表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パルーマの学び舎  作者: ヒカル
本編 1st Grade
36/43

第9話-2

 予選が終わり決勝戦も目前となるとフィールドの実況にも記者の記録をとる手にも熱がこもってくる。この頃、やっとロメルと戦って負傷した学科生の治療も休憩時間で途切れてヒーラーたちにも小休止が訪れた。年長ゆえに各所へ指示を飛ばしていたニセタや教育学部在籍のボランティアはもちろん、水属性の影響でもとより治癒効率の高いセレナでもさすがの目の回る忙しさに疲弊していた。しかしここで唯一の戦闘学科であり体力を鍛えてきた自負のあるフェリクスは、疲れを顔に出さないよう努めながらお昼と水を買いに行く係を買って出てしまった。


(僕…しくじったなぁ…。結構重いや。まだ本部まで時間あるし途中で一旦荷物を下すか。)


 男はプライドを食って生きる、というが初夏の燦燦と照る日差しの下で10人分の食糧を運ぶのはさすがにプライドだけでは賄えない。道端にフェリクスが腰を下ろした、その時だった。

 遥か頭上から風圧を感じたフェリクスはすぐに荷物を抱き上げて3,4歩その場から離れた。次の瞬間には土煙がたちそして目の前に何かが下りてくるのが見えた。それが動きを止めて次第に土煙が落ち着くと、そこには普通より一、二回り大きい馬2頭に繋がれた馬車が確認できた。馬車の扉が徐に開き、そこから出てきたのは帽子を目深に被った一人の紳士だった。


「風魔馬…。」


 フェリクスは驚きの余りうっかり呟いた。


「見るのは初めてかね。」


「いえ、何度かは。」


「そうかい。…では君が、あのファラ家のフェリクスだね?」


「…っ!」


 そうだ。明らかに高位貴族のなりをしている紳士から見ればフェリクスがそうでないのは火を見るより明らか。なのに属性を持つ馬—”魔馬”—を見たことがあるとすれば、それは唯一国王に魔馬の保有を認められているジュステ冒険者ギルドに関係のあるものに他ならない。


「よかった。わたしの()()()()を見ていないかい?」


「アデリオさん、でございますか。…失礼ながら、確かに僕の知人でしょうか?」


「ああ、君の話をよく聞いているから知り合いだと思っているよ。」


 おかしい。アデリオという知人と幾度も会った授業はないはずだ。そもそもよほど記憶が混濁していなければ、一度もあったことはない。


「すみません、今日は見ていなくて。」


 無難にフェリクスがそう答えると、紳士はフン、と鼻を鳴らして馬車も乗り捨てたまま歩き去ってしまった。





『さあさあ今年も輝かしい勝者たちが我らが未来の勇者殿へ果敢にも挑戦を続けている!今年こそ、栄光ある星の力を持つかの御方に勝つことができる騎士は現れるのか!それとも今年もまた彼の勝ち越しか!これまでの予選、そして決勝の結果をおさらいしよう!

 予選第五位、卓越した魔術コントロールで予選・決勝通して華麗な技の数々をみせてくれた恐るべき一年生、アーシャ・ティル=オディール!

 予選第四位、昨年に引き続いて自由にフィールドを駆け回り、目にも楽しい手合いを見せてくれたサルマ・ハルフテル!

 予選第三位、主家オリバーへの忠誠と彼の相手に向き合う姿には我々全員の涙を流したことだろう、戦闘学科きっての美男子マルティン・マーレ!

 いずれも未だ昨年優勝者ロメル・オリバーという高い壁には勝てないでいるが、まだまだ挑戦者はいるぞ!

 予選第二位、一年生にして一瞬の危なげもなく予選を勝ち進みついに決勝のフィールドへと躍り出た驚異の天才、我が国唯一にして随一の冒険者ギルドが次期マスター、リタ・ジュステ!

 予選第一位、戦闘向きではない闇属性でありながら持ち前のポテンシャルで当然のごとく一位を獲得、これは間違いなく優勝候補の実力者!アナジャ商業ギルドが三男、セネン・アナジャ!

 まだまだこれからの展開に一瞬も目が離せない!』


「次、リタなんですか?」


「そうだよー、あ、フェリクスくんおかえり!たっくさんのごはん運んでくれてありがとうね!」


「はい、あ、何人か分がちょっとぐちゃぐちゃかもしれないです。」


「うわ、本当だ…!どうしたの、転んだ?」


「いや、まぁ…。」



『さあ次の挑戦者の準備が整ったようだ!予選では驚異の無敗、リタ・ジュステ!!!』



「あ…。」


 フェリクスは目を逸らしたくなって本部から外に出た。階段を上がってフィールドに現れるだろう彼女の姿をみたくなかった。最近はずっとあの赤髪と紫の瞳を見ると胸がざわざわした。無性に地面をけりたくなるような、草をむしって何かに投げつけたくなるような、でもそれをしたとしても虚しいむしゃくしゃする気持ちだった。


 すると突然、慌てた様子のセネンがフェリクスの前に急に現れた。


「フェリクス、大変。」


「え、あ、セネンさん、どうしたんですか?」


「不審な男を見た?どこ行った?」


「…え?」



 その時、実況のマイク越しにキィィィンと耳に付く機械音がした。拡声器が不具合を起こしたのかと思ったが、その推測は何かを言い争う声が聞こえた後に困惑へと塗り替えられた。


『アデリオ。アデリオ・バエズ。今すぐ放送室に来い。』



アデリオ…バエズ…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ