24―セシルの話5
ちょっと遅くなりました。
今回も少し長めです。
殺伐とした表現が多くなっています。
ご注意ください。
「さぁて、全部きっちり説明してくれるんだよな?」
「逆にテッドは何処まで知ってるんだ?」
全てオズに任せた。俺は黙秘の方向で。また下手に口が滑ったら大変だからな。
「お前達についてはルーベンス様とニックが行方不明になった責任をとって自警団を辞めた事と、誘拐の片棒を担いでいる事しか知らん。
そうだ、犯罪者をそのまま椅子に座らせておく訳にもいかないな。三人共そこに立て」
犯罪者って・・・。テッドの指示通り、壁を背に立った。一体何が始まるんだよ。
「手は後ろに組め。足は揃えろ」
テッドの指示に従っていく。
その時、膝裏に衝撃を受けた。
「え?」
気が付いた時には自分の意思とは関係なしに膝が床に付いていた。
腕は後ろでまとめられ、太腿の上にはどこから出てきたのか重石が載せられる。
「は?」
あまりにも鮮やかな早業に俺達は困惑するしかない。
「本当はもっと載せたいんだが、今はこれしかないんだよな。まぁ、仕方がないか。
さてと。全部話して貰おうじゃないか」
俺達の前には仁王立ちで腕組みをし、こちらを見下ろすテッドが君臨していた。
「──セシル。先ずはお前の調査結果から教えてやれ。それでないと俺たちの話は何も始まらない」
「うぇえ!?ワタシからぁ!?」
おい、この野郎!なんでいきなり話を振るんだよ!俺は黙秘する気満々だったんだぞ!
「オズの指名だ。セシルから話して貰おうか」
「はぁ。話しますよ。話せばいいんでしょお。
ワタシはねぇ、ライアン様達が捕まる前からある調査をしていたのよぉん。それはね、ソルマンティ領内で度々起こっていた誘拐事件だったの。テッドも知ってるわよねん?」
「ああ。知ってるとも。俺たち警備兵の捜索は後手後手に回って、唯一救えたルーベンス様の許嫁であるメリッサ様も失ってしまったんだからな」
「それ以外の誘拐事件の犯人は同一人物だったのよぉん。大商人ジョッシュ。裏では奴隷商ジョッシュ。テッドに馴染みのある名前で言えばアイザック・ロクサンド」
「まさか、ジョナサン・ロクサンドの弟が!?」
「灯台もと暗しっていう言葉の通りよねぇん。最初の被害者の雇い主なんだものぉ」
「警備兵は何をしていたんだと散々扱き下ろしてくれたが、自分が犯人だったのか!!」
第一被害者は自作自演だった訳だ。元々どこからか拐ってきた少女をアイザックの使用人の様に扱い、あたかもジョッシュに誘拐されたように装ったんだから。
「セシル、今メリッサ様の事件の犯人は別にいると聞こえたが。俺はその報告を聞いていない」
あ、オズはやっぱり気づいたか。
「アドルフに口止めされてて誰にも言ってなかったのよぉん」
「何故そこでアドルフが出てくるんだ?」
「テッドは知らないわよねぇ。ワタシの活動のほとんどはアドルフの指示なのよ。ワタシは騎士団諜報部の中でもソルマンティ関連の調査が主だったからねぇん。まぁ、誘拐事件は珍しくそっちじゃなかったけど。
メリッサ様の誘拐事件は、彼女に一目惚れしたロキシラースのドラ息子の暴走なのぉ。自分に靡かないのが許せなかったのでしょうねぇ。無理矢理既成事実を作って解放したら、メリッサ様が絶望して自ら命を絶ったのが真相なのよん。
これ、絶対ルーベンス様に言ったらだめよぉ?今はまだロキシラースを消す訳にはいかないんだからん」
「──っはぁ。そんな事、間違ってもルーには言えねぇよ。そんな野郎が次期国王なんかよ・・・」
ホント、ソローシャンの今後が悲惨だよな。
「じゃあ誘拐事件の方の話に戻るわよぉ。ワタシは犯人を特定しただけじゃないのよん。目的もしっかり探ってあるわぁ。最近その確証が得られたのよねぇん」
「ヤツの目的は何だったんだ?」
「ヤツらの目的は保有魔力の多い人間を拐うこと。ここは北の山脈から魔素が降りてきてるから、魔法が使える程はないけど保有魔力がそこそこ多い人が結構いるのよん。
あと、保有魔力が多いと結構見た目が良いらしいのよねぇ。お貴族様は大体みんな魔法を使えて綺麗な顔をしてるでしょお?ああ、ロクサンドはもちろん例外よ。
それに、保有魔力が多いと子を成せる確率が高くなるんだってぇ。これについてはソルマンティ領、特にアルカンで実証されているわねぇ」
「アルカンで実証?」
「テッドはほとんどこの町から出てないから解らないでしょうけどねぇ、他の土地にはこんなに子供は居ないのよぉん」
「それと誘拐事件の関係は何なんだ?」
「テッド、心して聞けよ?マジで胸糞わりぃからよ」
「そうなのか?セシル、続きを話してくれ」
「ロクサンドはねぇ、ロキシラースと組んで隣のライオネル王国に拐った女の子を売ってるのよぉ。子供が欲しい貴族達にね。ライオネルでは貴族でも子供がなかなか出来ないらしいの。アルカンの女の子はかなりの高値で取引されてるみたいよぉ。
女の子達も抵抗するけどね?目的を果たせば帰してやるって言われて嫌々従ってるのよん。でも、高い金を出して子供一人ではい解放。とは行かないのが現実なの。そんな中で心を壊されて無い子は奇跡に近いわ」
「クソッ、被害者にだって家族が居るんだぞ!しかも、なんでよりにもよってライオネルに!」
そうなるよなー。結局ソローシャンは内からはロキシラース達に、外からはライオネルに良いようにやられたんだ。
「まぁ、ロキシラースがここまで出張ってこれたのはライオネルのお陰らしいから、無茶な要求を断れないみたいねぇ。
以上がワタシの調査報告よん」
あー、なんか足が痺れてきた。
「次はトビーの調査内容を教えてやれ」
「あ?俺のは大したもんじゃねぇよ。ロクサンドの関係者の調査と敵対者の調査だ。ただ、アドルフはソルマンティがロクサンドに嵌められるのを分かってたんだろうな。今すげぇ役に立ってるよ」
「兄さんは一体・・・?」
あ、それ俺も思う。
「テッド。お前もアドルフから何か言われたんじゃないか?」
「ああ。警備兵にバディ制度を試験的に導入してほしいと言われて、ソルマンティ派とロクサンド派を組ませていたんだ。
あ、そうか。だから警備兵は拘留じゃなくて解雇だったのか」
はー!マジか!!
「なるほど、警備兵の騒動はそう言うカラクリだったのか」
「カラクリってなんだよ」
「トビー、今のでわからなかったのぉ?アドルフは警備兵まで捕らえられない様に対策をしてたのよん。ロクサンド派の兵と組んでいればソルマンティ派の兵は最初から無関係だって証明できるじゃなぁい」
「あ、そっか、なるほど。なぁテッド、アドルフはお前の兄貴だよな?アイツの頭はどうなってんだ?」
「俺に聞くな。全く分からん。それで、ルーベンス様達の話は?」
「それは俺が話そう。ルーベンス様がニックと一緒に隠れて居たのはテッドも知ってると思うが」
「ああ。それは知ってる」
「あの二人を匿って居たのは、俺達三人だ。ルーベンス様からの指示でセシルが自警団発足やロクサンドへの潜入などを済ませた後、あの嵐で二人をアルカンから逃がした」
「ルーベンス様達は自由に動く為に自ら存在を隠したと言うことか」
「そう言う事だ。ルーベンス様は基本的に人魚島に隠れている。セシルはロクサンドの内部調査、トビーは全体の裏方、ニックがキリナントルの指揮、俺がキリナントルと他の連絡役だ」
「となると、今回の誘拐事件はルーベンス様からの指示と言うことか」
やっぱりテッドはバカじゃないんだよなー。これだけの情報でそこまで行き着くんだもんなー。
「なら、被害者の中に協力者が居るのか。いや、この場合自警団の中にも居るな」
「ああ。自警団の協力者筆頭はビルだ。テッドには悪いが、元騎士団の連中はまだ俺の指示で動かせるからな。被害者の協力者は一番始めに捕らえた娘と今夜連れて行く中に一人いる」
「そうか」
テッド、考え込むのは後にしてそろそろ重石どかしてくんねー?足の感覚が無くなってきた・・・。
「みなさん。小屋の内情が分かりました。
──何をやっているんですか?」
スカイ様が俺ら三人の状態を見て、呆気に取られてる。てか、小屋の内情ってなんだ?
「スカイ様、こいつらのことはお気になさらず。小屋の内情ということは息子さんと連絡が取れたということでしょうか」
「え、ええ。どうやら明朝に船に乗ってどこかへ連れ去られるそうです。その折りに、年長の娘達が犯人達に体当たりなどをして海から転落させる計画の様でした」
スカイ様が口元を引き攣らせながら情報を教えてくれた。やっぱり出発は明朝か。
「お前たち、女子供を危険にさらす気か?」
「──テッド、人手が足りないんだ。本命は別だからな」
テッドがこちらを睨みつけながら聞いてきた。それにオズが静かに答えるが。本命って、言っちゃ不味くね?
「本命?まだ何か俺に隠しているのか?」
あー、ほらやっぱりな。
「隠している訳では無いんだが・・・」
「オズ、もう言っちまってもいいんじゃねぇか?明日で全部片付くんだろ?」
そうだそうだ!めんどくさいからさっさとゲロってしまえ!
「そうだが、テッドには言うなとの指示だからな」
「おい、その指示は誰からなんだ?」
「・・・ハァ。指示を出したのはアドルフだ」
「兄さんが?」
「そうだ」
「一体、今アルカンで何が起こってるんだ?」
「それは言えない」
「もぉ全部話しちゃいなさいよぉ。それで女の子達の方にはテッドが助けに行けば良いんじゃないのぉ?
それよりコレどかしてもらえなぁい?もぉ足の感覚なくなっちゃったわよぉ」
「そうか。その手があったか。テッドを頭数に入れてしまえば問題ないのか。セシル、意外と良い案を出すな」
オズ、それマジで言ってる?
「話はまとまったかい?そろそろ僕たちにも分かるように説明して貰えないだろうか。手なら貸すから」
「あんたらが手を貸してくれりゃあ百人力だな!」
「こらトビー!口を慎め!!」
「あ、わりぃっ!」
テッドがトビーを叱りつつ足から重石を退けていく。
うっわ!た、立ち上がれねー!こんな屈辱的な格好で震えたくねーよ!
「さて、全て話して貰おうか」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
「こんなに痺れるとは」
「あーん。もぉ動けないぃ」
ガチャリ
「誰だ?今会議室は使用中・・・」
ドアが開いた事に気付いたテッドが言い掛ける。
は?お盆を持ったジエン様?はぁあ!?
「ジ、ジエン様!?」
「テッドよ。先ずは一服どうだ」
ジエン様はそう言って、スカイ様とブラウン様にカップを手渡してる。目の前の状況の意味が解んねー。
「あぁぁぁ!気が回らずに申し訳ありません!」
テッドが勢いよく謝るとカップを受け取った。俺も・・・ダメだ、震えと痺れがまだ治まらない。
「まぁ、気にするな。わしが一番暇だったから茶でも淹れようかと思っただけだ。すまんが爺さんの淹れた茶で我慢してくれ」
「そ、そんな滅相もございません!ジエン様にお茶を淹れていただいたと家族に自慢させていただきまする!」
テッドはかなりテンパってるな。言葉の端々が若干怪しくなってるぞ。
暫くして落ち着くと立ち上がり、ジエン様に淹れていただいたお茶を受け取り一息ついた。
スカイ様がオズに視線を飛ばし、話始めるように促した。
ショーマ「なぁ、朝木」
朝木 「うーん?なにー?」
ショーマ「俺はパッと最後の所だけ居た感じだけど、いろいろあったんだなーってさ」
朝木 「確かにねー」
ショーマ「俺、人間とあんまり関わりたくないな。前世の方が淡白な人間関係だったから楽だったかも」
朝木 「まぁ、どうなるかは今後の皆の動き次第でしょ」
今後の展開はノープランな朝木でした。
いや、大筋では決めてますよ?
でも、どうやってそこに辿り着くかはノープランと言いますか…
(;゜∀゜)
次回、セシルの話6。です。
そろそろ大詰め…
はい、今度こそなんであんな作戦になったのか書かせて頂きます。
m(__)m
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加、ありがとうございます!
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これからも頑張ります!
d=(^o^)=b