第九章
「おせーよ!泣き虫カップル。」
ルナの顔を見て目が赤いことに気づいても、いつもの事なので気にならなかったが、ティムが来た時はさすがに驚いた。自分も少し泣いたのだが、それはこの2人には秘密にしておこうと思った。
「ごめん・・・」
「ところで、お前ちゃんと爺さんの話聞いてたか?」
「・・・あ、あたりまえだろ・・・ははは・・・」
(聞いてないな・・・)
ルナとティムは同時にわかった。
「じゃあ、繰り返してみてください?ノアさん?」
そんなティムの意地悪な問いかけに、ノアは一歩後ずさった。
「ぅっ・・・・悪ぃ…聞いてなかった。」
意外と笑って正直に答えるノア。
「う〜、じゃあ聞きにいくの?」
ルナは誰に聞くでもなく口にしていた。
「・・・しかたないな・・・俺が聞いとくよ」
「マジか!?」
「本当ですか!?」
2人の声がティムの声の最後に重なった。
二人の目は、輝いている。
「・・・そんなに嫌なのか?」
またも2人は同時にうなずいた。
「はぁ・・・その代わり、ノア、お前に紹介しなきゃならない人物がいるんだ。」
「あ、そうだった!!ノア、早く来て!!」
そう言うと、ルナはノアの手を引いて駆け出した。ティムも走って後を追いかけた。
「あ・・・あんた。」
「ルナさん・・・でしたわね?」
「はぁ・・・」
気の抜けた返事を返した。そこにいたのは、あの、ティムを探していた女だった。
「私はアレイと申します。えっと・・・ティム、説明お願いして、いいかしら?」
ティムはアレイに促されて、ノアに説明を始めた。
「今日から、アレイもこの街の住人だ・・・というか、俺らの母親になるわけなんだが・・・」
「・・・はぁ。・・・・・・・って、えぇ!?」
普通に返してから、事の重大さに気づいたノアは、驚いて聞き返した。
「はぁ!?だって、今日あったばかりの人間にいきなり“母親になりました。”なんて言われても・・・!」
「それは・・・そうですわね・・・すみません。いきなりこんなこと・・・」
ノアの剣幕に、アレイはたじろぎ、うつむいてしまった。ルナはそんなアレイの肩を叩いて、「いつもの事だから・・」と慰めていた。
「ノア、落ち着いて聞いてくれよ?母さん。あの・・・・昔話。」
「…ええ。」
そしてアレイは本日2度目のティムの昔話をして、ノアは、本日2度目の涙を流した。
「そ・・・か・・・・・ティム、それであの時、『慣れてる』って・・母さんのこと『優しい』って・・・」
ティムも、その時の事は鮮明に覚えていたので、うなずき返すことができた。
「・・・・・・・・・・いいよ。」
「え?」
いきなりの承諾に、一瞬何のことだかわからなくなった。
「母さん。よろしくな!」
「あ・・・ええ。よろしく。」
意味がわかったころには涙も消えていて、みんな思いっきり笑っていた。
皆あっさり家族とかww
すごいね。きなこゎーりゅど(ワールド)