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パルーマの学び舎  作者: ヒカル
本編 2nd Grade
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第1話-1

『 季刊王国貴族新聞

眠れる王宮はまだ謎の中 星の導きは絶望的か

 

 大事件となった学園トルネーオの春82日から、3つ季節が進んだ。四方を山に囲まれた王都を襲う過酷な夏も、木々が色を変える秋もとうに過ぎ、我が国パルーマは、誰も王位につくことの無いまま、非常に不安定な冬に立たされている。

 姉のカリナ・パルーマ・エラン殿下ならびに弟のルーカス・パルーマ・エラン殿下の動向も、王宮は一向に明かしていない。現状、カリナ殿下は生まれつき内臓に機能不全がありベッドからなかなか離れられない生活であったため婚約者がいまだ決定していないが、ルーカス殿下には貴族派筆頭ジェペス家からソフィアの姉のシルヴィアが婚約者として指名されていた。よって、ルーカスの即位が決まれば実に3世代にもわたった王族派と貴族派の対立の均衡が崩れることは容易に想像されていた。

 先代国王は好色であった。今は亡き王妃が王太子妃にもなる前からある一人の女侯爵を愛人として囲い、一時も離さずそばにいたという。市井のものならいざ知らず一つの国をすべる者として、この王の資質を問うものは即位当時から少なからずいた。しかし優秀であった先代王のご寵愛ゆえに、多くの者は即位したら心変わりなさるかもしれない、と希望を捨てずにいたのだ。

 しかし国王は変わらなかった。やることなすことの全くは父の形ばかりの踏襲で、勢力を増す貴族派に対して抵抗する様子もなくただ惰性的で対蹠的な施策ばかりだった。宿敵ハークで銀山が見つからというもの下落の一途をたどる銀の値段を見ても、彼は民に手を差し伸べることはなかった。ルーカス殿下とシルヴィア殿下の貴族界を揺るがすご婚約を黙認された。

 弊社は独自の調査によって、王族派のバエズ宰相家が王族派最後の砦として、今や貴族派の手中に落ちた枢密院に対抗しているという情報を入手している。王宮内での一触即発と言ったような切迫感は日を追うごとに苛烈になっているようだ。

 栄光ある星の国パルーマに神の祝福があらんことを。』


 フェリクスは読み終えた新聞紙を絞るようにして筒状に丸めた。ルームメイトの消えた部屋で、彼は1人きりであった。

 概して、世論とは日和見なものだ。国王が存命の頃はやたらと王族派、もといバエズ家を叩いて貴族派を英雄視していたのに、彼らが優勢になって富を手にし始めると、手のひらを返したように自分たちに擦り寄ってくる新聞紙に反吐が出た。結局は、劣勢が逆転して優勢を覆すというドラマチックな展開に酔いしれたいだけなのだろう。それが透けて見えるような記事だった。しかも、王を批判した者を、我ら王族派が許すとでも信じているらしい。

 読む価値も感じない紙切れとなった新聞紙をジョヴァンニの使っていた机の上に投げ捨て、彼は読みかけの本の最後の章へと取りかかった。フェリクスはまもなく2年生になろうとしていた。ロベルトはあの日宮殿で見たのが最後で、また会えない日々が続いていた。


『フェルナンデスを調べてくれ。』

『覚えてる?俺、実技試験の時にフェリクスくんに助けてもらってさ。』


 ジョヴァンニが何かしらの裏事情を抱えていることは、すでに火を見るより明らかだ。しかも、フェリクスの中には引っかかっていることがあった。

 ジョヴァンニ・フェルナンデス。偶然かもしれないが、彼の名字は教育学のゼミで教わったパルーマが初代王の名前である。

 また、最初にロベルトが失踪する直前、最後に彼の姿を見たのはフェリクスとリタで、それはリタのギルドでのことだった。彼は何かを思案していた。ギルドの冒険者たちの言葉を、真摯に聞き留めていた。まるで人生で一番価値がある講義を聞いているかのような顔立ちをしていた。

 これら二つは全く関係のないことのように思えるが、フェリクスにとっては、心のなかで整理も理由付けもができない、二つの奇妙で不可思議な光景なのだ。

 だから、言われた通り、フェリクスはロベルトから手渡された本と同時に、学園の授業の合間を縫ってセネンとともに学園中の文書という文書をも読み漁った。自分の直感を心の何処かで信じていた。きっといつか、ロベルトの言うことが分かるのではないかと。

 しかしどの文書を漁れど、あの伝説を詳しく難しそうに解説した本はあっても初代王フェルナンデスとジョヴァンニの家に関する記述はどこにもなかった。


(今日も収穫なし、か…)


 フェリクスは通算25冊目になる書籍論文の最後のページをパタリと閉じた。

 この半年をかけて、おそらく彼はロベルトにあの日手渡された本を全て読み切った。なのに、ロベルトの意図がどこにあったのか、ジョヴァンニについて何を調べてほしいのか、彼にはめっきりわからなかった。


 ふと、コツコツという音が窓の方から聞こえて、フェリクスは窓の方へ振り向いた。

 そこには、箒に仁王立ちして空を漂うセネンの姿があった。

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