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11/11

11,星の彼方へ

 深夜12時。本当のイブの鐘が鳴らされ、北極から世界中の夜空へオーロラと共に広がっていきました。

 今年は北極のサンタたちは子どもたちにあげるプレゼントをなくしてしまってサンタのお仕事はお休みです。仕方ないのでグランドサンタの家の周りの急ごしらえの氷のかまくらで自分たちのクリスマスパーティーをしました。本当は今年のイブはいつもに増して大忙しだったはずなのに、とんだことになってしまったものです。

 でもサンタたちは安心していました。自分たちの代わりは、世界中の他の誰かがつとめてくれていると知っているからです。

 ま、サンタたちにとってもたまにはこういうのんびりしたクリスマスイブもよいでしょう。

 来年は壊れた工場の建て直しに大忙しにならなければならないでしょうから。





 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 秘密のドッグで修理をする宇宙戦艦ダイワのコックピットに、亜空間通信で宇宙通信販売会社イズクンダーリの本社から連絡がありました。

『わたしはイズクンダーリの営業部長スジャータです』

 モニターに映ったのは金色の髪をしたとてもきれいな女の人です。

「わたしは地球の宇宙戦艦ダイワ艦長、八九車十次です」

 スジャータさんは艦長に頭を下げて言いました。

『地球人のみなさん。先日はわが社の営業所でたいへんな失礼があったようで、まことに申し訳ありませんでした。たいへんな状況でしたのに、足元を見るような商売をしまして、ろくな説明もしないで追い返すなど、営業所長にはきつく注意しておきました。どうかご無礼をお許しください』

 相手のていねいな謝罪に、八九車艦長は強い期待をしてききました。

「それでは、放射能除去装置トテモクリンナーGを、おゆずりくださいますのですか!?」

 スジャータさんは申し訳なさそうに目を伏せました。

『いえ…。残念ながらそういうわけにはまいりません』

「なぜですか?」

 艦長は期待しただけに思わず強い調子でたずねました。スジャータさんは艦長と、悲痛な思いで見つめる乗組員たちを見渡し、言いました。

『われわれ宇宙人のグループには他の宇宙人とのお付き合いの仕方に厳しい取り決めがあるのです。つまり、まだ未熟で、われわれの仲間としてふさわしくないと思われる宇宙人とは、お付き合いしてはならないということです』

 艦長は悔しそうな顔で言いました。

「それではつまり、われわれ地球人がまだ未熟で、あなた方宇宙人の仲間には認められないということですか?」

 スジャータさんは申し訳なさそうにうなずきました。

『そういうことです。本来こうしてお話しするのも宇宙憲章違反なのですが、今回はわたくしどもの営業所が営業成績を上げるために勝手にみなさんにダイレクトメールを送ってしまったのが間違いの始まりで、その説明と謝罪をするために特例措置としてお話しさせていただいております』

「お話………だけですか…………」

 八九車艦長は祖国日本の苦難を思って奥歯を噛みしめるほど悔しい思いをしました。

『しかし』

 スジャータさんが話を続けました。

『もしみなさんが自分たちの力で、わがイズクンダーリの本社までたどり着くことが出来たら、その時は偉大な冒険者への友情の証としてトテモクリンナーGを、差し上げましょう』

「ほ、本当ですかっ!?」

 八九車艦長は思わず大きな声を上げ、コックピットの乗組員たちは歓声を上げて喜びました。

『ただし。

 イズクンダーリの本社は大マゼラン星雲のナンダーラ太陽系第9番惑星にあります。みなさんの地球からですと14万8千光年の距離があります』

「14万8千光年……………」

 艦長はそのあまりに遠い距離に思わずうなるようにしました。14万8千光年とは光の速さで跳び続けて14万8千年かかる距離のことです。

『宇宙戦艦ダイワの宇宙航行技術、ワープ航法では、往復に100年かかる計算です』

「100年間…………」

 そのあまりに長い年月に艦長はまたうなりました。

『どうされます? やはりあきらめますか?』

「・・・・いや。」

 八九車艦長は決然と顔を上げました。

「行きます! 行きますとも! …………100年の年月が無駄になるかもしれない、いや、それならそれでもかまわない、しかし、しかし、もし100年後に、日本が、地球が、トテモクリンナーGの力を必要としているかもしれない。100年後の未来ではわたしはその結果を見届けることは出来ないだろう、しかし、それでも、わたしは行く! あなた方宇宙人グループの認める成長をわれわれが証明するために、その時の地球人がわれわれの原始的な冒険を晴れやかな笑顔で迎えてくれる素晴らしい、平和な成長を、遂げていることを願い、われわれはその証明のために、あなた方の元へ行きましょう! 待っていていてください、われわれは必ず、トテモクリンナーGを受け取りに行きます!!」

 八九車艦長と乗組員たちの決意に燃える顔を眺め、スジャータは満足そうに微笑みました。

『お待ちしています、若い時代の冒険者たち。困難な旅になるでしょうが、あなた方ならきっと成し遂げられると信じています。

 わたしはイズクンダーリのスジャータ。

 通信を終わります』



 ダイワは旅立つ、

 はるかな、未知なる大宇宙の大海原へ、

 地球人の英知を証明し、

 輝かしい未来を築き、新たな世界を広げるために。



「宇宙戦艦ダイワ、発進!」



 END

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