2―簡単なお仕事2
大変遅くなりましたっ!
後半ほぼ会話です。
ショーマ達は広間で女神がやってくるのを今か今かと待っている。サクラの予想ではそろそろ来る頃らしい。今の時刻はだいたい2時。太陽は天辺を通り過ぎ、傾き始めた。
「あたし、女神様に会うの初めてなの!」
「へぇー。アンズねえちゃんは会ったこと無いんだ」
「うん。ショーマ君はいつでもお話出来るんでしょ?女神様ってどんな人なの?」
「どんな人、かぁ」
アンズの質問にショーマは言い淀む。
「──見た目は金髪美女だね。中身は・・・やらかし放題の残念駄女神。あー、可愛らしく言えば、おっちょこちょいの慌てん坊だったかな」
「美女?やらかし放題?おっちょこちょい?」
ショーマの言い様にアンズは人物像を掴みあぐねる。大人達は苦笑いで見守っている。サクラがそれはさすがに女神様が可哀想よとショーマに耳打ちをすると、ショーマは取り繕った様に言い直した。
「あ、えっと、おおらかで親しみやすい人だよ!それにしても女神様遅いねー」
ショーマはアンズに下手な先入観をこれ以上持たせない様に無理矢理話を逸らした。リンドがその意図を汲んでやる。
「そうだ、ショーマから連絡してみたらどうだ?」
「そうだね!
もしもーし、女神様ー。もしもーし。
うーん。通じないみたい。いつもならすぐ出るのに」
「会議が長引いたりしているんじゃないのかな。この前もそうだったんだよね?」
シドが思い出した様に言うと、それにショーマが答える。
「んーん。この前は会議の日にちを間違えてたんだって。ほんとドジだよね」
「ちょっと、ショーマ?」
サクラがすかさずショーマを咎める。
「あっやべっ!そ、そうだ!ちょっと早いけど、おやつ食べない?今朝プリンを作ったんだー」
「え?食べたい!!」
「ぷりーん!ぼくも!」
ショーマの一言でずっと女神について考えていたアンズの思考は一気におやつに傾いた。ヒスイも無意識の良いタイミングで援護射撃を行う。
「ちょっと待ってて。今持ってくるから」
「「はーい!」」
ショーマはプリンを持ってくるべく広間を出た。ふと右に視線を送る。
「なっ!?」
そこには女神が座っていた。
ショーマは目の前の女神の雰囲気に凍りつく。
女神は壁に背中を着けた体育座りで身体を小さく丸め、顔を膝に埋めている。周りの空気はずーんと音がしそうな程に暗く重い。完全に“今の会話を聞いていたご本人”の雰囲気だった。
「め、女神様!?いつからそこに!?」
入り口で固まったショーマの言葉にサクラがはっとした顔でソラを見る。ソラとシドは互いに顔を見合せ困惑していた。何も聞こえていなかったらしい。
「どうせ私は残念駄女神ですよ」
「あっ、最初っからデスカ・・・」
ショーマは肩を落とした。サクラが女神を迎えに来て連れていく。ショーマはプリンを持って皆の元へ戻った。
女神を初めて見たアンズの感想はママの方がかわいいという、なんとも言えないものだった。
女神は気にして無いよとの態度を取り繕っていたが、それなりにショックだったらしい。アンズがプリンを食べ終えヒスイとカエデと遊びに行ってしまうと大きな溜め息を吐いた。
「女神様、お茶でも飲んでゆっくりしていって」
「ありがとうサクラちゃん」
「どういたしまして。ソラ、私はお母さんと夕飯の仕度をしてるから。女神様は夕飯食べて行くわよね?」
「ごめんね。話が終わったらすぐ帰らないと」
サクラはそうなのと言ってツバキとキッチンに向かった。どう考えても早い時間だが、女神が本題に入りやすい様にと気を使った様だ。リンドとシドも少し距離を取っている。
「女神様、今日の要件は何でしょうか」
ソラが話を切り出した。
「今日はソラ君とショーマ君にお願いがあって来たの。ソラ君は私がショーマ君に言われてから戦争回避を止めたのは聞いてる?」
「ええ。世界樹の魔力生産量を上げる為ですよね?戦争が起きれば魔力の原料たる負の感情が増えると見込んで」
「そう。それでね、魔族のみんなには今まで通り各国の情報収集をお願いしてるんだけど、戦争となった時に逃げられない可能性が出てきちゃったの」
「そっか。魔族の人達は優秀だから戦争に戦力として駆り出されちゃうのか」
「ショーマ君の言う通りなんだよ。だからね、これから戦争になりそうな国を回って、すぐに転移魔法で助けられる様にして欲しいの」
「なるほど。だから僕とショーマへのお願いなんですね」
「そうそう。悪魔が居ても戦争したいって国はいつも同じだからソラ君は行き慣れてるでしょ?後は送り先として魔族の国と、何かあった時の為に天使の国には行っておいてもらいたいかな」
「魔族の国は分かるけど、天使の国って?」
「ショーマ、天使の国はミスリノートだよ。女神様の部下の本物の天使様達が住んでいるんだ」
「へぇー。そう言えばじいちゃんの今の家もミスリノートだったよね?」
「そうだよ。僕の方の父さんと母さんも住んでるよ。そうだ、ちょうど良いから皆で行こうか」
「それ良いね!女神様、戦争間近で結構ヤバい国とかある?無ければ先にミスリノートに行って、次に魔族の国に行ってから他の国に行きたいんだけど」
「とりあえず今すぐは大丈夫かな?まだ悪魔の抑止力は健在だよ」
「よしっ!で、行かなきゃいけない国のリストとかあるの?」
「はい、これがリスト」
「サンキュー。ってまじで国名だけのリストじゃん。地図に落として最短距離を調べないとだね。父さんってどれくらいの早さで飛べるの?」
「単独だったらラアイテまで15時間くらいかな?前に女神様を乗せて休憩無しで飛んだ時は丸一日掛かったよ。ショーマと行った時は休みながらで最後は半日歩きだったから三日掛かったんだ」
「そうなんだ。うーん。地図が無いと判断つかないね」
「ショーマ君、地図ならミスリノートの天使から貰って。今の最新の地図があるはずだから。話しは通しておくよ」
「よろしく!」
「じゃ、私からの依頼は以上かな。質問は無い?あ、念のため春くらいまでには全部行ってね」
「あと3カ月足らずってところですね。まぁ、効率よく攻めてみます」
「たぶん大丈夫だよ。分からないことがあればその都度連絡入れるから」
「それじゃ二人とも頼んだよ!」
女神は手を振りながらフッと消えた。
この仕事、超楽しそう!戦争になりそうって言っても渡航制限がかかる前でしょ?各地で美味しい物を食べても怒られないよね?それぐらい許されるよね!!
ショーマはニヤニヤと仕事に思いを馳せていた。
ショーマ「いやっふー!世界旅行!」
朝木 「旅行か?旅行なのか?旅行でいいのか!?」
ショーマ「最短距離を導き出さねば!」
朝木 「自由時間の限られた修学旅行生か!」
ショーマ「途中で寄り道もありだよなー」
朝木 「そんな時間意外と無いと思うけど!?」
ショーマ「もう、朝木はうるさいなー」
朝木 「はぁあ!?」
お仕事は各国への移動網の確立です。
ちなみに、シドはショーマの様に自由には転移魔法が使えませんでした。
メルカやアルカンなら往復が限界で、ラアイテには全く届きません。
どうやら魔力量が足りないみたいです。
ショーマ君は世界の魔力を無意識で使っているんだよ。そうでないと魔力1/10(女神様設定)の学生時に転移出来た事の説明がつかないからね。 byシド
次回、ミスリノートへ!です。
ソラ方の祖父母が登場!
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