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07,円盤怪獣襲来

 北極のサンタの国から回転しながら飛び立ったクラゲ怪獣は、

 海を越え陸を越え、日本に飛来しました。

 人々の前に姿を現したのは、ディ○ニーリ○ートでした。

 午後8時過ぎのことです。

 1年を通していつでも大人気のディ○ニーリ○ートですが、特にこの時期、この日は、特別に多くの人でたいへんにぎわっていました。

 ディ○ニーランドもディ○ニーシーもちょうど夜のパレードの最中で、みんなうっとり次々流れていく色とりどりの光の洪水と、夢の国全体のきらびやかな光のデコレーションにうっとりしているところに、遠くからキイーーンと風を切る音が近づいてきたと思ったら、空に巨大な青いシャンデリアが現れました。お客さんたちはすごいアトラクションだと思って喜びましたが、シャンデリアは外側のプロペラを回転させながら、中央から長い脚をにょろにょろ伸ばし、先を葉っぱのように広げると、そこからパレードのきらびやかな電飾の電気を吸い取っていきました。すっかり電気が消えたキャラクターたちの乗った車が停止し、お客さんたちもこれはおかしいと気づいて騒ぎ出しました。

 空の巨大シャンデリアはゆっくりシーとランドを移動していき、広げた手のひらからどんどん電気を吸い取っていきました。

 クリスマスの光の飾りがチカチカ暗くまたたいて、次々消えていきました。

 パークを照らす街灯もおみやげ屋さんやレストランの灯りも次々消えていき、暗闇に沈んでいく夢の国の中で、お客さんたちは恐怖の悲鳴を上げました。

 電気が吸い取られる被害はディ○ニーリ○ートにとどまりませんでした。

 電気を供給している発電所は急激な電力消費の上昇に対応しきれずシャットダウンしてしまいました。ディ○ニーリ○ートとその周辺ブロックがあっと言う間に電気が止まって真っ暗になっていきました。この節電のおりになんて迷惑な奴でしょう。


 事態を監視していたサンタの国では直ちに

「停電地域の治安維持(ちあんいじ)に務めるべし!」

 と、サンタ軍団が派遣(はけん)されました。サンタたちは暗闇はお手の物です。彼らはジェットそりに乗って急行すると、手分けして自動車の交通整理や避難する人たちの誘導、泥棒の監視などを行いました。サンタの服にはピカピカ赤く光る機能がそなわっていて、すごく目立ちます。親切で頼もしいサンタたちに暗闇に怯える人々も安心することが出来ました。

 ディ○ニーリ○ートの混乱も心配されましたが、ここはスタッフたちがサンタクロースなみに素晴らしい活躍をして、おおぜいのお客さんたちを無事に施設内に避難させました。


 ディ○ニーリ○ートと周囲一帯を真っ暗にした空飛ぶクラゲ怪獣は、今度は眠らぬ街、大都会東京を目指して移動しました。みんな知っていると思いますが東京ディ○ニーリ○ートは実は千葉県にあるのです。

 東京の街は夜になっても超高層ビルの窓やお店のネオンや街路灯や道路を交通する車のライトで光に溢れています。

 クラゲ怪獣は電気が大好物なようです。ここでもさぞや電気を吸い放題かと思いきや、

 クラゲ怪獣は手近なビルに着陸すると、長い脚を伸ばして、吸盤で吸い付きながら、ビルからビルへ渡り歩き始めました。

 ぐねぐねビルをこすりながら移動する様子に人々は、

「宇宙アメーバの襲撃だ!!」

 と恐怖し、捕まえられて溶かされてしまうのを想像して悲鳴を上げて逃げまどいました。

 しかしクラゲ怪獣は人間を食べるつもりはないらしく、道路をぐーんと、人々の上に腕を伸ばしていくと、デパート前の、色とりどりの電飾にきらびやかに輝く大きなクリスマスツリーを捕まえ、広げた手でヌルヌル包み込んでいくと、モグモグして、やがて離れていきましたが、ツリーはすっかり裸になって、電飾や金銀の星やボールの飾りが、すっかりなくなっていました。

 クラゲ怪獣はビルの谷間を移動しながら、次の大きなクリスマスツリーや、ファッションや宝石のお店のクリスマスの飾りを、次々吸い取っていくのでした。

 クラゲ怪獣はクリスマスの飾りが大好き……それとも大嫌い?なのです。

 ディ○ニーリ○ートが丸ごと電気を吸い取られたのはディ○ニーリ○ートがまるごとクリスマス一色に飾り立てられていたからです。

 人々はとりあえず宇宙アメーバが人を襲う気がないのを知ってほっとしましたが、せっかくの華やかなクリスマスのデコレーションがなくなって、暗い悲しい気持ちになってしまいました。

 クラゲ怪獣は柔らかいぷにゅぷにゅの体をしていましたが、その成分のほとんどは水で、重いのです。体をこすりつけられたビルは窓ガラスが割れ、コンクリートの壁にひびが入り、たいへんな被害です。運悪く足が引っかかった信号機の鉄柱も簡単にぐにゃりと折れ曲がってしまいました。

「こらあっ! …えーと、おまええ! 止まりなさあーーい!」

 お巡りさんがピストルをかまえて命令しましたが、怪獣に言葉は通じないようで、無視してずんずん迫ってきます。お巡りさんは仕方なく「パンッ」とピストルで怪獣の体を撃ちました。怪獣に利いたのかどうか分かりませんが、怒らせてしまったのは確かなようで、腕を伸ばしてくると手を広げ、お巡りさんに紫色の霧(きり)を吹きかけました。

「ぎゃあっ」

 お巡りさんは全身がビリビリしびれてその場にひっくり返り、ブクブク泡を吹いてしまいました。仲間のお巡りさんたちが慌てて、自分たちも体をビリビリさせながら、倒れた仲間を連れ出しました。命はだいじょうぶなようですが、しびれがひどくて当分起きあがれそうにありません。恐るべきクラゲの毒攻撃です。


 侵攻(しんこう)を続けるクラゲ怪獣は、六○木ヒ○ズに狙いを定めました。

 どうやらここはひどくお気に入り(ムカつく?)らしく、長い脚を巻き付けて取り付くと、にゅるにゅる上っていって、てっぺんをすっかりおおうと、電気を吸い出しました。ビルの窓がチカチカまたたくのといっしょに周りのビルや街路灯までいっしょにまたたきました。たいへんです、このまま電気を吸い取られ続けたらディ○ニーリ○ートの二の舞で大都会東京が大停電を起こしてしまいます!

 そこへ再び彼方(かなた)から爆音をとどろかせて宇宙戦艦ダイワが現れました。

 ダイワの主砲が

「ドオオン」「ドオオン」

 と続けざまに弾丸をクラゲ怪獣の体に撃ち込みました。

 ボヨオ〜〜ン、とゆれたクラゲ怪獣の厚い肌は弾丸をはね返すかと思いきや、ダイワの主砲の撃った弾はそのまま肌にくっつき、白い玉が見る見る大きくふくらんでいきます。10倍、100倍まで大きくふくらみ、ぷるんぷるんの水風船になりました。

「ドオオン」「ドオオン」

 ダイワはクラゲ怪獣の周りを大きく旋回(せんかい)しながら次々白い弾丸をクラゲ怪獣の体に撃ち込んでいきます。それは見る見るふくらんで、もはやクラゲ怪獣の本体が見えないほど大きな水風船がお互いくっついておおいかぶさっています。風船がふくらむのといっしょに街の電気のまたたきがおさまり、クラゲ怪獣は元気をなくしたようです。

 ダイワのコックピットでは八九車艦長が効果を確認してよし!とうなずきました。

「高吸水性ポリマー弾は成功のようだな」

 吸水ポリマーは赤ちゃんの紙おむつに使われる水を吸ってふくらむ物質です。

 コックピットにいっしょに乗っているクーシが艦長と三太郎に聞きました。

「でも、大クラゲに吸い込まれたイブの鐘と子どもはだいじょうぶなの? ……吸収されてモンスターと一体化しているんじゃ?……」

 艦長も自分たちの攻撃が子どもを傷つけてはいないかと心配そうに三太郎の顔を見ました。

「いや。イブの鐘は魔法の鐘だ。リク坊主がいっしょに吸い込まれたのなら鐘が坊主を守っているだろう。イブの鐘はスーパーチタニウムシルバーダイヤモンドカーボネート製だ、どんな化け物胃袋でも吸収なんて出来やしねえさ」

 三太郎の説明を聞いて艦長は安心しました。三太郎は注意深く大クラゲの行動を読んで言いました。

「サンタの国を襲ったことと言い、奴は心底クリスマスが嫌いらしいな。そういうことなら誘導も可能か………」

 めいっぱい水分を吸い取ってパンパンになった高吸水性ポリマー弾がこれ以上ふくらむことが出来ず、大クラゲからはがれて落下しました。

 現れたクラゲ怪獣の本体は4分の1くらいにへこんで、しわだらけになっていました。

 しかし、2本、3本、無傷の脚が動いて、落下した水風船の固まりに針を突き刺すと、チューチュー、水分を吸い返し始めました。しわしわだった頭がふくらんでプルプルうるおってきます。

「くそ、元に戻してなるものか。木代(きだい)戦闘班長、第2波攻撃開始!」

 艦長の命令でコックピットの木代戦闘班長がターゲットスコープでクラゲ怪獣に照準を合わせ、前甲板と底部の大砲がポリマー弾を発射しようとしましたが、クラゲ怪獣は元気になった腕を伸ばし、先から

「バリバリバリッ」

 と青白い雷を放電させました。

「緊急回避!」

 ダイワは間一髪、クラゲ怪獣の電撃から逃れましたが、体内に電気をため込んでいたクラゲ怪獣は

「バリバリッ、バリバリバリッ」

 と連続して雷攻撃を浴びせかけ、ダイワは急旋回で逃げ回るのでせいいっぱいでした。

 その間にクラゲ怪獣はすっかり元のプルンプルンの体に回復し、

「くそうっ!」

 と八九車艦長を悔しがらせました。


「うおお、おっかねえ。おっかねえから、俺は下りさせてもらうぜ」

 ニヤニヤ笑って言う三太郎を艦長はギロリとにらみました。

「逃げるのか?」

「ああ。怪獣と戦争ごっこはそっちに任せるよ。ま、せいぜいまた落っことされねえように気を付けて時間稼ぎしてくれ」

「なにいっ!」

 馬鹿にされて艦長は怒りましたが、三太郎はニヤッと笑って、

「艦長。時間稼ぎを、よろしく、頼んますぜ?」

 と言いました。

「何か作戦があるのか?」

「ああ。ま、サンタ流にやらせてもらうよ」

 そうでした、艦長たち乗組員はサンタの国から情報と技術を提供してこの宇宙戦艦を動かしてもらっていますが、サンタクロースではないのです。

「よーし、俺たちは行くぞ」

 三太郎はクーシと船酔いで青くなっているおじさんサンタたちを引き連れて歩き出しました。

「これからサンタ連合の一大作戦だ、忙しくなるぞ?」

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