01,良い子のサンタクロース講座
良い子の皆さん。これはないしょなんですが。
実は世界中の町に本物のサンタクロースがやっているオモチャ屋さんというのがあるのです。どの町にあるかは秘密です。
特別なオモチャ屋さんではありません。ごくふつうの、どこにでもある、ただのオモチャ屋さんです。
なんで本物のサンタクロースがふつうのオモチャ屋さんなんてやっているか、変に思うでしょう?
これは、今の子どもたちがどんな物を欲しがって、実際にどんな物を喜ぶか、リサーチしているのです。
サンタクロースのオモチャ屋さんにはもう一つやくわりがあります。
新人サンタの教育です。
あれ? 新人サンタ?
なんだ、にせ者じゃないか?と思うでしょう?
いいえ、ちゃんとした本物のサンタさんなんですよ?
サンタクロースのシステムを教えましょう。
世界には、たった一人の、最初のサンタクロースがいます。
しかし彼は千歳以上のおじいさんで、そりに乗って世界中の子どもたちにプレゼントを配るのはたいへんなので、今はその仕事は引退して若いサンタたちにプレゼントを配る仕事は任せています。
サンタの国で、さまざまなテストを受けて、それに合格した人が、サンタの国公認の本物のサンタクロースになれるのです。
本物の本物のサンタクロースは、今は北極のサンタの国で、あたたかいだんろの部屋でのんびりひじかけ椅子にすわって、若いサンタクロースたちの相談役になっています。
そうです、サンタクロースの国は北極の氷の世界にあるのです。
他にも北極の周りでサンタクロースの家というところがありますが、それもみんな本物です。そこにいるサンタさんはサンタの国公認の本物のサンタクロースですし、たまに、こっそり、本物の本物のサンタクロースが遊びに行っていたりしますから。
じゃあ僕の部屋にもサンタの国から本物のサンタさんがプレゼントを届けに来てくれるのかな?と思った君は、残念でした。サンタの国のサンタたちがプレゼントを届けるのは特別の子どもたちだけです。どういう特別の子たちかと言うと……………まあ、それぞれです。いろいろな理由で特別な子どもたちだけが、サンタの国の本物のサンタクロースからプレゼントをもらえるのです。
なーんだ、つまんないのー、と思った君!
実は君にも、本物のサンタさんがプレゼントしているんですよ?
なんだ、本物のサンタは特別な子どもにしかプレゼントしないって言ったじゃないか?どっちなんだよお?と思うでしょ?
大きい子たちは……小さい子にはないしょですが……プレゼントはお父さんお母さんがお店で買って夜の内にまくらもとに置いておくだけだって知ってますね?
実を言うと、これはないしょなんですが、あなたのお父さんお母さんが、本物のサンタクロースなんです!
うっそだあーー、と思うでしょう? 本当なんですよお?
実を言うと、それには仕掛けがあるんです。
北極のサンタの国に、大きな鐘楼(しょうろう)があります。鐘楼というのは、教会にある、鐘(かね)を鳴らす塔のことです。サンタの国には、日本のお寺の、除夜の鐘(じょやのかね)を鳴らすような、大きな鐘が高い塔の一番上の部屋にぶら下がっています。銀色にピカピカ輝いて、お寺の鐘よりもっとおしゃれですが。
この鐘は、魔法の鐘です。
この鐘は、1年に1度だけ、クリスマスイブからクリスマスの日に変わる、深夜の0時に鳴らされます。
鐘の音は世界中に広がっていって、世界中のお父さんお母さんたちをクリスマスイブの夜の間、本物のサンタクロースに変身させるのです!
君たちがクリスマスにサンタのプレゼントをもらえるのは、実は、北極のサンタの国の、この魔法の鐘のおかげなんですよ?
あーーー………
ここで説明したのはサンタクロースの秘密のシステムですからね?
ここだけの話にして、他の人にとくいになってサンタの秘密を話してはいけませんからね?
ないしょにしておいてくださいね?
はい、ここまでは良い子に向けた良いサンタさんのお話でした。
ここから先は悪い子に向けた悪いサンタの話ですから……良い子は読んではいけません。
ま、ちらっと、こっそり、のぞくくらいかまいませんが……………