19―魔人と魔族と魔道具と1
ショーマは金の鍛錬をしつつ、シドから魔人についての講義を受けることになった。
「まず、魔物は私達ドラゴン以外は元々この世界にいた生物が魔力を貯めて進化したもの。この大前提は変わらない。それは理解してるよね?」
「うん。俺、魔人は女神様が管理する様になる前から居たんじゃないかな?って思ってたよ。確かエドもそんな事言ってたし。
それに前にシドさんから言われた通り、レイカーの子供はまだ魔物じゃないから魔人も進化して魔物になるって事はわかってるよ」
「うんうん。良く覚えていたね。優秀な生徒は私の自慢だよ」
ショーマはシドに誉められ、嬉しそうにしている。
「人型の。という言葉が付いていた理由は覚えてる?」
「人間に近い種だからだよね?」
「そう。女神様が魔物を作り出すより昔は人間と魔人は見た目が違う位の差しか無かった。
まぁ、レイカーの様に水の中で暮らせたり、種によっては空を飛べたりの違いはあったけどね」
「へぇー。あれかな?人間は飛んだり出来ない分繁殖力が高くて数が多かったのかな?」
「ほぉ、よく分かったね。この前も言った通り、人間は少ない魔力で存在出来る分子沢山だったんだ」
「やっぱり。異世界あるあるだもんね」
「そう言えば、ショーマ君の元居た世界の物語には異世界に関するものがあるって言っていたね」
「うん。女神様がたまに暴走するのはそのせいな気もするよ」
「それは女神様がそういった物語を読んでいると言うこと?」
「そう言うこと。これってあれじゃない?って時があるんだよね。よく言えば王道、悪く言えばただの真似?まぁ、今女神様の事はどうでもいいや。続きをお願いします」
ショーマは金の様子を確認しつつ、先を促した。シドはショーマの女神様への暴言に苦笑いを浮かべつつ続きを話す。
「人間と魔人を決定的に別けたのは魔物に進化するかしないかだったんだ。人間はこの世界で唯一進化出来なかった動物なんだよ」
「なるほど。だからレベッカさんを転移させちゃって焦ってた時に人間は進化しないから大丈夫って言ってたんだ。
両生類から哺乳類まで進化出来るのに、人間だけ仲間外れなんだ。ってか最早魚と同類?」
ショーマの言い様にシドは乾いた笑いをこぼした。
「ハハハ。さすがに魚の同類とまでは言ってないよ。それに魚の中にだって進化する種はいるから。シャチやイルカ、クジラなんかがそうだね」
「シドさん、今言った進化する魚はそもそも魚じゃないから」
「姿形は魚と同じなのにあれは魚じゃないの?でも、似たような形なのにサメの魔物が居ないのと関係があるのかな」
「サメは魚じゃん。エラ呼吸でしょ?シャチなんかは肺呼吸だから人間とかと同じ分類なの」
「へぇ。ショーマ君の言う分類?と言うものは実に興味深いね。それは前世の知識かい?」
「そ。生き物を大まかに5種類に分けてそれぞれの特徴で分類してるの。ま、虫とか色々例外もあるけどね。この世界の魔物になれる種類は大体これで説明出来そうだよ」
ショーマは魚類~哺乳類までをざっくりと説明する。
「なるほど。それならシャチやイルカ、クジラは肺呼吸で胎生だから人間と同じ哺乳類になるわけだ」
「それ以外にも共通点はあると思うけどね。魔物の方はそれで良いとして、続き続き!」
元を辿ればショーマのせいで話が脱線したにも関わらず、シドに続きを催促する。シドはさすが元教師と言う感じで気にも止めずにさらっと続きを話し始めた。
「昔は魔人も人間も纏めて人種と呼ばれていたんだそうだよ。
太古の昔は良き隣人として生活していたらしい。魔人は魔法を使い生活を豊かにし、人間は創意工夫によって生活を発展させるという感じだったそうだ。
しかし、人間が武力を持つ様になり魔人達の扱う魔法を圧倒し始めてからは、人間による魔人に対する虐殺と蹂躙が始まったそうだよ。
人間はずっと自分達と違い魔法を操る魔人達に恐怖を感じていたらしい」
「それは前の女神様が治めてた頃の話?」
「そう。その当時の魔王が“森の人”だったのも運が悪かったんだろうね。もし人間が魔王だったら今とは違う未来になっていたかもしれないよ」
「ふーん。森の人っていうのは魔人のこと?」
「そうだよ。魔人にもいろいろな種類がいて、レイカーやマーシーは“水辺の人”だろうね。有名処ではさっきの“森の人”や“山の人”、“獣の人”なんていう感じかな。他にもいろいろあるよ」
「なんか、いっきにファンタジー感が増したなー。それぞれどんな特徴があるの?」
「あまり詳しくは知らないんだけど、水辺の人はそのまま水辺に住んでいて鱗がある人。レイカーは首から下でマーシーは腰から下が鱗に覆われているけど、全身鱗の種族もいるね。全身サメ肌の種族や顔立ちが魚っぽい種族など様々だよ。あと、水関係の魔法が得意だね」
「ふむふむ」
所謂人魚や半魚人、魚人なんかかな?
「森の人は森に住んでいる人。見た目はいろいろ、それこそ千差万別なんだ。
例えば、ショーマ君の頭くらいの身長で背中にトンボやチョウなどに似た羽根を持っていたり、背丈は人間と同じだけど耳がやたら細長かったり。彼らは基本的に風系の魔法が得意だね」
「ほほう」
これはあれか?妖精やらエルフやらか?
「山の人もそのまま山に住む人だね。
ウチの近所に住んでいる人は蜥蜴の様な見た目かな?火山の近くだから火の魔法が得意だね。
あとは、身長がそこまで大きくなくて洞窟に住む人もいるな。彼らは土系統の魔法が得意だったはず」
「へぇー」
火を吹く蜥蜴、サラマンダー?洞窟に住む人ねぇ、ドワーフ的な?
「獣の人は身体の何処かに獣の特徴がある種族だね。耳と尻尾が獣だったり、顔がまるっと獣だったり、全身毛皮で覆われていたり。あ、普段は人間と変わらないけど二つの月が満月の夜に狼になる。なんて種族も居たね」
「それって狼男じゃん!!」
ショーマは思わず突っ込んだ。シドはそれに驚き目をぱちくりしている。
「コホン。そう言えば、学校に行く前に巨人に会ったんだけど、彼らはなんの人?」
ショーマは咳払い一つと質問で、急に大声を出した事をなかったことにした。シドはふふっと笑いながら疑問に答えてあげる。
「巨人か。たぶん山の人じゃないかな?まぁ、この呼び名も当時の人間が魔人達の住んでる場所別に勝手に言ってただけだからなんとも言えないけどね」
「へぇー。そう言えば、魔人と魔族って何が違うの?」
「魔族についての講義は、私よりソラの方が適任かな。おーい、ソラ、ちょっと!」
シドがソラを呼ぶ。ソラはヒスイとアンズをリンドに任せてこちらにやってきた。
「なんだい?」
「ショーマ君が魔族について知りたいって。ソラの方が私より詳しいから教えてあげて」
「うん。いいよ。でも、先に夕飯の時間みたいだ」
ソラがそう言うと、サクラがみんなご飯よ。と言いながらカエデ、ツバキと共に配膳を始めた。
「父さん、後でいろいろ教えてね!
ねぇシドさん、金に色が着いたっぽい」
ショーマはソラに魔族の講義をお願いしつつ、シドに金の変化を伝えた。
「え?もう?」
シドはそんなバカなと思いつつも器の金を覗き込む。
「ハハ。まだ始めて2時間も経ってないよね。早すぎやしないかい?しかもいきなり紫が出るなんて・・・」
講義を聞きながら練っていた金は1色の魔鋼金(紫)に変化していた。
ショーマ「魔人にはファンタジーが詰まってる!」
朝木 「なんかテンション高いね?」
ショーマ「ちょっと気になってはいたんだよ。ファンタジー生物が居ないな~って。まだ出会ってないだけだったんだね!」
朝木 「え?ショーマってそんなキャラだっけ?」
ショーマ「人魚だって驚いたのに妖精もエルフもいるんだよ!?転生者としては興奮しない方がオカシイでしょ!」
朝木 「うん、確かにそうかも」
魔人…なかなか登場機会に恵まれませんね。
話が進めばきっと、いつか。
さらっと魔鋼金になりました。
鍛錬に使っている暴力的な魔力量のお陰?
シドはちょっと腑に落ちないみたいです。
次回、今度はソラに教えて貰おう。です。
魔族とはなんぞや?なお話です。
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