7―レイカーの湖の騒動2
とりあえず三人は橋の所まで転移した。ユカリの案内で人間を見た場所を教えて貰う。
ショーマは状況を確認するためにユカリに確認をした。
「ねぇ、逃げてるってどんな感じだったの?」
『待てーって後ろの奴が言ってて、前の奴は無言で逃げてた』
「うーん。逃げてたのは悪者なのか、それとも追っ手が悪者なのか・・・」
「ここで考えても仕方がないよ。どっちも悪者では無い可能性も捨てきれないし。とりあえず捜そう。ユカリ君は上から捜してくれるかな。出来れば私達の見える高さで」
『わかった。任せろ』
ユカリはそう言うとパタパタと上空へ向かった。
「じゃあショーマ君、とりあえず湖に向かって行こうか」
「ねぇ、俺とシドさんは別れて捜した方が効率良くない?」
「そうだけど、サクラ義姉さんに頼まれたからなあ。あ、そうだ。ショーマ君、ソラに掛けてある魔法を私にも掛けて貰えるかな?そうすれば離れていても会話出来るんだよね?」
「その手があったか!でもいいの?掛けるのは隷属魔法だけど」
「ははは。ソラからは従える気の無い隷属魔法だって聞いてるよ」
「別にそう言う訳じゃ無いんだけどなー」
ショーマは口を尖らせた。
「ほら、さっさと私に魔法を掛けて、ちゃっちゃと捜しに行こう。ソロン君が待ってるよ」
シドはそんなショーマを急かす様に告げた。
「もう!シドさんの意地悪!それじゃあいくよ」
ショーマが集中すると、シドの足元に魔法陣が浮かび上がった。
「ふむふむ。なるほど」
魔法陣がそのまま浮き上がり、シドをその円柱の中に閉じ込めた。
「へぇ。そう言うことか」
そして、円柱は魔法陣と共にフッと消えた。
「本当に無理矢理従える気が無いんだね。奴隷魔法を基にしているのに。ふーん。それなりに力があれば命令の拒否も出来るのか」
「だって、自我が無いただの兵器になっちゃうじゃん。もちろん弱い子は命令してでも守るよ?でも、基本的に俺はみんなと対等に過ごしたいんだ」
「そっか。ショーマ君はそのままで良いよ」
シドはショーマの頭をポンポンと軽く叩いた。
「さて、これで離れても会話が出来る訳だ。ショーマ君、試してみたいんだけど」
「あ、うん」
ショーマはシドに意思伝達魔法を掛ける。
―――どう?聞こえる?
「聞こえるよ。どうすれば同じ様に話せるのかな?」
―――隷属魔法の繋がりはわかる?
シドは目を閉じショーマとの繋がりを探す。
「あー、これかな?」
見付かったその繋がりを揺らした。
―――それ!それを震動させて言葉を伝えてるの。
「震動させてか・・・」
―――あ、、あー、、あーあーあー
―――おー!父さんもだけど、シドさんもめっちゃ簡単にやってくれるね!俺はちょっと苦労したのに。
―――魔物の言葉と同じ様な原理だからだよ。たぶんユカリ君もソロン君も簡単に使える様になるかな。
―――開発したのは俺なのにー。
ショーマはガクリと頭を垂れた。
『ユカリ君!私とショーマ君は別れて捜索することにしたから、ショーマ君の方に付いてくれるかな!!』
『おう!わかった!』
シドは上空にいるユカリへ大声で言う。ユカリも大声で返事をする。どちらも魔物の言葉だから捜している人間には聞こえない。
―――じゃあショーマ君、何か見付けたら連絡してね。
―――はーい!
三人は森に紛れ込んだ人間の捜索を始めた。
◇◇◇
レイカーの湖は橋から北西の奥まった所にある。
ショーマとユカリは橋からそのまま北西に向かい湖へ、シドは北の海岸回りで湖へと向かう事にした。
―――シドさん、そっちはどう?
―――人が通った形跡が無いね。ショーマ君の方は?
―――こっちも何もないよ。
―――ユカリは何か見付けた?
ショーマはユカリとも通信出来るようにしていた。
『動物の気配すら無いぞ!それになんだか森の様子がおかしい!』
ユカリはとりあえず大きめな声で返す。これでシドにも聞こえている様だ。
―――いつもと違う感じ?
『ああ!ここまで気配が無い事は滅多に無いな!』
―――私の耳にも雑音が全く聞こえない。もしかしたら人間に驚いて逃げたのかも。
―――うーん。とりあえず湖までこのまま進もうよ。通った形跡が見つかるかもしれないから。
―――そうだね。そうしよう。
ショーマ達はそのままずんずんと森の中を進み、湖まで着いてしまった。
「シドさん、こっちは結局何も見つからなかったよ」
「私の方も全然だね。ユカリ君の方はどうだった?」
『俺の方もさっぱり。ただ、川の上流の方に違和感がある』
ユカリの答えにショーマは首を傾げる。
「違和感?どう言うこと?」
『なんだか魔物が集まっている気がするんだ』
ショーマとシドは顔を見合わせた。
「シドさん」
「ああ。少しここで待っていて」
シドはそう言うと、空に飛び上がり川の上流へ向かった。ショーマとユカリはその場に留まる。
「ねぇ、今更だけど人間は何人いたの?」
『あー、逃げてたのが一人で追ってたのが五人だったな。橋を渡って来た奴は』
「うん?橋を渡って来た奴は?」
『追いかけてた奴の内三人は橋を渡らないで帰って行ったんだ』
「それヤバいよ!たぶん応援を呼んで増員する為だ!!」
『何!?あんなのがこの森にもっと来るのか!?』
「ちょっと待って、あんなのって?」
『金属の棒を腰から提げて金属で全身を覆ってるのに動きがやたら速い奴らだ。この前連れて行った奴らと似たような格好をしてたが、そいつらよりも大分強そうだったぞ』
「それって追っ手は騎士じゃん!!急いでシドさんに教えないと!」
ショーマはそう言うとシドに今ユカリから聞いた事を伝える。
―――それはまずいね。とすると追われているのはやはり彼女か。
―――彼女?
―――聞こえた。これは・・・、ちょっと急ぐから後でね。
シドはショーマとの会話を中断した。
「シドさんがどうにかしてくれると思う。たぶん」
『そうか。なら助かったな』
◇◇◇
数分後、シドから連絡が来た。
―――ショーマ君、どうにか彼女を助けられたよ。今からそこに転移するね。
その言葉と共に地面に魔法陣が浮かび上がった。直ぐにシドと少女が転移してくる。
「シドさん、その子誰?」
「この子は「君が次期魔王のショーマ殿だな?わたしはリーナ。蛇人だ」
シドの声に少女が被せてきた。ショーマは口が開きぽかーんとした顔になっている。
「──へびびとのリーナさん?」
「ああ。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
リーナはショーマに向かって手を差し出し握手を求めてきた。ショーマは突然の事に理解が及ばず動揺したまま彼女の手を握った。
ショーマ「追われてる人魔族だったんだー」
朝木 「そうだよ。しかも、ほら、あの人だよ」
ショーマ「うん?誰だっけ」
朝木 「魔法学校編で出そうとしてショーマに止められたキャラ!」
ショーマ「おお!そんな事もあったね!」
いつだったか、登場させようとしてショーマに止められたキャラです。
覚えてる人いるかなー?
(; ̄▽ ̄)
ショーマの隷属魔法は奴隷魔法を基にしています。
でも魔物との対等を望んでいるので、ある程度強い魔物には命令を強制しないように改造しました。
ちなみにシドのステータスは、魔法が凄い、空が飛べる、怒ると恐い。という完全にショーマの主観になっています。
実際のステータス表示は『力』が強い・弱いや『体力』がある・ない等、各項目の向き不向きくらいしか出ないみたいです。
次回、この騒動の原因。です。
なんでリーナは追われていたのでしょう。
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