第92話 案内人
「おやじ殿、それでその地底の理想郷から来たという政府機関の人とはどんな方ですか?
差し支えない範囲で。」
「うむ、あいつももうこの世界にはおらんし、もう時効かの。所詮はヘベレケに酔った酒の席での話だしな。」
「その男、名は深山次郎という。
深い山と書いてみやまだ。」
「どこかで聞いたような。
もしかして、なんとか科学庁のトップを務めたあの深山さんですか。」
「さすが春二郎さん。
そうそう、そのなんとか科学庁長官だった男だ。
日本の科学技術の進歩に貢献した功績で、なんとか勲章とか貰っておったわ。
奴はなんとか歌劇団の人気女優と結婚してな。
息子が今国会議員をしているわ。
深山なんとかとかいう名前だったかの。」
「ええっ、あの深山なんとかさんがご子息なんですか。
昔は相当なイケメンだったとか。」
「そうそう、その深山なんとかだ。」
「二人とも。なんとかが多すぎですよ!
忘れた時は、ちゃんと思い出さないとボケちゃいますよ。」
「ははは、わしはともかく、春二郎さん。
若いのに、なんとかが多すぎますぞ。」
「ははは、これは失礼しました。
気をつけないと。
これからは、なんとか頑張って思い出します。」
「ほら、また言ったぞ。」
「これは違う、なんとかですよ。」
「はっはっはっは!」
華子は、なんとか、が多すぎると思いながらふと考えていた。
〜深山、みやま、みやま〜こみやま〜小宮山〜
「ええっ!まさか、うっそう。」
「どうした華子。
素っ頓狂な声を出して。」
「いえ、私が雇われマスターをしているバーに来た老紳士が言ってたんです。
昔なんとか大学の大学院の研究者だった時、公的機関の職員の案内で地底都市に行ったことがあるそうなんです。
で、その案内した職員の名前が小宮山なんです。
仮名ということですし、所詮パラダイスを飲みながらの話なんですが。
ふと、その仮名小宮山って人、深山なんとかさんじゃないかと。」
「華子。そこはなんとかさんじゃなくて、深山次郎じゃ。
しかしなかなかに興味深い話だな。
その話、なんとか聞かせて貰ってもいいかの。」




