運命の人
ええと、「なろう」で第二王子が悪役令嬢を断罪する時によく「真実の愛」という理由を述べるみたいですが、そこに至るまでには色々と条件があるわけです。その中で一番大きな理由として「頻繁に出会う」というものがあります。
学園の入学式の前に王子の前で転ぶとか、中庭でばったり会うとか。何かのイベントでたまたま一緒に役員やったり。とにかく普通ならあり得ないくらい頻繁に接触します。そしてお互いの相性が良い。
ヒロインと攻略対象が親しくなるのはそういった偶然? が積み重なった結果と言えます。王家の者と男爵家の婚外子って普通なら会うことすらあり得ないんですが、なのに会ってしまう。そうか、これは運命、真実の愛だ!
悪役令嬢物なら物語のストーリーを知っている転生者のヒロインが意図的にこの出会いを演出したりしますし、物語の強制力という解釈もあるようです。ですが。
私は現実の体験から、そんなのがなくても出来るんじゃないのか? という考察に至りました。実体験です。ヒロインや攻略対象じゃなくても運命ってあるのではないかと。真実の愛なんかじゃありませんが(笑)。
その体験をちょっと書きたいと思います。
私には何かやたらに会う人がいます。確率的にあり得ない頻度でばったり出くわすんですよね。スーパーとか道とかで突然会うんのですが、同じ時間に同じ場所にたまたまいるって、それも何回も何回も。どうなっているんでしょう。
これってヒロインが「たまたま」王太子とかと出会ったりハンカチ拾って貰ったり目の前で転んだりするのと同じかも? ああいうのが「物語の強制力」だとしたら、私とかの人にもそういう力が働いているんでしょうか。そんなはずあるか。
だってその人ってうちの町内会の会長なんですよ。隣のマンションの理事長でもあります。コロナ前はそのマンションで開催されていたカラオケに参加させて貰っていたし、夏のバーベキューや冬の餅つき大会にも出ていました。
そして町内会では会長と役員(回り持ち)です。でもねえ。向こうは後期高齢者なんですよね。両方とももちろん男です。そんな相手と運命的な出会いとかしてもしょうがない気がするけど(笑)。何か確率的に偏っているだけでしょうか。
先日は総合病院の待合室で本を読んでいたらいきなり肩を叩かれました。私は耳鼻科だが相手は脳神経外科に通院していて、その二つの科は向かい合わせだったりして。同じ日の同じ時間に通院しないと会わないぞ。
実はその病院でもよく会います。二月に一度くらいしか行かないのに。健康診断の申し込みしようとしたら隣に座っていたこともありました。道を歩いていたら反対側から来ることなんかしょっちゅう。運命は私たちに何をさせようとしているのか(笑)。
ま、やたらと会うだけでそれ以上の事は起こらないからいいんですが。でも王太子もヒロインとしょっちゅう接近遭遇していたら真実の愛とかに目覚めてしまっても仕方がないかもなあ。
何せヒロインは設定上は美少女だし異性です。そして二人とも若い。物語の強制力なんかなくても恋に落ちても仕方が無いかもしれない。でもそれって単なる偶然でしょう。それ、数学的に証明出来るんですよ。
実は、この世界は確率的に偏っています。例えばビー玉とか砂利とかを無作為にばらまくと所々に密集してそれ以外の場所は希薄になります。簡単な話で、秩序を持って均等に広がるより不均衡に広がる確率の方が高いからです。
で、その密集した場所はなぜ密集しているのかというとたまたまなんですよ。偶然そこに集まっただけで意味はありません。サイコロ振ったらゾロ目よりバラバラの方が多く出るのとおんなじです。
自分が密集した場所にいるから特別に思えてしまうんですが、それは特別でも何でもありません。ただの現象です。というわけで「運命の出会い」は乙女ゲームの設定における重大な勘違いでした。強制力なんかないから悪役令嬢は安心して良いよ。