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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

四季彩

ショコラとピストル

作者: 三枝 透華
掲載日:2026/02/18

 バレンタインが近づいてきて、きっと世間は浮ついている。そんな気がする。まぁ、家から出るのは外が暗くなってからだから、多分だけど。

 歩いて数分のスーパーに入ると大量の板チョコが山積みになっていて、もうそんな時期なのかと思う。私にはあまり縁のないイベントだな。小さい頃は、手作りとかしたっけ。

 隣の荷物持ちでついてきた同居人は、山積みになったそれを見て、止まる。私が離れていく。

「なに、チョコ欲しいの?買ってあげようか」

「え?くれるの?あたしに?」

 猫にみたいな目を開いて驚く彼女が面白くてつい調子にのる。私も浮かれている一人だったみたい。でも、悪い気分じゃないな。

「しょうがないなぁ。なにがいい?つくってあげる」

「いいの?じゃあ、ガトーショコラ」

「うん、多分作れる。なら、買うもの増えたね。そっちは任せるよ」

「はいはい」

 普段から怠惰というより退廃的な生活をしているので、たまにはこういうのもいいかも。言ったそばからちょっと面倒だけど、彼女にはいろいろとお世話になっているし、そのお礼かな。一応、忘れてはいないけど私は居候みたいな立場だし。

 いつもよりほんの少し崩れかかった顔の彼女を覗き込むと、照れたのか口元を隠す。可愛かったのに、残念。

「……なに?」

「さぁ、なんでしょう」

 彼女が今度は私をおいて歩き出す。

「ほら、買うもん増やしちゃったし、はやく行こう」

「まって、もう。……あ。ねぇ、ケーキ買ってよ」

 彼女は呆れたように笑う。

「なんでだよ」

「やる気の補充だよ」

 ため息をして、あなたは優しい目で私をみる。




「あ、起きた」

「……。なんだ君か」

 懐かしい夢だったな。彼女は、元気だろうか。いや、私と離れたなら上手くやっているだろう。そもそも生活能力が高い人だった。私がダメにさせていたようなものだ。

 私の部屋に居候させている君は、私といても平気らしい。幼馴染だからかな。耐性がある。

「ずいぶんとしっかりした昼寝だったね」

「今何時?」

「僕が買い物に行く時間、だね」

 もう、そんな時間なのか。かなり寝ちゃっていたみたいだ。懐かしい夢もみるわけだ。

 そういえば、結局私は彼女にケーキを焼いたのだろうか。

「浅田。なにか、欲しいものある?」

「ケーキ」

「もう、店閉まってるよ。コンビニとかでいい?」

 確か、あの日買ったのは。

「うん。ショートケーキがいいな」

「へいへい」

 君は私をおいて部屋から出ていく。鍵の締まる音がして、私はひとりになる。

 君は小さい時に、私の手作りを食べていたな。夢のせいかもっと懐かしいことを思い出す。いつの間にか、私が貰う方になっていたことも。そして、しれっと何もしなくなってしまったことも。思い出す。スマホを開いて、初めて今日がその日だったと気がつく。

 あぁ、もうそんなに経ったのか。

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