第十七章
「ん…」
ルナは誰かに背負われていた。
「あ。起きた?」
すぐ近くで、ノアの声がして、目を開けると、辺りはまだ暗かった。
自分はノアにおんぶしてもらっているのだと気付いたのは、ノアの体温を間近に感じてからだった。
「ノア…連れてきてくれたの?」
「あぁ。風邪ひかれたら困るし、起こすのも可哀想だったからな。」
ノアの声は、いつもよりずっと落ち着いていた。
まるで、子供をあやすような口調に、ルナは昼間見た夢を思い出していた。
「お母さん…」
ルナは思わず呟いた。
「今日はどうしたんだ?やけに言ってるな、それ。」
少し心配したような声。
ルナの瞳からは静かに涙が伝っていった。
「…ううん。なんでも、ないよ。」
「…そうか…。」
「…うん。」
「ほら、ついたぞ?」
結局、ルナは家まで送ってもらった。
「うん。ありがと。」
ルナは眠そうな返事をして、ノアの背から降りると、にこっと笑って見せた。
「風邪ひく前に、とっとと寝ろよな?明日もまだ祭、あるんだから。」
「うん。ノアもね。」
「あぁ。おやすみ。」
そう言って、ノアは隣にある自分の家に戻っていった。
ノアが家に戻った後、ルナは夢について考えていた。
(ノアとティムの声…夢の中で聞いたお母さんとお父さんの声だった…)
「ノアとティムが…私の…両親…?」
急に頭痛がしてきて、ルナはうずくまって頭をかかえた。
(そんなはずない。ノアとティムは昔からの友達で、私の、友達で。親なんて、年齢的にもありえないし…。)
軽く頭を振って立ち上がると、冷たいベッドに倒れこむように横になった。
また、アノ夢が見られることを祈りながら、ルナは眠りについた。