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夜明けに捧ぐ華<妖怪寺鎮魂譜>  作者: 狐月華
2 『トルコキキョウの護り手』
9/15

序章 薄闇の輪郭

ねえ、へんなゆめを、わたし、まいにち見るの。

まっくらなところで、ぱちぱち、火がもえてる。

まあるい火のまわりで、こどもがいっぱい、おどってるの。

てをつないで、ぐるぐる、ぐるぐる。

だれかがわらって、だれかがうたって、まるでおまつりみたい。

わたしもいっしょに、てをつないでる。


そのてはね、あったかいの。

でも、ときどき、すごくつめたくて、ドキッとするの。


あさになるとね、みんなのかお、ぜんぜんおもいだせないの。

どんなこえだったかも、わからない。

でも、よるになると、また、みんながいるの。

おんなじゆめ。なんども、なんども。


◆◇◆◇◆

 

あるひ、わたし、かぞえてみたの。

いち、にい、さん……じゅう。

わたしをいれて、じゅういちにん。

たくさんのこが、火のまわりをまわってる。

みんな、にこにこしてた。

あたたかくて、たのしそうで、こわくなかった。


でも、つぎのひは、きゅうにんだった。

あれ? ひとり、いない。

だれがいなくなったのか、ぜんぜんおもいだせないの。

なんか、へん。


そのつぎのひは、はちにん。

またそのつぎは、ななにん。

どんどん、すくなくなっていく。

でも、みんな、まだわらってる。

わたしだけ、ちょっとこわい。


「どうして、へっていくの?」

きいても、だれもこたえない。

てをにぎってくれてたこが、きゅって、すこしだけつよくにぎった。

つめたいゆびだった。

ほそくて、きれちゃいそう。

いとみたい。


◆◇◆◇◆


おどるこが、さんにんになった。

もう、わたし、わらえなかった。

にぎったこのゆびは、つめたくて、ほそくて、ひもみたい。


ぱちぱちしてた火が、まっくろになって、風がびゅうってふいた。

まわりに、けむりと、ほこりと、なんか白い毛みたいなのがとんでる。

くさい。けむりのにおい。

それでも、火のまわり、ぐるぐるまわる。

ぐるぐる、ぐるぐる。

 

「もうすぐだよ」

 

だれかがいった。

ふりむくと、火のむこうに、なにかいた。

よくわからない。

でも、こっちをみてる。

じっと。

それから、なにかが、わたしのくびにふれた。

ひやっとして、いたい。


◆◇◆◇◆


ぱちん、って火の音がして、わたしはめをさましたの。

おへやのカーテンがゆれてて、ひかりがはいってた。

ねあせで、くびがちょっとひんやりしてる。

かがみをみたら、うしろのほうに、あかいすじがあった。

ほそくて、まるでひもみたい。


そのとき、トントンってドアがなった。

「おはようございます、美羽さん。もう起きてたの?」

まきちゃんの声。おうちのおてつだいさん。

うんっていったら、まきちゃんがはいってきて、あたまをなでてくれた。


でもね、くしでかみをとかしてるとき、まきちゃんの手がとまった。

「……あら、美羽さん、これ……どうしたの?」

まきちゃんのゆびが、わたしのくびをそっとさわった。

すこし、ひりってした。


「ねてたら、こうなってたの」

「昨日まではなかったと思うけど……」

まきちゃんの声が、ちょっとこわい。

それからすぐ、ママを、よびにいってた。


まきちゃんのあしおとがちいさくなっていって、

おへやの中は、とってもしずかになった。

 

――その夜も、またゆめを見た。

火のまわりには、もう、ふたりしかいなかった。

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