」
「うん。少し心配だね。顔も強張っていたし」
ショーマとソラはソロンが心配らしい。
「まあ、大丈夫だろう。そんな事よりナルの書いた報告書を読ませて貰ったが、ショーマはかなりの無茶をしたらしいな」
「え?どこら辺が?」
レオンの指摘にショーマはキョトンと見返した。
「最初からだ。いくら女神様に請われたとは言え、単身で城に乗り込むなどありえん」
「え?それはミニシドさんと一緒だったから大丈夫だよ!それに、友達の家に遊びに行っただけだし」
「だとしても、我々に連絡をしておいて欲しかったのだが」
「レオンよ。ショーマだって頼まれたからやっただけの事じゃ。文句を言うのはお門違いじゃよ」
「しかしだな。ナタリーに一言伝えてくれるだけでも大分違っただろう」
「あー、ナタリーさんね。ナタリーさんが魔族だっての卒業するまで知らなかったんだ。女神様が言い忘れてて」
「「なに!?」」
レオンとヒルダは二人して驚き、声が揃った。
「そう言えばナタリーから問い合わせが有ったか」
「そうじゃ。学校にドラゴンが紛れて居るが何か知っておるかと。諸々の手配はしたが人間だと思うておったからの」
「すぐに女神様に確認をしたよな?通うのは人間じゃないのか?と。その問い合わせで竜人だと初めて聞いたのだったか」
「ナタリーへの返答にも少し手間取ったからの。もしかしたらショーマが既に知っているものと思うておったのかもしれん」
レオンとヒルダは難しい顔をしながら当時を思い出してあれこれと話し合っている。
「ま、全部まるっとキレイに片付いたんだから良いじゃん!ね、父さん」
「そうだね。結果的にソロン君達も助けられたからね」
ショーマとソラの言葉に、魔族のツートップはガックリと肩を落とした。
ショーマがお茶を飲もうとカップに手を伸ばすと、思い出した様にヒルダが話しかけてきた。
「そう言えば、飛ぶ練習は捗ったかの?」
「うん!結構ね!」
ヒルダの質問にショーマは意気揚々と答えた。こんな事やあんな事をしたよとヒルダに熱弁している。ヒルダもそれは凄いと興奮気味だ。
「ヒルダ、人手が増えて良かったな」
「ほほほ。そうじゃな。しかし、ほぼ一日で修得するとはの。ショーマは魔力操作の天才じゃな」
「えへへぇ。まぁ、実際どれだけ飛び続けられるかはやってみないと判らないけどね」
「あと数日練習すれば歩くのと同じ様に考えなくても飛べる様になるよ」
「そうなの?」
ソラの言葉にショーマは首を傾げる。
「たぶんショーマの感覚はドラゴンに近いだろうからね。僕らは飛ぶのも歩くのも同じことなんだよ」
「へぇー」
「どうやら鳥人の感覚とは違うみたいじゃな。我々はどれだけ飛ぶことに慣れても常に集中せねばならぬのじゃよ。集中を切らすと魔力が霧散してしまうからの」
「ふーん」
俺とヒルダさん達とでは違うのか。魔力が霧散するって事は翼が消えるってことでしょ?俺のは一度作れば消そうと思うまで消えないもんな。種族が違うし、そんなもん?
ショーマが納得しようとしていると、隣の部屋からナルアルトがやってきた。
「ショーマ様、魔人の皆様がお呼びなのですが少しお時間よろしいでしょうか」
「よろしいですよー!ちょっと行ってくるね」
ショーマはナルアルトに着いて隣の部屋に移動した。
「用ってなにー?」
ショーマは部屋に入るなり質問を投げる。
この部屋はソファではなく、椅子と長テーブルが設置されていてちょっとした会議室の様になっていた。
『ふふ。まずは座ってください』
ルーブに言われるまま、ショーマは柔らかい座面の高級そうな椅子に腰をおろした。隣に座るソロンは来たときの様に人間に変身している。
『ショーマ君、ソロンさんを従えていると言うのは本当か?しかも隷属と言う形で』
「うん。そうだよ」
シオンが難しい顔をしてショーマに確認してきた。ショーマの返答に腕を組み更に考える。眉間の皺でさえもその美貌を彩っていた。
『──よし、俺にもその魔法を掛けてくれ』
「え?俺は嬉しいけど、良いの?隷属魔法だよ?」
『ああ。ソロンさんの話ではショーマ君は無理強いをしてこないって話だからな』
「そりゃ基本的人権の尊重はするよ!ストップ理不尽!」
『はははっ。なにそれ!』
『うふふ。ショーマさんは、面白いですね。ふふ』
「そんなに笑わなくてもいいじゃん!」
ショーマの宣言にミオンとルーブが声を立てて笑う。ショーマはプイッとそっぽを向き、シオンの眉間の皺は大分薄まった。ソロンはそんな皆を嬉しそうに見ている。
「もう!じゃあ行くよ!」
『ああ、来い!』
シオンが答えたと同時にショーマは隷属魔法を掛ける。シオンの足元に青白い魔法陣が現れた。そして座る椅子も一緒に光の円柱に閉じ込められる。一拍置いた後、その光は魔法陣と共に消えた。
シオンは強敵に挑む様に気合いを入れた表情をしていたが、徐々に困惑顔となり終には呆れ顔に変わった。
『ショーマ君、やる気あるのか?』
「ふぇ?ちょーやる気満々だよ?もうシオンさんとは繋がったし。ほら、ビョンビョンしない?」
ショーマはシオンとの繋がりを弾く。
『それは判るが、これが隷属魔法?名前が違うだろう』
「みんなそう言うんだよねー。俺的には従えてるつもりなのに従える気の無い隷属魔法って良く言われるー。でも、元は奴隷紋章だよ」
シオンは自身に掛けられた魔法を解析しているらしい。身体がほんのり緑に光っている。
『隷属と言うより加護、いや庇護か?うん。これは庇護だな』
「庇護かぁ。守ってるわけでも無いんだけどな。あ、そういやリーナさんの使役魔法の方が強いって言ってたっけ。俺が隷属魔法を掛けた魔物も使役してたって言ってたな」
「ショーマ様の魔法は暖かいですからね。隷属魔法とは違いますよ。庇護と言われると納得出来ます」
ソロンがシオンの分析に太鼓判を押した。
『もうその魔法は魔王の庇護って名前の方が良くない?ショーマ君は魔王になるんでしょ?僕にもその魔法掛けて♪』
『わたくしにもお願いしますね』
「もう名前は何でもいいや。よろしくね」
ショーマはミオンとルーブにも隷属魔法、いや魔王の庇護魔法?を掛けた。
☆オマケ☆
別室、魔人達のお話
『ソロンさんはどこに住んでるの?』
「ワタシはシャインレイの首都ラアイテの西側にある森に住んでいます」
『シャインレイってモミール大陸の東端だっけ?』
『ここからだとずっと東だな。いや、西回りの方が近いか』
「そう言えばこの星は球体でしたね」
『そうですね。ショーマさんとはどの様に知り合ったのですか?』
「月の綺麗な夜に突然ワタシどもの住む湖にいらしたのです」
『なんてロマンチックな出会いなんでしょうか』
「ハハハ。最初は敵だと思い攻撃をしてしまったんです。最終的は魔力量に圧倒されましたが」
『あぁ、朝の大放出はビリビリ凄かったらしいよ』
『衛兵の皆様が大騒ぎをしてましたね』
「そうだ、シオンさんとミオンさんはここでは無い所のご出身なのですか?」
『ああ。ヴェルの森と言う場所に住んでいたのだが、50年前に人間に攻め滅ぼされてしまったんだ』
「それは…なんと言ったら」
『気にするな。人間の生息域近くに住んでいる魔人の定めだ』
「確かに。ワタシ達も危うく絶滅する所でした」
『僕は小さすぎて全然覚えて無いんだけどね!』
「そうなのですか。ミオンさんは今おいくつなのですか?」
『僕は53歳だよ!当時は3歳で、にぃさんは28歳だったんだ』
「では今シオンさんは78歳なんですね」
『そうだ。ソロンさんはいくつなんだ?』
「ワタシは126になりましたかね?」
『じゃあ、ルーブさんが一番お姉さんだね!』
『ミオンさん。女性に歳の話は振るものではありませんよ』
『あ、ごめんなさーい』テヘっ
◇◇◇
別室ではそんな感じで駄弁っていました。
次回、優先順位。です。
やあっっと、どこをどう回るのかの話になるよ!
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※次回更新は10/18(金)になります。