第78話 夏祭りの約束
「あーお祭り楽しかった。
美味しいものいっぱい食べたし、ゲームもすっごく面白かった。ありがと、ひろし。
私みたくいっぱい浴衣の人がいてびっくりだよ。」
「しろちゃん、楽しんでくれて良かった。
浴衣姿、かわいいって母ちゃん喜ぶよ。」
夏祭りの帰り道、ひろしとしろちゃんはわた菓子を分け合いながら歩いている。
しろちゃんは、ひろしの母ちゃんのお下がりの浴衣を着ている。
「あ、しろちゃんこれプレゼント。」
「なあに。わっお花の柄でかわいい。」
「あさりの貝殻で作った根付。花は桜だよ。」
「根付ってなあに。」
「お財布とかに付けて、着物の帯に引っ掛けて落ちないようにするんだ。母ちゃんが夜、歌歌いながら作ってくれたんだ。二つあるから俺とお揃い。」
「お母さんありがとう。
私、桜の花もあさりも見たことない。
いつか見れるといいな。」
「お母さんの歌ってどんな歌?」
「ええ、瀬戸内海の花嫁さんの歌だよ。
ひろしの未来のお嫁さんに、とか言って変なの。
俺まだ小学生だよ。」
「歌ってよ。」
「ええっ、うーん、こんな感じ
〜瀬戸は〜あなたの島へ」
「素敵な歌。瀬戸は〜」
「しろちゃん、俺よりずっとうまいや。」
「瀬戸の海、行きたいなぁ。」
「私、ひろしのお嫁さんになってもいいよ。」
「えっ、ほんと!」
「ほんとだよ。」
「俺でいいの?俺頭良くないよ。」
「ひろしの頭はね。ちょっと回転がゆっくりだから、居心地がいいの。あんまり早かったら、私目が回っちゃう。」
「ひろし優しいし、あったかいから好き。
目が好き。きれいだから。」
「俺もしろちゃんのこと、何から何まで全部好き。」
「うれしいなあ。俺のことほめてくれるの父ちゃんと母ちゃんだけだから。
父ちゃんなんて、ひろしは父ちゃんと母ちゃんの最高傑作だって。」
「最高傑作の人のお嫁さんかあ。やったー、うれしい。」
「しろちゃんは世界の、宇宙の最高傑作だよ。」
「ふふっ、ありがと。」
「大人になるのが楽しみだなあ。
大人までだいぶあるけど。」
「そんなのすぐよ、待っててね!」
「うん、待ってる。ずっと待ってる。」
「私約束するわ。ひろしのお嫁さんになる。」
「俺も約束する。
しろちゃんの最高傑作の旦那さんになる。」
「ひろし、どうしたの涙出てるよ。」
「あっ、夢見てたらまた泣いちゃってた。」
「しろちゃんに会えなくなって俺いつも泣いてたら、母ちゃんが言ったんだ。」
「その子にもなんか事情があるんだろ。
約束したんだろ。
ずっと信じていていいんだよ。
ひろしの目が好き。きれいだから。
なんて言ってくれる、なんて素敵な子。
母ちゃんも早く会いたいよ。
待つのは悪いことじゃないの。
特に好きな人を待つのはね、とても幸せなことなの。
母ちゃんも、ひろしと一緒に待つよ。
だから安心して、ひろしはずっといつまでもその子を待ってていいんだよ。」
「ってね。」
「お母さん、、、ありがとう。。。」
「しろちゃんまで泣かせちゃって。ごめん。」
「お母さんまだ待っててくれてるかな。」
「ずっと待ってるって言ってたから、待ってるよ。」
「お母さん、お待たせしてごめんなさい。
ひろしのお嫁さんのしろです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。」




