第二章
ノアが町のはずれについた時にはもう祭りの準備は終わっていた。
「時間は…間に合ってるよな。…ってか、寒っ!…」
時計は2時36分をさしていた。
ノアが一休みしようとしたとき……
「ノォアァー…」
と、今にも死にそうな声が聞こえた。
「!?」
振り向くと、今にも転びそうにふらふらしながら走ってくる人影が見えた。
それが何かわかったノアは
「おーい!早く来い」
と、一言叫ぶ。
雪に足を引っ張られてよろけながらルナは、最後の力を振り絞って
「ノア…まっ…っ!!!」
とだけ叫んで、その場できえた。
「ちょっ!えっ!?おい!!ルナ!?」
駆け寄ってみると、急いで家を飛び出したために、みょーに厚着したルナが、雪に埋もれていた。
「おい。ルナ。いつまでこけてる気だ。」
それでも起きないのを確認したノアは、最終手段をとった。
ルナの耳元で
「……ティム」
とつぶやいた。
その瞬間、ガバッと起きあがって、(反射的に正座になって)きょろきょろとその姿を探した。ルナの顔は、真っ赤だった。…雪のせいで。
その姿にため息をつきながら、少し悪戯っぽく
「うそ。全然起きないから。」
その言葉にガーンという音が聞こえるくらいにショックをうけて
「ひどい…」
とだけ言った。
「だいたい、あんな奴の何が良いんだ?」
そう聞かれると…と、思いながら、頬を赤く染め(今度は雪のせいではない)、小さな声で,
「…そ、それは……」
と、口ごもって、
一番近くにいたノアにも聞き取れないようなさらに小さな声でつぶやく。
「ぜ…………」
全然聞き取れなかったノアは、すかさず聞き返した。
「…聞こえねーし。…なんて言ったんだよ?」
「だ、だから、…………」
声は,さらに小さくなっていた。
「あー!!もー!!聞こえないって!!!」
その叫びに続いて、ルナも叫んだ。背後から影が迫っているのにも気づかずに。
「だから、ぜ・ん・ぶ!!!」
「全部って,何が?」
「だ、だから…」
と、答えかけて、振り向く。
そこに見たものは、長く透き通るような黒髪を、ひとつに縛って、祭り用の衣装を着た少年が立っていた。一目で“軽い奴”だろうと、推測できた。その少年を見るなり、目を輝かせる少女,敵意を剥き出しにする少女。人というものは、それぞれである。
「ティム!!何でここにいるんですか!?」
「何でここにいんだよ。お前爺の班だろ?」
爺と言うのはもちろん、ノーガのことだ。
「準備も終わって、休憩中なんだけど…来たらまずかったか?」
少女達は即答した。
「いいえ!?全然!?」
「すっげー迷惑。」
ルナとノアはお互いをにらんで言い争い始めた。
「なによっ!せっかく来てくれたんだから迷惑なんて言うこと無いでしょ!?」
「俺は迷惑だから迷惑っつっただけだ!」
「あっまた迷惑って…ティムは迷惑じゃないもん!」
「こっちの準備もあるんだから邪魔!!」
「あっ!!今度は邪魔!?ひっどーい!」
「邪魔だろーが!!どう見ても!」
「ってゆーか、準備とか、もう終わってるし!」
「でっでもなぁ!!」
二人が口喧嘩を始めたのを見てティムは“いつもの”光景に苦笑しながら、二人の間に割って入った。
「はいはい。俺は邪魔でも迷惑でもないって事で。」
言いながら、ルナの肩を抱く。
「んなっ!?」
「ひゃあっ!!」
ルナを優しく抱き寄せながら、ノアを見、そしてルナに向かって微笑んでから、
「このあと、俺達も集まるらしい。行こうか、ルナちゃん。」
何が起こったのかまったくわかっていないような顔をしたルナを押すようにして、ティムはゆっくりと広場の方へ歩き出した。そして5歩ほど歩いたところで立ち止まり、一人でぽかーんと口を開けたまま突っ立っているノアを顔だけで振り返ると、
「早く行かないと、おくれるよ?」
とだけ言って、また歩き出した。
その声に我に返ったノアは、
「一生やってろ馬鹿やろぉー!!」
と、負け犬の捨て台詞のような言葉を叫んだかと思うと、ものすごいスピードで二人の横を通りすぎて、広場に向かって走っていった。
ノアはやきもちでも妬いたのか……?
つか負け犬て(汗