23―ドラゴンとレイカー1
大変遅くなりました。
ショーマが朝練を終えると、珍しくみんな揃っての朝食となった。いつもはそれぞれが忙しく、意外とバラバラな朝食時間だったりする。
ショーマは食後のコーヒーを淹れている。前は布でドリップしていたが、今は空気を固めてステンレスフィルターの様な物を作りそれを使っている。
何度も使う内に悩まされる目詰まりは起きないし、ごみ箱の上でぱっと解体すればカスが簡単に捨てられる。
洗う手間は不要、仕舞う場所も不要、そして自分の好みに調整出来る、と三拍子揃って大変素晴らしい。
これを考え付いた時のショーマはニヤニヤが止まらずサクラに本気で心配された。
ちなみに、空気塊魔法の最大の欠点は火に弱い事。空気で鍋を作って火に掛けたら一瞬にして燃え上がった。
しかし、ショーマはこれを逆手にとり優秀な着火材として焚き火の火起こしに利用している。
─閑話休題─
ショーマがふふふんと鼻歌を歌いながらコーヒーを淹れていると、リンドから声を掛けられた。
「ショーマ、今日はわしも連れて行ってはくれんか」
「別にいいけど、じいちゃんも行きたいの?」
「魔人の暮らしというのも少し知りたいと思ってな」
リンドのこの一声でツバキも一緒に行く事になり、なら全員で遊びに行こう!ということになった。
ショーマはコーヒーを飲み干すとソロンに伝えるべく一度レイカーの湖に転移した。
~ソラとサクラ~
「お弁当でも作ろうかしら」
「向こうは8時間早いからこっちの昼食より前に夕飯になるんだよ」
「8時間ってことは、向こうの夕飯の時間はこちらの10時くらいなのね。それならお昼は戻ってからにした方がよさそうね」
「ああ、それが良いと思う。昨日のお弁当は結局洞窟で食べることになったからね」
~カエデとアンズ~
「ママ、何着て行けばいいかな?」
「ここより暖かいってパパが言ってたから上着はいらないんじゃないかなっ?」
「そうなの?じゃあ青いワンピースにしようかなぁ」
「長袖のにしなさいねっ」
「わかった!」
~リンドとツバキ~
「ふふ。あなた、ショーマにもっと頼られたいのよね?」
「・・・ツバキには敵わんな」
「何年一緒にいると思ってるんですか」
~シドとヒスイ~
シドは魔道具用の魔法陣を描いている。
「あんずぱぱ、これきれーだね!」
「お?ヒスイ君はこれが綺麗に見えるのか」
「うん!まぁるくて、とげとげで、くるくるー♪」
「そうか。気に入って貰えて嬉しいよ」
食事が済むと、それぞれが出掛ける用意をし始めた。
◇◇◇
ショーマは一度レイカーの住む湖へと転移し、ソロンに事の次第を伝える。
『え!?ドラゴンの方々が遊びにいらっしゃる!?』
ソロンはショーマからそのことを聞くとビシッと固まってしまった。
『おーい、ソロン。大丈夫かぁ?』
「ソロン、起きろー」
ユカリがつんつんと突いてもショーマがゆさゆさと身体を揺すっても、ソロンは魂の抜け殻の様に動かない。
「──ユカリ、ソロンの事は頼んだ」
『ちょい待て!責任持って動き出すまでここに居ろっ!』
ユカリはショーマの服の端を嘴で挟み逃げようとするショーマをここに留めようとする。
「一回帰って来る用意しないとだから放して」
『だめだ!このまま置いていくな!』
「えー」
『えー、じゃない!』
『はっ!!』
ソロンが向こうの世界から戻って来ると、ショーマとユカリはほっとする。
『ショーマ様、ドラゴン様達は直ぐにいらっしゃるのですか!?』
「うーん。早くても後20分後くらいかなぁ?」
『20分!?こうしてはいられない!!早く歓迎の準備をしなくては!!ショーマ様、失礼いたします!!!』
「あ、ちょっと!」
ソロンは慌てた様子で湖へと潜って行ってしまった。水中にいる大多数の仲間へ報せに行く為と思われる。ショーマの制止の手は空を切った。
「あーあ。そんな大袈裟な歓迎は要らないのに。ユカリ、ソロン達が暴走しないように監視してくれない?」
『はぁー、わかった。でも期待はするなよ。オレはか弱い小鳥だからな。実力行使は出来ないぞ』
「わかってるって。じゃ、後はよろしくねー」
ショーマはユカリに後を頼み、洞窟へと転移した。
◇◇◇
洞窟へ戻ったショーマは皆に20分後に向かう事を伝える。
「ショーマ君、ちょっといいかな?」
サクラと持って行く服の確認やらなんやらをしていると、シドから声を掛けられた。なーに?と返事をしつつ、彼の元へと向かう。
「ショーマ君、何か銀製品は持ってないかな?」
「銀?うーん。銀・・・。俺が持ってる銀てつくのは銀貨くらいしかないよ?」
「銀貨か。あれ、実は合金なんだよ」
「そうなの!?」
ショーマとシドの話を聞いていたサクラがちょっと待っててねと二人に言った。寝室に行くと昔ソラから貰ったペンダントをタンスから引っ張り出してきた。
ペンダントトップは淡いピンクの宝石で出来た花を咥える鳥の意匠。チェーンの部分が銀製らしい。
「父さん、センス良いじゃん」
「ふふ。昔人間の町で流行っていたのよ。何度か目にしていたら、プレゼントしてくれたの。誕生日のお祝いにってね。本当に私の事を良く見ているわ」
「さすが父さん!」
ショーマがソラのセンスを誉めると、サクラがノロケてきた。これは長くなりそうな予感とショーマはさっと話を切り上げる。そしてシドとの話を始めた。
「シドさん、銀はどうすれば良いの?とりあえず複製する?」
「銀は複製して纏めて薄く延ばして貰えるかな?大きさはこの紙くらいで。そこに魔法陣を描くから」
ショーマはわかったとチェーンをコピーして魔鋼金の時の様に空気で作った器に入れる。その銀を溶かしてひと纏めにして麺棒の様にした空気の塊で延ばす。最後にガタガタの端を切って30cm四方の一枚の板に仕上げた。
「シドさん、出来たよ」
「ありがとう。本当にあっと言う間だね」
シドはショーマが作った銀の板を受け取り、金属の棒でカリカリと魔法陣を描いていく。
板いっぱいの大きな円を描くと、その内側にどんどん要素を足していく。精密かつ繊細な魔法陣が物凄い速さで現れた。
ショーマは息を潜めてそれを見詰める。シドが描き上げ、手を板から離した瞬間にぷはぁっと大きく息を吐いた。そんなショーマを見てシドがクスリと笑う。
「後はソロン君に試して貰って手直しをすれば魔法陣は完成だね」
「ねぇねぇ、予想より魔法陣が大きいんだけど、どんな魔道具にするの?」
「詳細はソラと詰める予定だけど、ショーマ君が作った9色の魔鋼金を芯にクルクル巻いてチョーカーの様に首に巻いたり出来ないかな?って考えているよ。そうすれば言葉と結界の両方を一つの魔道具で補えるからね」
「なるほど。それなら軽くするのに銀板はもっと薄く作った方が良いね」
「そうだね。まぁ、まだまだ試作段階だから」
シドは書いた魔法陣を丸め手に持った。
「ショーマ君、まだぁ?早く行こうよ!!」
アンズが待ちきれず、ショーマに声を掛ける。
ショーマは今行くと返事をし、全員でレイカーの湖に転移した。
朝木 「ソロンが暴走しない事を願うばかりだね」
ショーマ「なんでこうなった?」
朝木 「それはこっちのセリフ」
ショーマ「はあ?書いてるのは朝木だろ」
朝木 「動いてるのは君らでしょ!」
勝手にみんな動きすぎ!!
手が追い付かないよー
(。´Д⊂) 泣
次回、レイカーと会う。です。
湖はどんな事態になっているのやら。
ユカリ次第ですね。
( ̄▽ ̄;) 他人事
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
PV70,000件突破しました!
70,000人目は5/12の9時台にいらっしゃいましたアナタです!
ありがとうございます(*≧∀≦*)/
今後ともよろしくお願いいたします。
そして、35万文字を超えました。
お付き合い頂いている皆様に感謝です!