18―魔鋼金3
ショーマ達はラペンタから洞窟へ戻ってきた。それぞれにただいまと玄関に入ると奥からサクラが出迎えに来る。
「みんなお帰りなさい。ショーマ、ちょっと良いかしら?」
サクラはショーマの帰りを待っていた様だ。彼女は防寒着を脱いだショーマを伴って、自分の作業部屋へと向かう。
「一応何種類か作ってみたのだけどどうかしら。こちらの秋くらいの服装と言う事だったけれど」
そこには違う服を着たマネキンが立っていた。全てが麻地ではあるが赤や黄色、茶色などに染められた物を使い、まるで紅葉した山肌の様だ。ズボンは一般的な薄茶で統一されている。上は頭から被る物、前ボタンで留める物、紐で結ぶ物を用意したらしい。
ショーマはそれらを一つ一つ見ながら驚嘆する。
「すごいね。半日でこんなに作ったの?」
「完全に一から作った訳ではないわよ?ソラの古着を利用して作り直したの。それより、女性の服は必要無いのかしら」
「まだ人間がどう出てくるかわからないから、地上に住むのはとりあえず男の人だけなんだ。女の人には子供と一緒に湖の中で待機してもらう手筈になってるの」
「そうなのね。なら、人間の脅威が去ったら私も一度レイカーの湖に連れて行って貰える?自分達で服を作れる様になった方が良いでしょう?」
「確かに!じゃあ、今からちょっと行ってみない?まだ夕飯までは時間あるよね?」
「突然お邪魔しても大丈夫なの?向こうは今夜中よね?」
「そうだけど、監視の人は起きてるから大丈夫!あと、母さんはドラゴンだから大歓迎されるよ」
「ドラゴンだから歓迎?」
サクラは意味が分からず首を傾げた。
「なんかね、ドラゴンは女神様が唯一作り出した魔物だから魔人から崇められてるんだってー」
「そんな事、初めて聞いたわよ?」
「あれぇ?」
今度はショーマは首を傾げた。
「それはともかく、お邪魔するのは明日にしましょう。みんな疲れているでしょうからね」
「そうだね。じゃあ明日一緒に行こ!」
二人は服を畳み、持ち運べる様に風呂敷に包んだ。それが終わると部屋を出る。ショーマは広間へ向かい、サクラは夕飯の用意があるからとキッチンへ向かった。
ショーマが広間に行くとシドが待ち受けていた。
「ショーマ君、早速だけど金の鍛錬をやってみる?」
「そうだね。7色にするのですら結構時間が掛かるんだもんね」
「そうなんだよ。とりあえず必要量を確保する所からだね」
二人はソファに並んで座る。
「よし、やるか!」
ショーマはラペンタで買った金の卵(豆)(約2cm)を取り出し左手の上に載せる。そして、意識を集中させスキャンを開始した。スキャンが終わると右手の上に複製品を出す。それをポイッとローテーブルに向かって投げる。
「え?ショーマ君危ないから!ってあれ?集まってる?」
ショーマの投げたコピーはショーマとシドの前にキンッと涼やかな音を立て集まり、滞空していた。
「あ、そこに空気で器を作ってあるからだよ。今わかるようにするね」
ショーマがそう言うと、金の卵の周りがガラスボウルの様な器になる。下にはそれを支える様に柱が生えていた。宙に浮いていた訳では無いらしい。
「私も本格的にその空気の魔法を覚えよう。かなり便利なものだね」
「めっちゃ応用利くから便利だよー」
「にーちゃん、それなーに?」
ヒスイが金のぶつかる音を聞きつけてやってきた。アンズもそわそわしながら近寄って見ている。
「これは金の卵だよ。そうだ、ヒスイにもあげようか」
ショーマはそう言って一つコピーするとヒスイに渡す。
「うわぁー!ありがとー!おとーさん!にーちゃんにもらったのー!」
ヒスイはソラに見せびらかそうと走って行った。
「アンズねぇちゃんも欲しいんでしょー?」
ショーマはニヤニヤ笑いながら、まだその場に居るアンズに声を掛ける。
「うう、ショーマ君のいじわる。
あたしも欲しい、です」
「あはっ、はいどーぞ」
ショーマはもじもじと居心地の悪そうなアンズにもコピーしてあげた。
「ありがとっ!」
アンズは一転、ぱぁっと笑顔になりシドに貰ったと報告している。良かったねとシドはにこやかに返した。
「さてと、続き続きー」
ショーマはどんどん金の卵をコピーしていく。大体50個程作った所で終わりにした。元となった金の卵はまた必要になった時のために別に取っておく。
「これくらいでいいかな?」
「十分だと思うよ。じゃあ金の鍛錬を始めようか。魔鋼鉄を作った時と同じ手順で大丈夫だよ」
「うん、わかった」
ショーマは空気で作った器の中に魔力を集める。するとドライヤーで熱せれたチョコレートの様に金の卵が溶け、1分もしない内に黄金の液体へと変化した。そこにまた魔力を集めると、今度はその液体が耳たぶ程の柔らかさに固まる。これで下準備は完了だ。
今度はそこに魔力を込め、パン生地を捏ねる様に平たく伸ばしては半分に折り、また平たく伸ばしてはまた半分に折る。それが繰り返される様な魔法を掛けた。
うんうん。良い感じ。ずっと捏ねてればその内色が出るでしょ。
シドはその光景を唖然と見ていた。
「ショーマ君、込められている魔力量が尋常じゃないんだけど身体は大丈夫?」
「俺のはほんの少ししか使ってないから大丈夫だよ。空気中の魔力を集めて使ってるからね。あ、これじゃ同じ魔力で鍛えられた事にならない?」
ショーマは不安になり作業を止めた。シドは目の前の状況とショーマの言葉を吟味している。
「空気中の魔力を集めて?雑じり気の無い一つの魔力になっているが。差が無い程に馴染んでいる?それだとしてもここまで同一化するものなのか?」
「シドさん、やり直した方が良いかな?」
シドはハッとしたように思考を止めた。
「このまま続けて大丈夫だよ。どうやら空気中の魔力もショーマ君の魔力と同じになっているみたいだから」
「そうなの?じゃあ続けるね」
ショーマはそう言うと、先程の作業をまた繰り返し始めた。黙々と続けるには暇すぎる作業のため、ショーマはシドに話しかけた。
「ねぇ、シドさん。さっき母さんにドラゴンは魔人に崇められてるよって言ったら、そんなの聞いたこと無いって言われたんだけど?」
サクラとの認識の違いについて確認することにしたようだ。
「確かに、サクラ義姉さんの行動範囲(モミール大陸の西側)では崇められていないだろうね。こちら側ではドラゴンは割と身近なものだから、信仰より畏怖の念の方が勝っているんだよ。滅多に見れない幸運よりも常に隣にある恐怖って具合にね」
「へぇー。あれ?ソロンの反応は久し振りの反応って言ってたよね?もしかして魔人ってこの大陸の西側以外にもいるの?あ、でもレイカーだって大陸の東側にいるから教科書が間違いなのか?」
「魔人は世界各地にいるよ。あの教科書は、そうだな、シャインレイ仕様の教科書って言うところかな。
シャインレイではレイカーの存在は既に滅んだとされているし、貿易に重点を置いている国とは言え、他の大陸の情報はまだ入り口の港町くらいしか得られてないからね。新情報が追加されればその都度改訂されていくよ」
「なるほどね。そうだ、魔人の事を教えて。俺、全然知らないんだよね」
「そうだね。鍛錬中は暇だし、夕飯までまだ時間もあるから私の知ってる範囲で魔人についての講義でもしようか」
「お願いしまーす!」
ショーマは鍛錬の暇潰しとして、シドから魔人についての講義を受けることにした。
朝木 「一個20万もする金をポイポイ作るって…」
ショーマ「うん?なんか言った?」
朝木 「いやー、これが金の成る木かーって」
ショーマ「それって俺の事?」
朝木 「そうだよ?」
ショーマ「なんかヤな言い方」
朝木 「じゃあ異世界錬金術?」
ショーマ「ハァ、もうなんとでも言って」
ショーマのチートの方向性が謎です。
良いなぁ。異世界錬金術。
次回、久々の授業。です。
魔人についての情報がいっぱいあるよー。
…たぶん(;・ω・)
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女神様 「ねぇ朝木、こっちとこっちどっちが良いかな?」
朝木 「うーん。右かな?(何が違うのか判んないけど)」
女神様 「そ?じゃあ右にしよ♪」
朝木 「なんで急にめかし込んでるの?」
女神様 「新連載始めたんでしょ?私達女神が主役の恋愛小説」
朝木 「まぁ、確かに神様達の話だけど。女神様出ないよ?」
女神様 「え?仕事頑張ってる系女神様と言えば私でしょ?」
朝木 「いや、それを言うならドジッ子属やっちまった系女神様でしょうに」ポソッ
女神様 「今なんて?」
朝木 「コホン。世界が違うから女神様に出番は無いよ!」
女神様 「でも神様の話でしょ?」
朝木 「こればっかりはどうにもならない」
女神様 「じゃあこっちの私の出番増やしなさいよ!!」
朝木 「それもどうにもなりませーん!暫し待たれよ!」
新連載始めました。
異世界恋愛物なのでこの小説をお読み頂いてる方の好みとは違うかもしれませんが、一応宣伝です!
『神様だってイチャイチャしたい!』
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