第五章
ルナの肩には、しっかりとティムの手が置いてあった。
何もしゃべれないくらい緊張してるはずなのに、なんだかその手が心地いいから、ルナは静かに言った。
「私たちの始めての会話、覚えてます?」
いたずらっ子のように笑いながらのその質問に、ティムは一瞬戸惑った。
「・・・ごめん。」
そして、小さく誤った。そのティムの様子に少し焦ったルナは、すぐに、ティムに向かって微笑んだ。
「そっそんな!いいんですよ!」
そう言ってから、二人は顔を見合わせ、苦笑した。
しばしの沈黙。広場が見えてきたので、時計を見ると、まだ2時47分をさしていた。
沈黙に耐え切れなくなったのか、ルナが呟いた。
「本当は、ちゃんと覚えていますよ。」
「・・・え?」
「始めての、会話です。」
「ああ。」
ノアから、2歳年上の友達ができた。と聞いたとき、なぜか、「会いたい」って、すごく思った。会いに行ける日が待ち遠しくて、あと何日、あと何日って、数えて待った。でも、いざその日になると、緊張して、ノアが呼びに来ても、固まったままだった。それどころか、私は『怖い』とも感じていた。
会ったことも無い人に会いに行くのに、変な感じ。私は、ずっとそう思ってた。
実際会ってみて、私は、怖いなんて思った自分が馬鹿だったと思った。彼は無表情で、私の頭を撫でてくれた。それは、全然優しくない、くしゃくしゃと混ぜるような撫で方だったが、私は、そんなことどうでもよかった。私の視線は、彼の真っ黒な瞳以外の、何者も映していなかったのだから。
しばらく3人で遊んだ。そのあいだもずっと、ティムは表情を見せなかった。帰る時間が来て、母が迎えに来た。
「ルナ、そろそろ帰りますよ。」
優しい母の声は、私に刺さるような衝撃を与えた。
「もう・・・?」
(まだ5時なのに・・・)
私は心の中でつぶやいた。
「もうって・・もう5時なのよ?」
「・・・」
その時、別の声が遠くで叫んだ。
『ノーアー!帰るわよー!ティムも、早くー!』
その声は、ノアのお母さんの声だった。
二人は一緒に、「はーい」と叫んで、ノアが走っていった。しかし、ティムは残っていた。
うずくまって泣きそうになっていた私のところに来ると、頭を撫でてくれた。最初に会ったときのように、無表情で。そして私は「ルナちゃん」という声に顔を上向けた。顔を上げた私の額にティムはちょっとキスをした。
自分の顔は見えないけど、たぶんすごく真っ赤になっている私に、「また。」と言って、一瞬笑って、走っていった。遠くの方で、自分を睨んでいるノアを見た。びくっとして身を小さくしていると、優しく、あやすような声で、
「さぁ、帰りましょう?」
と言う声が上から降ってきた。母の声だった。
次の日、いつも遊びに来ていたノアは、こなかった。
そのあとはしばらく、ノアとは話せなくって、泣いたこともあった。ノアは、あの時絶対ティムのことが好きだった。だから、私を・・・ティムに笑いかけられた自分を見て、“嫉妬”したんだと思う。でも、あのころの私にそんなこと解るわけが無くて、ただ泣くことしかできなくて・・・
最初は、ノア一人だけ、ティムといつでも遊べて、ずるい!なんて思ったこともあって、おこったこともあった。だから、ティムを変えたい、自分だけのものにしたい。そう、思ったんだ。
ノアはずるい。ノアだけ、全部・・・だったら、ノアの物、奪いたい。全部、残さず、奪ってしまいたい。何度思ったことか、でも、そのたびに
そうじゃない。ノアじゃない。我儘で、自分勝手で、いっつも迷惑かけているのは誰だった?
本当はそう。ノアが全部持ってるんじゃない。私は、欲しい物が手に入らなかったことは、手に入ったときより少ないんじゃないか?それは、ノアが譲ってくれるから。ノアが、差し出してくれるから。
そう、悪いのはノアじゃない。ノアは、ちょっとだけ、我儘を言ってみたかっただけ。私と同じように。
ノアとは違って過去と現在(前フリ)をいっぺんに書いてみた。
しかしまとまらず(殴
まぁ……きなこの文章力が無いのはもとからさ〜♪