第6話 夏子からの相談
華子は今夜も芋焼酎を飲んでいた。
「今日の訓練は激しかったなあ。しかし奴らのポテンシャルは限界を超えるな!満足満足。」
ふいにスマホが鳴った。幼なじみの夏子である。
「華ちゃんちょっとご無沙汰。今大丈夫。」
「おおー。夏ちゃん元気かあ。大丈夫じゃ。芋焼酎飲んでた。ぷはー」
「相変わらず芋焼酎好きだなぁ。ちょっと華ちゃんに相談があって。」
「ほほう。珍しいなあ。恋話は分からんぞ」
「春にいちゃんのことなんだけど。ちょっと最近様子がおかしくて。」
「いやあ。あいつ昔から様子おかしかったぞ。昔夏ちゃんとの待ち合わせに春二郎が現れて、ちょっと話しをしたいと言うんだが、ほとんどしゃべらないし、ガタガタ震え出して、ちょっとトイレって言って走っていってそれきり帰って来なかったぞ。」
「あれは、しょうがないよ。春にいちゃん華ちゃんのこと大好きだったから。華ちゃんとどうしても話したいって言うから。緊張し過ぎたみたい。帰ったら布団の中で泣いてたのよ。」
「情けない。ヘタレだな。とはいえ憎めない奴だがな。」
「そのヘタレ、失敬、春二郎がどうした」
「それが先週実家に帰ってきたんだけど、急におかしくなったのよ」
「目が異様にギラギラして、やる気が漲り過ぎて毛穴から漏れているような。ついでに、能天気なバカっぷりがトレードマークだったのが、頭良さそうになっちゃって」
「ははは!それは悪いことではなかろう。
とはいえ、奴をよく知っている夏ちゃんが言うからにはただ事ではなさそうだな。」
「それでお願いなんだけど。今週日曜日、渋谷で春にいちゃんの街頭演説があるから、華ちゃん見てきて欲しいの。華ちゃんの目で見て問題なければ安心できるの。
本当ごめんなさい。」
「分かった。承知したぞ。わしの目でしっかりどれだけイカれているのか見てくる。」
「ありがとう。私は心配で見てられないから行けないけどいい。」
「大丈夫じゃ。心配するな。」
その後、他愛もない会話を交わして電話を切ったのであった。
華子は嫌な予感がしたが、杞憂であることを願いながら芋焼酎を飲み干した。