序章 薄闇の輪郭
ねえ、へんなゆめを、わたし、まいにち見るの。
まっくらなところで、ぱちぱち、火がもえてる。
まあるい火のまわりで、こどもがいっぱい、おどってるの。
てをつないで、ぐるぐる、ぐるぐる。
だれかがわらって、だれかがうたって、まるでおまつりみたい。
わたしもいっしょに、てをつないでる。
そのてはね、あったかいの。
でも、ときどき、すごくつめたくて、ドキッとするの。
あさになるとね、みんなのかお、ぜんぜんおもいだせないの。
どんなこえだったかも、わからない。
でも、よるになると、また、みんながいるの。
おんなじゆめ。なんども、なんども。
◆◇◆◇◆
あるひ、わたし、かぞえてみたの。
いち、にい、さん……じゅう。
わたしをいれて、じゅういちにん。
たくさんのこが、火のまわりをまわってる。
みんな、にこにこしてた。
あたたかくて、たのしそうで、こわくなかった。
でも、つぎのひは、きゅうにんだった。
あれ? ひとり、いない。
だれがいなくなったのか、ぜんぜんおもいだせないの。
なんか、へん。
そのつぎのひは、はちにん。
またそのつぎは、ななにん。
どんどん、すくなくなっていく。
でも、みんな、まだわらってる。
わたしだけ、ちょっとこわい。
「どうして、へっていくの?」
きいても、だれもこたえない。
てをにぎってくれてたこが、きゅって、すこしだけつよくにぎった。
つめたいゆびだった。
ほそくて、きれちゃいそう。
いとみたい。
◆◇◆◇◆
おどるこが、さんにんになった。
もう、わたし、わらえなかった。
にぎったこのゆびは、つめたくて、ほそくて、ひもみたい。
ぱちぱちしてた火が、まっくろになって、風がびゅうってふいた。
まわりに、けむりと、ほこりと、なんか白い毛みたいなのがとんでる。
くさい。けむりのにおい。
それでも、火のまわり、ぐるぐるまわる。
ぐるぐる、ぐるぐる。
「もうすぐだよ」
だれかがいった。
ふりむくと、火のむこうに、なにかいた。
よくわからない。
でも、こっちをみてる。
じっと。
それから、なにかが、わたしのくびにふれた。
ひやっとして、いたい。
◆◇◆◇◆
ぱちん、って火の音がして、わたしはめをさましたの。
おへやのカーテンがゆれてて、ひかりがはいってた。
ねあせで、くびがちょっとひんやりしてる。
かがみをみたら、うしろのほうに、あかいすじがあった。
ほそくて、まるでひもみたい。
そのとき、トントンってドアがなった。
「おはようございます、美羽さん。もう起きてたの?」
まきちゃんの声。おうちのおてつだいさん。
うんっていったら、まきちゃんがはいってきて、あたまをなでてくれた。
でもね、くしでかみをとかしてるとき、まきちゃんの手がとまった。
「……あら、美羽さん、これ……どうしたの?」
まきちゃんのゆびが、わたしのくびをそっとさわった。
すこし、ひりってした。
「ねてたら、こうなってたの」
「昨日まではなかったと思うけど……」
まきちゃんの声が、ちょっとこわい。
それからすぐ、ママを、よびにいってた。
まきちゃんのあしおとがちいさくなっていって、
おへやの中は、とってもしずかになった。
――その夜も、またゆめを見た。
火のまわりには、もう、ふたりしかいなかった。




