3―東の街へ出発
ショーマは今日、東の街へ出発する。
朝起きると珍しく女神が地上にやって来ていた。サクラと何やら話し込んでいる。
「おはようございまーす!」
『おはよう。ショーマ』
「あ、ショーマ君おはよう。今日出発って聞いたから持ってきたよ」
女神はおもむろに封筒と革袋を取り出す。
「それは?」
「これは留学証明書と学校の入学費と、向こうでの生活費。お金の事は任せてって言ったでしょ?」
「女神様ありがとうございます!助かります!」
ショーマは綺麗なお辞儀をしてから革袋を受け取る。
「・・・ショーマ君、それちょっと気持ち悪いから」
『そうなのよね。最近前にも増して丁寧というかなんと言うか』
「サクラちゃんもそう思う?」
「二人とも酷いな!」
ショーマは不貞腐れる。
「まぁいいや。私から1つ課題があるの」
「課題?」
「そう。行きはソラ君に送って貰うでしょ?」
「うん。そうだけど?」
「帰りは、自分で転移の魔法を開発して帰って来なさい。これが課題よ!」
女神は人差し指を立てて、ショーマへビシッと向ける。
「そっか、そういう魔法があったら便利だよね。でも、簡単に開発できるかな?」
「大丈夫大丈夫。これから魔法の基礎を学ぶんだし、開発に行き詰まったらヒントはあげられるから。それに、これから良い出会いもあるし。それと、これは忠告なんだけど」
「なんでしょ?」
ショーマは首をかしげる。
「東の街は、カラフルな見た目の人が少ないから、藤色じゃなくて茶色に変装した方が目立たなくて良いよ。ソラ君にも後で変装魔法を教えてあげてね」
「なんと!ご忠告ありがとうございます!」
「ホントに・・・。じゃ、気を付けて行ってきてね」
「行って参ります!」
『ふふふ。行ってらっしゃい』
二人に見送られながら、ショーマは元気よく洞窟を出た。洞窟の前ではソラが待っている。
「ソラさん、おはよー!」
『おはよー。昨日はしっかり寝られた?』
「バッチリ寝た!」
ショーマはいそいそとソラの背中へ上る。
『そうか。でも、途中で眠くなったら寝ちゃっても良いからね』
「うん。ありがとー!」
『じゃー、しっかり捕まってね。行くよ?』
「はい!」
ショーマが手綱を掴むと、ソラは大きく羽ばたき一気に空高く昇った。
上空ではソラが周りの風を操作しているので、そよ風程度しか感じない。
「ソラさんの背中、久しぶりー!」
『そうだな。楽しいかい?』
「うん!とっても!」
『それは良かった。でも今回は長旅だから、疲れたらちゃんと言うこと』
「わかったー!どれくらいで着くの?」
『夜しっかり寝ても3日で着くよ』
「早いね!かなり遠いって聞いてたから、ソラさんでも1週間はかかると思ってた!」
『ドラゴンだからね。飛行速度には自信があるよ』
「さすがソラさん!」
ショーマとソラは楽しそうに東の街へ飛んでいった。
◇◇◇
出発してから3日目の昼過ぎ、ソラは街道から少し外れた人気の無い場所に降り立った。ここから街へは徒歩で移動する。
二人は女神から言われた通りに、茶色の髪と目に変装している。
「ごめんなショーマ、もっと近くまで行きたかったんだけど」
「気にしないで。ドラゴンのまま近くまで行っちゃったら、学校どころじゃなくなっちゃうから。
そう言えば、これから行く街ってこの国の首都なんだっけ?」
「そうだよ。シャインレイ王国の首都ラアイテだよ」
「へぇー。きっとデカイ街なんだろうね!美味しいものも沢山ありそう!」
「どうだろ。立ち寄ったことが無いからわからないな」
「ソラさんも初めてなの?」
「あぁ、空から眺めたことは有るけど、入るのは初めてだよ」
「へぇー!じゃあ、少し探検しようよ!」
「時間があったらな」
ソラはショーマの頭をワシワシと撫でる。
◇◇◇
3時間も歩いた頃、二人は街の近くまでやって来た。道の脇には畑や牧場、それらを管理していると思われる家々がある。その奥には都を囲んでいる高い壁が見えてきた。
「すごいねー!何あの壁!たかーい!」
「まるで子供だね」
「俺は子供なんだけどね?」
「そうだったな。さて、ウィス。そろそろ着くから、気を引き閉めて」
「わかってるよ父さん。いつもの通りにね!」
ショーマとソラは人目に気をつけながら、親子として自然に振る舞う。普段から近隣の街に遊びに行っていた成果だろう。誰も親子を疑う者はいない。
二人はそのまま門に向かって歩いていく。門に着く頃には夕日が沈みかけていた。
朝木 「なんでショーマは人間の街に行くの?」
ショーマ「女神様がフラグを立てまくったからでしょ?」
朝木 「そっか。女神様のせいじゃ仕方ないよね」
女神様 「いやいや、フラグが乱立したのは朝木のせいだから」
朝木 「そうだったね・・・。」遠い目。
ということで、結構長々と入学準備編が続きそうです。
あの時の自分に文句を言いたい・・・。