第72話 地底文明の謎
「彼女が追われている理由については、他にもいろいろあるかも知れんな。」
「と言いますと?」
「彼女の白いボディスーツじゃが、あれはとんでもない優れものじゃ。研究所の科学者曰く、抗菌、防臭、防虫はもちろん、放射線や電磁波も防ぐ効果があるようじゃ。まあ、ちょっとした宇宙服みたいなものだな。つまり、彼女は地底では地上にはない優れた科学技術の元で暮らしていたんじゃ。それも、遥か昔からな。」
「そうすると、日本にはずっと昔から、地底に地上とは全く異なる高度な文明があったということですか?」
「そうかもな。さて、それが地底に住むことを決めた人々が自ら築いたものか、それとも他の世界の誰かが教えたのか。」
「ええっ、それって宇宙人てこと。」
「それも、けして除外出来ないだろう。
彼らは、地底で如何にして高度な生活を送ってきたのか。エネルギーは食糧、医療は?」
「人間は自ら築いた文明は最高だと信じてきた。しかし、地上より優れた文明が地底に存在する。
もしかしたら、未知のフリーエネルギーや万能薬もあるかも知れん。
これには都合が悪い奴らもおるだろうし、その知恵を悪用しようとする奴もおるじゃろう。
彼女はそんな連中にとっては、どうしても世に知られてはならないもの、もしくは我が物にしたい宝物に見えるかもな。」
「でも?、そんな凄い文明や科学技術を持っているのに、どうして彼らは地上世界を侵略しようとしなかったんでしょう?
そんなの簡単に出来たと思いますが。」
「春二郎。侵略、征服、支配、管理、地上の歴史はそんなことの繰り返しじゃ。
まあ、そんな地上のくだらん争いには、関わりたく無かったのかも知れんし。
もともとそんな発想の無い人々なのかもな。彼らに知識を授けた者の教えかも知れぬ。」
「ええっ、それっていい宇宙人ってこと?」
「まあ、人間もいろいろ。宇宙人もいろいろってこともあるじゃろ。」
「彼女は、怯えているのかずっと黙っていてご飯も食べんのじゃ。とにかく、少しずつでも心を開いて元気になってくれたら良いのだが。」
「50年も前の出来事だし。しろちゃん本人だとしたら、まだ覚えてくれてるのか不安です。俺もうすっかりこんなおじさんだし。
でも、ちょっとでも彼女が幸せになる手伝いを出来たら嬉しいです。」
「これは、ただのわしの女の勘だがな。
しろちゃんは、ひろしのことを忘れておらん、、、と思うぞ。たぶんな。」
「ふふっ。全く罪な男よ。ひろしくん。」




