7―ラアイテのお祭り
翌日、ショーマ達は杖の受け取り時間まで街の祭りを見ることにした。
宿の外階段を降りていると、大通りの様子が一望できる。
「うわぁ、すごい人混みだね!」
なんだかすごくワクワクする!ちょー楽しい!
「そうだね。ウィス、迷子にならないでね?」
「大丈夫だよー!屋台もたくさん出てる!あ、父さんあれ食べたい!」
ショーマは何かを見付け、急に駆け出してしまった。
「ウィス!ちょっと待って!」
ソラが伸ばした手は空を切る。ショーマは身体が小さいので人混みでもどんどん進んでいくが、ソラは完全に取り残されてしまった。
やってしまった。手を繋いでおけば良かったな。あんな勢いで駆けて、ショーマは一体何に引かれたんだ?
ショーマはどんどん進んでいく。暫くすると、ソラとはぐれた事に気付いた。
やっば。ソラさんとはぐれた。また心配かけちゃう。そうだ。あれ、使えるかな。
ショーマは道路の端に寄り、目を閉じ意識を集中する。
実はソラに隷属魔法を掛けていたのだ。
~~ 隷属魔法の開発中 ~~
よし、これで魔物を従えられるはず!実験したいな。あ、ソラさんに頼んでみよう。
「ねぇ、ソラさん。ちょっと実験に付き合って欲しいんだけど」
『何を試すんだ?』
「ちょっと隷属魔法を試してみたくて。ちゃんと最後に解くから。お願い!」
『いいぞ。何かすることある?』
「そのままで大丈夫!行くよ?」
ショーマは隷属魔法をソラに向けて展開した。
「ソラさん。どー?どこか変な所ない?」
『うーん。従えられてる感じが無いよ?』
「あれ?一応魔法は成功したはずなんだけど」
ソラは魔法の内容を吟味し始める。
『僕を従えるには出力と強度が足りないのかもね。この感じならその辺の魔物は大丈夫だと思うよ』
「さすがにドラゴンには俺の魔法は効かないか」
『ははは。伊達にドラゴンやってないからね。ふーん。この魔法は自我までは従えないんだ』
「うん。自我を奪っちゃったら、その魔物は命令に従うだけの兵器になっちゃうから」
『そっか。これはショーマらしい優しい魔法だね』
ショーマは恥ずかしそうにそっぽを向く。
「じゃ、そろそろ解くね?」
『いや、解かなくて良いよ。ショーマと繋がってる感じがあるから安心できる』
「そー?分かった」
~~~~~
ショーマは無数の魔物達との繋がりの中から存在を選んでいく。一際大きい存在を見付けた。
あ、これがソラさんだ。
ショーマはソラの存在を手繰り寄せていく。すぐ近くからソラの存在を感じ始めた、その時。
「ウィス!やっと見つけた!」
ショーマは肩をビクッとさせて、目を開いた。
「父さん!」
「はぁー。見つかって良かった」
ソラは肩を落とし、安堵する。
「父さん、ごめんなさい」
「良いよ。繋がりを辿って来たら見付けたから。ウィスが手繰り寄せてくれたからね」
ソラはショーマの頭を撫でた。
「でも、また居なくなったら困るから手は繋ごうね」
「うん!」
ショーマはソラが差し出してきた手を握る。
「それで、何に向かって駆けていたの?」
「えっとね。あの屋台。ずっと昔に食べた事がある物に似てたから」
「へぇ。じゃあ、食べてみようか」
「うん!」
ショーマとソラは屋台に並んだ。その屋台では、焼きそばの様な物が売られている。
「へいらっしゃい!いくつだい?」
店主に声を掛けられ、ショーマは注文する。
「1つちょーだい!」
「あいよ!銅貨5枚ね!」
「はい」
ソラは革袋から銅貨5枚を渡して、商品を受け取る。
「まいど!熱いから気を付けて!」
「ありがとー!」
ショーマとソラは焼きそばの様な物を買い、道端のテーブルへ移動する。
「これで銅貨5枚もするんだね」
「たぶんお祭り価格じゃないかな?出店料とか掛かるだろうし。
これは・・・焼きパスタかな。焼きそばだと思ったけど。これに似た物を食べたことがあるよ」
「へぇ。じゃあ早速食べてみたら?味も同じだといいね」
ソラはショーマに焼きパスタを渡す。
「いただきます!」
ショーマはフォークを使い、一口食べた。
「おいしい!!塩加減が絶妙!父さんも食べてみて!はい、あーん!」
ショーマはパスタを巻いたフォークをソラへ差し出す。ソラはパクリと口に入れた。
「おー。これは美味しいね」
「難しくないから母さんならすぐ作れると思うよ」
「そうなんだ。家に帰ったらお願いしてみようかな」
ショーマとソラは更に何軒かの屋台を巡り、お腹を満たした。
昼を過ぎる頃、祭りのメインイベントである山車の行列がやってきた。
「みんな通りの中心を見てるけど、何かあるの?」
「あぁ、ウィスは見えないのか。肩車をしてあげようか?」
「いいの!?やったー!!」
ソラはショーマを肩に乗せる。
「おぉー!高いね!あ、何か行列が来てるんだ。すっごくカラフルだね!」
「そうだな。これは何のためのお祭りなんだろうね」
すると、通りがかった金髪の恰幅の良い女性が声を掛けてきた。
「あら?このお祭りを知らないの?」
「すみません。この街の住人ではないので。よろしければ教えていただけませんか」
「なるほどね。このお祭りはね、今年植えた作物の豊穣を祈ったものよ。あの車にいろいろなものを載せて、女神様にお願いしているの」
「ふーん。女神様にね。教えてくれてありがとう!」
「ありがとうございます」
「全然気にしないで。お兄さんは格好良いし、お嬢さんも可愛いし、良い目の保養になったわ。じゃあ、楽しんでね」
女性はそう言ってその場を離れた。
「もうお嬢さんて言われるの、いい加減慣れたよ」
「ははは。ウィスは母さんに似て可愛らしいから仕方が無いよ」
「父さんまでそんなこと言う!」
「まぁまぁ。ほら、また何か来たよ」
「ほんとだ!」
ショーマとソラは暫くその場で祭りを楽しんだ。
ショーマ「なんでまだ街編?」
朝木 「さ、さぁ?」
女神様 「きっと魔法が思い付かないんだよ」
朝木 「ひ、ひゅ~」
ショーマ「口笛で誤魔化してる」
朝木 「と、とりあえず、もうすぐ学校編が始まるから!」
魔法とか難しいです。上手いこと体系を作れるかな・・・。
それより、ソラが超お父さんしてて、個人的に満足です!立派なイクメンですね!
応援して頂けるとうれしいです(^^)
来訪だけでも、大感謝\(^^)/