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独立防衛隊 「SMELLS」 加齢臭でエイリアンから日本を守る男達と変態?美人隊長の戦い  作者: 宮本海人


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第18話 親方と幸子さん

幸子は買い物の帰り道、小さな花屋に立ち寄ろうと回り道をしていた。細身の綺麗な身なりには似合わない、継ぎはぎのある古びた黒いリュックを背負っている。


どこからか、子供達の楽しそうな声が聞こえてきた。

「あら、何かしら。」

そこはちゃんこ鍋と看板があるお店の庭先であった。小さな土俵の横で子供達が何やら美味しそうに食べている。食べ終って遊んでいる子も見える。


幸子は気になってちょっと入ってみた。

体格のいい白髪坊主頭のおじさんと、元気のいいおばあさんがチャキチャキと子供達にお椀を配っている。

「何をされているのですか?」

「ちゃんこ屋の親方が、店が休みの月曜日、余り物でちゃんこ鍋を作ってお腹が空いた子供達に振る舞ってるんだよ。」

「そうなんですか。みんな嬉しそう。」

しばらく見ていると、幸子はお手伝いボランティアさん大募集!の張り紙があるのに気づいた。

「私も子供ちゃんこお手伝いしたいなあ。」

「まあ、大歓迎よ。親方ちょっとちょっと!お待ちかねのお手伝いさんよ。」

早速その日から、幸子は子供ちゃんこの幸ちゃんになったのだ。


親方は相撲部屋の親方ではない。

親方の現役時代の成績では、大相撲の親方には到底なれないのだ。

親方の呼び名は、子供相撲で親しみを込めて呼ばれたのが始まりだ。最初は親方じゃないと否定していたが、面倒臭くなって放っておいたら親方が通称になったのである。


ちゃんこ屋では、たくさんの具材を仕入れるが結構残る時もあるのだ。

親方はそんな残りものを使って、子供たちにちゃんこをふるまっている。

最初は子供相撲の子供達相手だけだったが、ふとしたことから相撲をしない子供達にも振る舞うようになった。

ある寒い日の夕方、子供相撲の子供達にちゃんこをふるまっていると、薄着の兄妹が羨ましそうに遠巻きに見ている。


親方が声をかけた。

「寒いだろ。ちゃんこ食べるかい。」

「いいの?」「どうぞ。どうぞ。」

兄妹はちゃんこを夢中で食べた。

「もっと食べるかい。父さん母さんは?」

「お父さんはいないけどお母さんはいるよ。お母さん昼間は寝てて、夜はお仕事だよ。」

「そうかい。母さんが良ければまた来てね。」


こうして、近くの一人親や貧しい家庭の子供達、お腹が減った子供達が自然と集まるようになったのだ。


食べる子供が増えると材料が足りなくなったが、近くの八百屋、肉屋。魚屋さんも残りものを分けてくれるようになった。


親方はちゃんこ屋さん、子供相撲、子供ちゃんこと三つの仕事をしていてとっても忙しい。そんな中、子供ちゃんこを手伝ってくれるボランティアさんはとってもありがたいのだ。


「幸ちゃん!おかわりしていい?」

「幸ちゃん!今日学校でね、、」

「はい。はい。」

今や幸ちゃんは子供ちゃんこのお母さんなのだ。


ところがつい最近、親方に幸ちゃんから悲しい連絡があった。

「体調が悪くて少しだけお休みさせてください。早く良くなって子供達に会いたいな。本当すみません。」


そして今日、お手伝いのおばちゃん達の会話を耳にしたのだ。

「幸子さんあんまり良くないみたいで心配だわ。」

「幸子さんてジャパンTVの社長原田さんの奥さんらしいわよ。お金持ちなのに、気取らなくて笑顔が素敵な人よね。」

「でも最近急にだいぶ痩せてたから。」


無頓着な親方は、最近幸ちゃんが目に見えて痩せてきていたことに全く気がつかなかったのだ。


「幸ちゃんごめん。全然気がつかなくて。」

「ジャパンTV原田社長。。。の奥さんて。」


「ふぅ。これは困った。すぐに隊長に相談しないといけないな。」

親方は珍しく深いため息をついたのだった。





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