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閑話―100話達成記念!

100話達成記念SSです。

本編の流れとは全く関係ありません。

そして、少し長めです。


※前話後書きにて「セシルの情報」を書き損ねました。追記しておりますので、気になる方はご覧ください。




 それはショーマが剣術の稽古や魔法の練習を始めたばかりの頃。




 ─────

 ───

 ─




 ショーマとソラは二人で洞窟近くの川にいた。


『あー、そこ、気持ちいいよ』


「ホント?」


 ショーマはソラの背中をゴシゴシと擦っている。

 今日のショーマはソラの背中を磨くと朝から張り切っていた。


「ねぇソラさん。川で水浴びもいいんだけどさ、お風呂に入りたいな。この辺に火山とかって無いのかな」


 風呂に入りたいと言うおねだりを成功させる為の行動だったみたいだ。


『火山?うーん。この近くには無いねぇ。でも、お風呂か』


「うん、お風呂。ソラさんは入った事ある?」


『昔どこかの国で入ったよ。温かい蒸気の充満している部屋に入るんだよね?』


「それはサウナだよ!そうじゃなくて、お湯を貯めた湯船に浸かる方のお風呂!」


『ふむ。お湯を貯めて浸かるのか。それじゃあ、家にお風呂を作る?』


 ソラの発言にショーマは手を止めた。


「え?いいの?」


『いいよ。あ、でもよく分からないから完成図を描いてね』


「うん!ありがとう!」


 ショーマはガバッとソラの背中に抱き付いた。




  ◇◇◇




 数日後。


 ソラは広間(リビング)微睡(まどろ)んでいる。


「ソラさん!お風呂の完成図が書けたよ!」


 ショーマはソラを体当たりで起こすと手に持っている紙を自慢気に見せた。完成図は一般的な家庭のお風呂場と洗面所を広くした様な絵になっている。


『くわぁ。──どれどれ。ふむふむ』


 ソラは大きな欠伸を一つして顔の前に広げられた紙を眺めた。そしてパッと人化して紙と鉛筆を持って来ると、ショーマの完成図を元に更に細かい図を書いていく。


「浴室には湯気が充満するだろうから、壁の天井近くには換気孔が要るね。排水は床に溝を掘れば良いか。どちらも裏の崖に直接出せば問題ないかな。

 扉は開き扉より引き戸の方が使いやすそうだ。

 ねぇショーマ、部屋の高さはどれくらいあったら良いのかな?」


「うーん。倉庫くらいで良いんじゃない?」


「なるほど。湯船はどれくらいの広さが良い?」


「同時に三、四人入れるくらい広いのがいい!」


「ふんふん。よし、じゃあ作ろう」


「え?今から!?」


「うん。今から。場所はここがいいかな」


 ソラが徐に手を壁に翳す。すると壁には徐々に穴が開き、人の通れる程のサイズになると足下は階段状に変化した。


「おお!すっげー!これ魔法!?」


「そうだよ。壁の岩や土を一度分解して押し固めているんだ」


「魔法ってこんな事も出来るんだ!」


「そのうちショーマも出来るようになるよ」


「出来るかなぁ。てか、お風呂は地下に作るの?」


「うん。水漏れしたら大変かな?って思ってね」


 ソラはライトを片手にドンドン階段を作っていく。5m程の深さになったら、少し廊下部分を作り、突き当たりに部屋を作った。


「脱衣室はこれくらいの広さで充分かな?」


「もうちょっと広い方が良くない?これだと二人でいっぱいだよ」


「じゃあこの倍にしようか」


 ソラは部屋を広げる。


「うん。これくらいでいいと思う!」


「よし、じゃあこの先に浴室だね。何か欲しいものが有ったら言ってね」


「はーい!」


 ソラは奥にも部屋を作り、大人四人がゆったり座れるサイズの湯船を浴室に入って右手側に作り出した。

 床は奥の壁に向かって僅かに傾斜を持たせ、壁際に溝を掘る。天井は逆に手前は大体2.5mくらいに、奥の壁に向かって勾配をとり手前より大体1m程高くした。

 換気孔と排水口は奥の壁に開けておく。この壁の裏は切り立った崖になっている。


「ソラさん。これ今の俺じゃ跨げないから、中に一段欲しいな」


「そうか。これで大丈夫かな?」


 ソラが湯船に手を翳すと、内側に階段が現れた。


「うん!一回試しに入ってみるね」


 ショーマはそう言って、湯の入っていない湯船に座る。ソラも一緒に座った。


「うーん。こっち側全体に一段欲しいな。座ったら顔がお湯の中になっちゃう」


「はは。そうだね。これでどうかな」


「おぉー!良い感じ!」


「よし、じゃあ一回出ようか。火入れするからね」


「火入れ?」


「そう。このままだと水を含んで洞窟が崩れてしまうから、表面に保護する層を作るんだよ。この洞窟の土は高温で焼くとツルツルになるんだ」


「へぇー。ガラスの素でも入ってるのかな?」


「そうかもしれないね。大体五日くらいで冷めて入れる様になるかな。それまで待っててね」


「うん、わかった!楽しみだねー」


 ソラが浴室と脱衣室の中で火を起こし、脱衣室の入口を土で塞いで本日の作業は終了した。




  ◇◇◇




 五日後。


「ショーマ、そろそろお風呂に行ってみようか。たぶん冷めてると思うから」


 ソラは木で作られた扉を二枚抱えながら、ショーマを誘う。


「やったぁ!楽しみ~♪」


 二人は階段を降りていった。




 地下へ続く階段は、この五日でソラの手により改造されていた。左右の壁には手すりが取り付けられ、天井には人感式のライトの魔道具が組み込まれている。なかなかハイテクだ。


 突き当たりに着くと、ソラは壁に手を翳した。すると、ちょうど人が一人通れる程の四角い穴が開く。ソラの抱えている扉より一回り小さい穴だ。

 ソラは扉を通路の脇に立て掛けると部屋の中へ入って行った。


「まだちょっと温かいかな?でも、大丈夫そうだね。ショーマ、入ってきていいよ」


「へぇー、なんか黒くてツルツルしてる。やっぱりガラスみたいだね」


 ショーマは部屋に入ると壁をペタペタと触り感触を確かめる。


「ショーマ、そんなに触ると、あーあ。もう手が真っ黒だよ。ってなんでこの一瞬で顔が汚れるんだい?」


「ありゃ?」


「中で火を焚いたから全体的に(すす)けているんだよ。よし、これで綺麗になったかな。それじゃ、靴を脱いでちょっとこっちにおいで」


 ソラはショーマの顔を手拭いで拭うと靴を脱がせて浴室へ連れていく。


「ショーマは水を出せる様になったよね?」


「うん!一番最初に覚えたよ!」


「じゃあ、浴室の掃除をお願いしようかな」


「はーい!」


「高い所は僕が掃除するから床と湯船だけでいいよ。掃除にはこのタワシを使ってね」


 ソラはショーマの袖と裾を捲ってやり、腰袋から亀の子タワシを取り出し渡した。

 よし、やるぞー!と気合いの入ったショーマを見てソラはクスリと笑う。




 ソラは脱衣室を、ショーマは浴室の床と湯船を磨き始めた。


 ゴシゴシゴシゴシ


 風呂掃除とか懐かしいなぁ。アイツらとずぶ濡れになって、よくねーちゃんに叱られたっけ。まぁ、やんちゃ盛りのチビッ子に風呂掃除をさせたらそうなるっての。


 ザパー


 おぉ!水洗いでも結構綺麗になるじゃん!よし!どんどん頑張るぞー!


 掃除をして煤が取れると、灰色の上に蜂蜜が掛かった様な色合いのツルツルとした岩肌が見えてきた。


「ショーマ、そっちは順調かな?」


「あとちょっとー!」


 ショーマは最後の仕上げにザバッと水を掛けた。


「ソラさーん!こっち終わった!」


「お疲れ様。おぉ!綺麗になったね。じゃあ上に行ってサクラから籠とか石鹸とか貰ってきてくれる?あと次いでに着替えておいで。濡れたままだと風邪をひいちゃうからね」


 ショーマはまだ魔法の扱いが(つたな)く、全身ずぶ濡れになっていた。


「あっはははは。じゃあ行ってくるね!ってスゴッ!もう扉と明かりが付いてる!」


 ショーマが脱衣室に入ると、既に入り口の扉と天井にライトが取り付けられていた。




 ショーマは1階に上がり、部屋でサッと着替えるとサクラを探す。


「サクラさーん!あれ?どこだろ」


 ショーマは洞窟内を探すもサクラが居ない。


 外かな?


 ショーマが外に出ると、サクラは広場の端で何やらやっていた。


「サクラさん外にいたんだ!」


「あら、どうしたの?」


「ソラさんにサクラさんから籠と石鹸を貰ってきてって言われたの。石鹸ってこれ?」


「ふふ。そうよ。ショーマがソラにお風呂を強請(ねだ)ったって聞いてから作っていたの」


 サクラは手作り石鹸を天日干ししていた様だ。


「これはローズの匂いで、あれはハーブの匂いよ。いい匂いでしょ?」


「うん、いい匂い。サクラさん凄いねぇ」


「これも実益を兼ねた私の趣味の一つなのよ。さ、この石鹸とあそこの籠を持って行きなさい。足拭き用のマットはタオルの所にあるからね」


「はーい!ありがと!」


 ショーマは石鹸などを持って、また地下へと下りていった。




 ショーマは脱衣室の扉を開けた。一歩入るとその場で靴を脱ぎ、浴室の入り口の所にいるソラへ声を掛ける。


「ソラさん!貰ってきたよ!」


「ありがとう。そこに置いておいてね」


 ガシャン、ゴロゴロ


「ソラさん、何の音?」


「今扉の調整をしててね、っと。よし出来た。ショーマ、完成したよ」


 ショーマは急いで浴室を覗く。


 四方の壁と天井にライトが取り付けられて明るく室内を照らしていた。全体が灰色だが暖かみのある浴室になっている。


「おぉ!洞窟(うち)にお風呂が出来たー!!ばんざーい!!」


「今夜からお風呂に入れるね」


 ソラはハイテンションのショーマの頭を撫でた。




  ◇◇◇




 その夜。


 ショーマはソラと浴室に居た。


「ここまで来てなんだけど、お湯ってどうするの?」


「ほら、こうすれば」


 ソラが湯船に向かって手を翳すと、底からみるみると湯が湧いてきた。


「おぉ!」


 1分程で湯船はお湯で満たされた。


「ふむ。サクラがやったらそこそこ時間が掛かりそう。当分は僕がお風呂係りかな?」


「ねぇねぇ、入って良い???」


 ショーマはもう待ちきれない様子。


「そうだね。入ろうか」


 ショーマとソラは脱衣室で服を脱ぎ、洗い場でサクラ手製の石鹸を使い身体を洗う。


「いざ!」

「クスッ。気合いが入ってるね」


 チャプン チャポン


 二人は湯船に浸かった。


「ふわぁ。久々のお風呂だぁ。きもちー」


「はぁ。これは病みつきになるねぇ」


「でしょー。俺が純粋に子供だったらこんな広いお風呂、絶対泳いでるよー」


「泳いでもいいよ?」


「いや、マナー違反だから」


「フフッ。そんなにウズウズしてたら説得力無いよ。それに、家のお風呂だったら良いんじゃない?」


「うー。じゃあ、お言葉に甘えて!」




 このあとサクラがまだ?と呼びに来るまで散々お風呂を楽しんだ。

 ショーマが逆上(のぼ)せ掛けたのは言うまでもない。




 ─

 ───

 ─────




 お風呂は徐々にグレードアップしていく。

 ショーマが家に居ないとソラは暇をもて余しているからだ。



 =ショーマの西部遠征中=


 脱衣室には入り口に靴箱が、奥には衣服を置く棚等が据え付けられ、壁、床、天井の仕上げは総世界樹張りになっていた。

 浴室の床は何処から持ってきたのか、白い岩や黒い岩、青い岩等を薄く削ったタイルが幾何学模様を描く様に敷き詰められていた。



 =ショーマが留学中=


 浴室の天井と壁に白い岩を薄く削ったタイルが貼られて室内が明るくなっていた。そして、浴室の奥に北の森を一望出来る総世界樹造りのこじんまりとした露天風呂が裏の崖を抉って作られていた。




 今後も更なる発展をしていく・・・かも?





ショーマ「懐かしい!」

朝木  「でしょう?」

ショーマ「今は俺がお風呂当番だよ」

朝木  「そりゃ、あの頃より魔力も技量も桁違いじゃん。あ、そう言えば」

ショーマ「うん?」

朝木  「サクラと初めて一緒にお風呂入った時めっちゃ照れてたよね?」

ショーマ「それは言うなー!」


 家にお風呂を造る。の巻。でした。

 こんな感じでお風呂が出来たんですねー。

 何の話にするか悩んで結局これになりました!



 度々登場する世界樹の木材。

 なぜこんなに多用出来るのか?

 それは近いうちにわかる予定です。

 ( ̄ー+ ̄)キラン



 次回、ショーマ帰宅する。です。

 サクラが帰りを待ってるよー!



 応援して頂けると嬉しいです(^^)

 訪問だけでも大感謝(^^)/


 ブックマークの追加ありがとうございます!

 (*≧∀≦*)♪♪♪



 次回更新は作者都合により3/6になります。

 よろしくお願いいたします。m(._.)m


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