24―遠距離通信魔法
遅くなりました。
ナルアルトがヒルダの部屋から出ていくと、ヒルダは残っている光鳥の実演を始める。
「さて、最後の光鳥じゃが。これは相手も同じ魔法を使える者でないと発動せぬ。そして同じ者が用意した1対の鳥でないと使えぬのじゃ。一つは自分用に、もう一つの鳥は相手に向けて飛ばす必要がある」
ヒルダはそう言うと、手を前に出してまた空間を撫でる。テーブルの上で放置されていた黄色の鳥の隣に徐々に白い鳥が姿を表した。
「どちらか一体を相手に送って、相手がその鳥に魔力を受け渡して初めて連絡が可能になるのじゃ」
「どれくらいの距離まで話せるの?」
「そうじゃの。魔法を行使する者次第の所はあるが、わたしならここからブルネスの西側くらいまでは届くかの」
「へぇー」
何ヵ所か基点になる人が居ないとこの星全体はカバー出来ないんだね。なんだろ、超長距離で話せる無線みたいな感じ?母艦と戦闘機みたいな?あぁ、わくわくするなぁ♪
ショーマはソワソワとし始めた。ヒルダはどうしようかと考えている。
「うむ。とりあえず近場のシオンで良いかの」
ヒルダがそう呟くと、白い鳥は羽ばたき世界樹のある方へと飛んでいく。
「ねぇヒルダさん、シオンさんって人は鳥人じゃなくて魔人なんでしょ?大丈夫なの?」
「あぁ、シオンは魔人じゃが光鳥が使えるのじゃ。そう言えば、昨日ルーブから紹介されたのか?」
「いんや、エルフが二人居るよって教えてもらっただけ。直接は話してないよ」
「ふむ。エルフ族と言うのは総じて器が大きく魔力操作が巧いから種族関係なく様々な魔法が使えるのじゃよ。あと、片言じゃが人の言葉を話すから──っと、返って来たの。シオン、今大丈夫かの?」
徐にヒルダの前にある鳥の後頭部辺りからショーマの後ろの壁に向かって映像が投影された。そこには昨夜ショーマが遠目に見た紫色の髪の青年が映っている。映像からも彼の容姿はかなり整っているのが見てとれる。が、それよりも印象的なのはその耳だろう。人間のそれよりも細く長く尖り、まるで笹の葉の様な形をしている。
すげー、リアルエルフだっ!
ショーマはソファの背凭れにかじりつき、後ろの壁を見て声もなく感激している。
ソラも後ろを振り返り、彼がヴェルエルフのシオン君かと顔を覚えている。
《少シ、待テ、クダサイ》
ヒルダが鳥に向かって都合を聞くと鳥から少し高めの男性の声が聞こえた。映像の方はとても話しにくそうに口を動かしている。
「分かったのじゃ。都合が良くなったら話し掛けてくれ」
ヒルダの言葉にシオンはコクリと頷いた。シオンは鳥から目線を外し何かをやっている。暫くすると彼の背景が上に流れた。どうやら飛翔したまま光鳥を受けたらしい。ショーマは降下していくシオンをただぼーっと見ていた。
「ショーマ、こちらに来るのじゃ」
ヒルダが自分の隣を叩いた。ショーマは素直に移動する。
「シオンが落ち着いたら紹介してやろう」
「まじで?やった!」
ショーマは単純にエルフと知り合いになれるのが嬉しいらしい。目をキラキラとさせてヒルダを見上げた。
「ほほほ。さて、先に光鳥の説明をしてしまおうかの。見ての通り、この鳥を介して相手とこちらを繋ぐのが光鳥じゃ。音を拾い、目を通して得た情景を背後に映写する。映写する為には壁になるものが必要じゃな。そして受け手が魔力を流すと今の様に一定の距離を保って着いてくるのじゃ」
「へぇー。魔道具を使えばもっと改良出来そうだけどね?」
「魔道具じゃと旧時代の高度なものが必要じゃ。そんな物が人間の手に渡ったら後が大変じゃから我々は使えぬ。先代達が苦労して破壊したり隠匿したり封印しているのじゃからな」
うーん。確かに悪用されちゃったら大変か。また女神様が世界中を回って片付けないといけなくなるもんね。でも、真面目に言って有りそうだよね。テレビ電話的な魔道具。PCの可能性もあり。てか、衛星が打ち上がってたりして。
《ヒルダ様、大丈夫、ナニ?》
ヒルダとショーマが話している間にシオンの準備が整ったらしい。彼は地面に胡座をかき腰を落ち着けた。
「仕事中に悪いな。光鳥の説明ついでにこの子を紹介しようと思っての。ルーブから何か聞いておるか?」
シオンはショーマの事をじっと見る。そして首を傾げた。
《──ダレ?》
「あ、ちょっと待って!」
ショーマは慌てて変装魔法を解いた。黒目黒髪のショーマを見て、シオンは合点がいったらしい。掌をポンと叩いた。
《タツビト》
「そうじゃ。竜人のショーマじゃ」
「ショーマです。初めまして」
《シオン、ヨロシク》
ショーマとシオンは光鳥越しにぺこりと御辞儀をし合う。
「ヒルダさん、僕の事も紹介して貰えるかな?」
ヒルダとショーマの後ろからぬっとソラが顔を出してきた。
「そうじゃったそうじゃった。シオン、この方がショーマの父、ドラゴンのソラ殿じゃ」
「ソラです。よろしくね」
《──シオン、ヨロシク》
シオンは何かを言いたそうにしながらも片言で返事をするだけだった。
「そうじゃ!ソラ殿とショーマは今世界を回っているのじゃが、他のエルフに会ったらシオンとミオンの事を伝えて貰ったらどうじゃ?わたしら魔族ではなかなか見つけられぬしの。そろそろお主らも身を固めたいじゃろ?」
ヒルダの言葉にシオンは焦り口をパクパクと動かす。何事かを伝えたそうに身ぶり手振りで現しているが言葉が出ない。そして諦めた様に項垂れた。
《──スグ、行ク》
「なんじゃ、女子の好みでも伝えに来るのかの?」
ヒルダの揶揄いにシオンはブンブンと頭を横に振る。そして立ち上がり飛ぼうとした。
「待って!シオンさんは今世界樹の所に居るの?」
ショーマの質問にシオンは頷く。
「じゃあ直ぐに迎えに行くからそこで待ってて。ヒルダさん、ちょっと行ってくるね」
ショーマはそう言うなり転移した。
◇◇◇
ショーマは昨夜ルーブと話をした建物前に転移してきた。
中途半端な時間の為か周囲には誰も居ない。ショーマがキョロキョロと辺りを見回すと、此方に背を向けて佇む紫髪の人を発見する。対面している岩にはヒルダとソラが映写されている事からも彼が光鳥の向こう側で会話していたシオンの様だ。
ショーマはそちらに向けて駆け出した。
「シオンさーん!迎えに来たよ!」
シオンはその声にびくりと肩を震わせて振り返った。
『ショーマ君か。今ヒルダ様が転移してくると言っていたが本当なのだな』
「おお!普通にしゃべってる!」
『光鳥は人の言葉でないと伝わらないからな。先程は無理矢理人の言葉を話していたんだ』
「へぇー、そうなんだ」
『改めて、ヴェルエルフのシオンだ。よろしく頼む』
「ショーマです。こちらこそよろしくね!じゃ、行こうか!」
ショーマはシオンをピックアップするとヒルダの部屋へ転移した。
ショーマ「うーん」
朝木 「どうしたの?」
ショーマ「いやさ、もっといい感じの魔法にならないかなって」
朝木 「あー。ショーマなら思い付くんじゃん?」
ショーマ「うーん。あれがあーで…」ブツブツ
ショーマ、長考中。
改良余地は色々あるよね!笑
次回、お節介。です。
そこはしっかりオーダーしないと!笑
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