第43話 ピーターの法則
「ところで、二人はピーターの法則というものを知っているかの。」
「残念ながら知りません。」
「祖父がファンだったんで、実家にレコードありますよ。」
「ふっ、ピーターの法則は、1969年に名前の通りピーター博士によって書かれた本で唱えられている階層社会の法則じゃ。残念ながら日本ではあまり知られておらんがの。
日本語訳版のカバーにはこんなことが書かれておる。
~ピーターの法則~
階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する。
~ピーターの必然~
やがてあらゆるポストは、
職責を果たせない
無能な人間によって占められる。
仕事は、まだ無能レベルに達していない
人間によって行われている。」
「うーむ。確かに会社や役所、政治でもあるあるな話ですね。でも、それなりに優秀だから評価されて昇進したんでしょ。」
「まあ、最初のうちはある部分で優秀だったのかも知れんな。しかしこの法則によれば、昇進していくうちに誰もがどこかで無能レベルに達してしまう、普通はそこで終わり、万年課長とかじゃな。
最悪なのは、とっくの昔に無能レベルに達しているのに、何かの拍子に更に昇進を重ねてしまった場合じゃな。」
「そうなると?」
「無能による恐怖支配体制の確立じゃ。
もはや、ただ終わりに向かって突き進むしかあるまい。」
「自力改善は難しいですかね?」
「往々にして、無能は気が小さいので無能を呼ぶ。さらに困ったことに、自分は有能だと信じている場合も多いしの。
まあ、若いまともな連中にとってはたまったものではないがの。」
「まあ、二人とも他山の石として心に留めておくのが良いだろうな。」
「それで隊長。ピーターの法則では、組織のポストが無能で埋め尽くされるのを防ぐ方法って書いてあるんですか?」
「階層社会では無理かの。ピーターの法則では、階層社会での生き方までしか記しておらん。
つまり階層社会では、そうなることは必然なんじゃろう。
しかし、それぞれが自分が無能であることを自覚しておれば、組織が今回程は悪くはならんじゃろう。
三人寄れば文殊の知恵とは良く言ったもので、たとえ無能、凡人でも三人集まって考えれば文殊菩薩のような知恵が浮かんでくるやもしれぬしな。」
「おおっ。今日はまさしく三人じゃ。
せっかく凡人が三人集まったし、いろいろと、あれやこれや相談してみるかの。」
「イエス!マム。」
何故か二人の声が響いたのだった。




