第2話 SMELLS誕生
おばあちゃんの原宿とも言われる東京巣鴨商店街のはずれにある古びたビルの地下の一室で男達は待っていた。いずれも選りすぐりの加齢臭を放つ還暦を優に過ぎた男達である。
ほどなくして昔怪獣映画で見たような制服を着た男女が入ってきた。気の強そうに見える長い黒髪の女が口を開く。クールビューティーとは彼女の為にあるかと思える長身の美女である。不思議なのは、男達の加齢臭がこもる部屋の中でも、その女は満足げでむしろ嬉しそうな不敵な笑みを浮かべていることである。
「独立防衛隊隊長の黒川です。足下の悪い中わざわざ来ていただきありがとう。」
「むちゃ晴れてますけど」隣の初老の紳士風の男が口を挟む。
すかさず女がヒールで男性の足を思い切り踏んずける。「うぎゃあ」
男の顔には苦悶の中に清々しい喜びが垣間見える。
「失敬。彼は副官の白石である。」
意にも会さず黒川と名乗る女は続けた。
「いま日本は未曾有の危機にある。表面上平和とも見える世の中だが、その実、寄生型エイリアン、パラサイトによる侵略が進み極めて危機的な状況にある。数年前から人間に寄生し始めた彼らだが、侵略のスピードはすさまじく、今や日本の政財界、官僚、警察等の主要なポストにまで侵略している。彼らはもともと良くない欲望を抱えた人間に取り憑き、欲望を増幅させ更に力と知恵を与え、結果寄生された宿主は巨大な権力を握るごとになる。更に同じような悪意を増幅された宿主同士が共鳴し合い、それが大きな悪意の固まりとなっていくのだ。ちなみに寄生された人間は徐々に精神を侵食される為自身がパラサイトに寄生されていることに気づくことはない。このままパラサイトの侵略を許せば、まもなく彼らは宿主を介して人間を完全に支配することになる。ここに集まって頂いたのは他でもない。単刀直入に言おう。私と戦って欲しい!日本を、日本の人々を寄生型エイリアンから守って欲しい。」
重苦しい沈黙が空気を支配すること数分、男達の一人が恥ずかしそうに口を開いた。
「入隊すると俺もその何とか警備隊みたいな制服を着ることが。子供の頃から着てみたくて」
「あっ!これな。」
「すまん。すまん。これは今日の為だけに作ってもらったんだ。一度着てみたくくてな。カッコいいだろう。君たちはそのまま普段着で頼む。何せ隠密、秘密部隊なんでな」
口を開いた男はガックリ肩を落とすのであった。