21―セシルの話2
少し遅くなりました。
前回同様いつもより少し長めです。
今回の後半戦はいつもと違い残酷な描写が多発しています。
苦手な方はご注意ください。
お口直しに後書きでおまけを少々書いています。
内容は3つ目の疑問の答えです。
ある日、俺はルーベンスと二人きりで隠れ家にいた。ちょうどいいと気になっていた事をルーベンスに聞いてみる。
「ねぇ?エドに名乗った“ルドラ”ってどんな意味なのぉん?いつもの名乗りではルドラなんて言わないわよねぇ」
「あぁ、ルドラって言うのは魔物相手の名前だよ。ドラゴンの庇護を受けてるって言う意味なんだ」
「ド、ドラゴン!?」
「そう。100年くらい前にドラゴンの長がアルカンに滞在していてね。アルカンを気に入ってくれてルドラの名を頂戴したんだ」
「長って、キング!?」
「キング?良く分からないけど、青紫の髪をしたジエン様がドラゴンの長だよ。セシルは会ったこと無いの?」
「あんなん普通に会ったらそっこー死ぬわ!!」
「あはは。セシル、素になってるよ」
「今更だろっ!」
ソルマンティがドラゴンの庇護を受けてるなんて聞いてねーよ!あんにゃろ、黙ってたなっ!!
◇◇◇
今日、騎士団の連中は釈放される事が決まった。
キタサンに詰めていたロクサンド派の警備兵共を追い出し、元騎士団の奴等を鍛練場に集める。
「うふぅん。お勤めご苦労さまぁん。さぁ、みんなには働いて貰うわよぉん!」
「おい、その前に状況を説明しろ」
「あらやだ。ワタシったら先走っちゃったわぁん」
おいこら、ケツを庇うな!誰もそんなもん狙ってないわっ!!
「はぁー。みんな次の仕事の宛は無いでしょお?いくら冤罪とは言え牢屋に入れられてたんだものぉ。そんなみんなにお仕事を紹介しまぁす!はい、拍手ー」
パチパチとのってくれたのは数名か・・・って、諜報部のヤツだけかよ!!
「──コホン。それではお仕事内容を発表するわよぉん!ズバリ、アルカンの治安維持!これに尽きるわぁ」
ザワザワ
「困惑するのも無理は無いわねぇ。だってまだ町の様子を見て無いのだものぉ。だから、先ずはその囚人服を着替えて町を見てきてちょうだい。気が済んだらキタサンに戻って来てねん」パチン
俺の渾身のウインクは放置された・・・。
結果、元騎士団のほとんどが自警団に入った。入らなかった者は地元に帰っていった。
◇◇◇
自警団の運営はある程度軌道に乗った。
そろそろ頃合いかと俺はオズとトビーを連れてルーベンスのいる隠れ家に向かう。オズは釈放後初の訪問だ。
隠れ家にはルーベンスとエドがいた。ニックは下準備の為に居ないらしい。
「ルーベンス様、挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません」
「御苦労様。ここは公の場じゃないからいつも通りで良いよ。それより、牢屋生活は楽しかったかい?」
「書類仕事に追われない分快適だったが、二度と入りたく無い」
「アッハハ!そりゃちげぇねぇや!!」
「うんうん。経験者の言葉は重いねぇ」
「ルーベンス様ぁ、うんうん納得してる場合?オズをエドに紹介しなくていいのぉん?」
「そうだった。オズ、此方の方はエド様。人魚様だよ」
「この方が!俺はオズと申します。よろしくお願いいたします」
『あぁ、よろしく。って言っても聞こえないか。ルーベンス、普段通りで良いと伝えてくれ』
「畏まりました。オズ、エド様は普段通りで良いと仰せだよ」
「助かります」
『ルーベンスも普段通りで良いんだが』
「それはたぶん無理よぉ。今は領主の代理であんたに接してるんだからぁん」
『そんなものか?』
「人間には理解の及ばない柵が沢山あるのよぉん」
『ふーん。セシルは意外と哲学的な事を言うんだな』
「意外とって、失礼じゃなぁい?」
「うん?セシルはエド様と会話出来るのか?」
「あ・・・、そうなのよぉん。なんでか聞こえちゃうのよねぇ」
「クスクス。さぁ、今後の予定を話そうか」
「ああ、頼む」
今後の予定をルーベンスが話した。
先ずは自警団の指揮を取りつつロクサンドの情報を得る。
情報が集まった後、俺がロクサンドに潜入する。
ある程度の信頼を勝ち得たら、ルーベンスを暗殺したように見せ掛けて消す。
その後自警団を辞め完全にロクサンドに下る。
あとは次の機会をそのまま待つ。
「うぅん。一番難しいのはルーベンス様をどうやって暗殺するかよねぇ。何か計画はあるのかしらぁん?」
「とりあえず、君達に護衛を頼んで人魚島に向かおうと思ってるんだ。この情報は意図せずロクサンドに流れた体を取るよ。
その旅路で計画を実行しよう。海上で暗殺された様に見せ掛ける為に、何か証拠を持って帰って貰おうと思う。例えば、髪の毛とか」
「ルーベンス様の髪の毛なら暗殺の証拠になるか。なかなか居ない髪色だからな」
「でもよ、完全に死んだって信じさせるのはルーの髪だけじゃ難しくねぇか?」
「何処かで生きてるって言われても否定出来ないわねぇ。でも、それを信じさせるのがワタシの仕事なんでしょお?」
「そう言うこと。セシルの腕前に期待してるよ」
「しょうがないわねぇ。このセシル様に任せなさぁい」
◇◇◇
俺達はロクサンドの情報を集めた。
あいつらは自警団を目の敵にしている。
そりゃそうだ。アルカンを自分の好き勝手にしようと思ったら、ガッツリ横槍が入ったんだから。
ちなみに俺が一番憎まれてるみたいだ。外聞的には俺が発足した事になってるからな。
他にもいろいろと有るが、今の俺達には奴らがルーベンスを探している事が深く関わってくるだろう。
ソルマンティを一人残らずこのアルカンから追い出す事が、ロキシラースからの要請らしい。
ここに来て、またロキシラースか。
◇◇◇
俺は今日、ロクサンドのパーティーに潜入する。
「みんなぁ、お待たせぇん♪」
「ブハッ!セシルっ、くくっ!!」
「いつ見ても凄まじい変わり様ですね」
「本当にセシルなのか?」
「お前、それ似合いすぎじゃねぇか!」
『本当は女なのか?』
「やだぁ、みんなワタシの魅力にメロメロじゃないのぉん。これでバッチリねぇん」
はぁ。任務の為とは言え女装はあまりやりたくねーんだよな。
おいこら、エド。胸の中身に興味を持つな。これは企業秘密だ!
トビーは巨乳党だったのか。俺はこう、手のひらから少し溢れるサイズがベストだと思うぞ。いろいろしやすいからな!
臨時のメイドと言う肩書きでパーティーに潜入したが。まぁ、俺にメイドなんて無理だ。働きまで期待するなよ?
ちなみに今回の変装はジョナサン好みの金髪巨乳(そして美女w)だ。垢抜けない地味な装いが良いらしい。
俺達諜報部の内部資料で領内ほぼ全員の有力者の好みは食から性癖まで全て網羅している。
断言しよう。ジョナサンはヤバい。男もイケるとか。今回はマジで貞操の危機かもしれねー・・・。
とりあえず、パーティーの開催中に執務室に忍び込むか。流石に主催者が会を抜け出す事は無いだろう。
目論見通り、見回りに取り押さえさせる。
《当主様、執務室にネズミが一匹紛れていました》
《何?どこのどいつだ》
《分かりません。ただ、今回臨時で雇ったメイドです。執務室で拘束しておりますが、牢へ移しますか?》
《いや、執務室に転がしておけ》
《はっ!》
俺は飛ばしておいた風鳥を通して、ジョナサン達の話を聞いた。
ふんふん。やはり女と聞いて牢へは入れないか。
さてと、俺は親の仇を取りに来たような顔をしないとな。
「お前が我が家に忍び込んだ不届き者か」
俺は殺気を込めた視線を向ける。口が塞がれているからな。
「おいおいどうした。うん?ほれ、私はここに居るぞ?その顔は殺したい程憎いんだろ?」
「・・・」
「くふふ、ふはははは!手も足も出まい!私はな、そんな女を嬲るのが好きなのだよ!お前の様に私の事を殺したい女なら殊更な!」
「・・・」
「その顔が苦痛に変わるのか、快楽に変わるのか。くふふ。楽しみだ。
おい、この女をいつもの部屋へ連れていけ」
俺はジョナサンに悪趣味な部屋へ連れていかれた。マジかよ。拷問器具まであるじゃねーか。
「くふふ。まだ怯えは見えないな。これはいつも以上に楽しめそうだ。
お前達は下がっていろ」
俺はジョナサンと二人きりになった。
「そうだ。まだ声を聞いていなかったな。お前はどんな声で啼くんだい?」
ジョナサンがにやけながら俺の口を塞いでいた布を取った。とりあえず生理的に受け付けないので顔に向けて唾を吐いといた。
「な!?よくも!」
バチーン!!
クッソッ!イッテー!!本気で殴りやがったな!勢いでズラが吹き飛んだじゃねーか!!
「くふふ。痛いだろう?次から反抗的な態度は取らない方が懸命・・・うん?その髪・・・。
おい!すぐ中へ来い!」
俺はそのまま身バレして、一晩中本気の拷問に掛けられた。最終的に命乞いしてなんでも言うことを聞きますと言い、予定とは違ったがロクサンドに潜入する事に成功した。
ロクサンドの屋敷からぼろ雑巾の様な状態で借家に帰ってきた。
はぁ。人間だったらマジで死んでたぞ。身体強化でどうにか致命傷は貰わなかったが。でも、ま、あの変態からケツが守られただけでも良しとするか!途中で男なのが惜しいって舌舐めずりされた時は終わったと思ったけど。
さぁて。このリストから暗殺対象を決めなきゃいけねーんだよな?はぁ。気が進まない。でも、これをやらないと完全に信じさせるのは無理だな。とりあえず、トビーに相談して決めるか。
「おいおい、大丈夫なのかよ!?」
「あはは。ちょっぴりしくじっちゃったのぉ。でも大丈夫よぉん。これくらいすぐ治るし、ワタシは女の子じゃないからねぇん」
流石に力一杯頬を張られた跡は目立つよな。服の下はもっとヤバイけど。見せたらいくらおちゃらけてるトビーでもキレそうだ。
クソッ、見透かそうとしてるんじゃねーよ。これ以上この話題に触れてくれるな。
「──はぁ。それで、この中から何人殺んだ?」
「二人以上よぉ。ほんと最低野郎よねぇ」
「ふーん。ならコイツとコイツだな」
「この二人はなんで大丈夫なのぉ?」
「そいつらはアイツの仲間だ。リストに載ってるってこたぁ、どうせ仲間割れだろうさ」
俺はリストから貴族と商人を殺した。この二人が簡単そうだったと嘯いて。
貴族の時は家人を全員拘束して火を放った。
商人の時はナイフで喉を切り裂いた。その場に居合わせた護衛と、無関係の少女も共に。
少女は俺に殺してくれとせがんだ。俺はその望みを叶えた。死ぬ間際、ありがとう天使様。と言われた。エドに言われた俺の見えざる羽根が彼女には見えたのだろうか。本物の羽根を見せてやったら、死にたいなんて言わなかっただろうか・・・。
俺は手に残る少女の肉を断つ感触と、少女がほほ笑みながら血に塗れた光景を一生忘れる事は無いだろう。
☆おまけ☆
ショーマ達はアルカンから洞窟近くの広場に転移してきた。
「ショーマ、三つ目の質問に今答えようか」
「ホント?お願いしまーす!」
「うん。僕がこのまま空を飛べるのかって言う質問だけど、結論から言えば飛べるよ。ただ、ドラゴンの中でも僕とシドだけだけどね」
「スゴい!でも、なんでソラさんとシドさんだけなの?」
「それは、私達が女神様に作り出されたからだよ。他のドラゴンに比べて貯められる魔力の量が大きいのと魔力操作の能力値が高いから出来るんだ」
「そうなんだ。じゃあじいちゃんは飛べないの?」
「ワシは無理だ。なんで飛べるのかサッパリわからん」
「へぇー」
「あ、ショーマ君にはこの眼鏡(魔道具)を貸してあげよう。秘密が見えるよ」
「え?このメガネで何が見えるの?」
「ふふ。まぁ騙されたと思って、掛けたら杖の様に魔力を流してごらん」
「え?こうかな・・・おぉ!なんかソラさんとじいちゃんの周りにキラキラが付いてる!あれ?でもシドさんには付いてない」
「そのきらきらして見えるのが身体から出ている魔力だよ。私は魔力制御をしているから出てないんだけど、こうすれば」
「おお!シドさんからキラキラが筋状に延びた!!」
「これが一方向の威圧を放った状態だね。人型の魔物・・・ショーマ君が言うところの魔人にはこう見えて居るんだ。じゃあソラ、飛んでみて」
「わかった。どうだい?見えるかな?」
「ふぉー!!なんだこれ!!ちょーかっけー!!キラキラが集まって翼になってる!!そんで周りは上昇気流(?)みたいに立ち上ってる!!」
「なんか照れるね。こうやって飛んでるんだよ」
「ねぇねぇ、俺も一緒に飛べる?」
「はは。ほら、おいで」
「おぉー!!!飛んでるー!!!」
ショーマはソラに後ろから抱き抱えられた状態で飛んでもらって大満足した。
◇ ◇ ◇
ソラ・シドのチートが叩き売り状態です。
もうしょうがないと開き直る!笑
次回、セシルの話3。です。
今度こそショーマの誘拐事件まで描きたい!
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いつもありがとうございます!
(*^^)/
総文字数が25万字を越えました!
どこまで増殖するのだろうか・・・。笑