第10話 作戦決行宣言
赤坂の政治家御用達の高そうなホテルの会議室。
華子と隊員達、副官の白石、さらにはエイリアン研究機関の科学者、医療スタッフも待機している。
「いよいよ作戦を開始する。みんな段取り通り頼むぞ。奴はパラサイトの力で大幅にパワーアップしている可能性がある。
心してかかれ。」
「ラジャー!」
今日華子は政府応援系月刊誌「極論」のインタビュアーとして春二郎を取材することになっている。大将、棟梁は防臭ジャケットを着用し、カメラマン、音声担当として参加する。
親方と白石は隣の部屋で他のスタッフ共々モニターを見つめている。親方は春二郎に顔が割れているので今回は裏方役である。
今日の華子はキリッとした黒のパンツスーツに白いシャツ、珍しく高めのヒールを履いている。
「あれで踏まえたらさぞ痛いだろうな。ふふふふ。」
作戦前の緊張感が張りつめる中、白石はモニターを見ながら不敵な笑みを浮かべた。
親方はつぶやいた。
「白石副官。恐るべき胆力なり。」
それは親方の大きな勘違いであった。
「時間だな。さあオペレーションの始まりだ。」
「イエス!マム。」
いつもにも増して力強い声が響き渡った。
春二郎が到着した。第一秘書の山本を連れている。
「山本!今日は昔からの知人との気楽なインタビューだし、外で二時間位適当に暇潰してきていいぞ。後で原稿をしっかりチェックしてくれればいい。」
「承知いたしました。」
山本はこの偉そうな議員にうんざりしているようで、どこか嬉しそうである。
白石が山本に何かチケットを渡した。
「あっ。外出て左手にあるセクシーコーヒーの90分ブルーマウンテンコースの無料チケットがあるから使ってください。」
「ブルーマウンテンですか!ありがとうございます。」
山本は何か勝手に想像しているのか、ちょっと前屈みになりながら、小走りで向かったのだった。
春二郎は華子との再会を山本に邪魔されたくないのか、第一秘書の山本を同席させなかったのだった。
「一つ手間が省けたな。」
白石はつぶやいた。
「里見先生、お忙しいところありがとうございます。月刊極論の黒川です。改めてよろしくお願いいたします。」
「いやいや、そんなかしこまらず春二郎でいいですよ。華子さんから連絡もらってびっくりしました。ジャーナリストになられたんですね!」
「いえいえまだまだ駆け出しです。では春二郎先生で!よろしくお願いいたします。」
「早速ですが、春二郎先生のプライベート空間への監視カメラ設置という、斬新なアイデアについていくつか質問させてください。」
「よくご存知で!いやあ、あのアイデアは、超管理社会の実現に向けていろいろ考えていたとき、そこはかとなく浮かんだんです。。。」
そして約一時間のインタビューは終了したのだった。
「春二郎先生、これでインタビューは終了です。ありがとうございました。」
「カメラ、音声止めてください。」
「春二郎先生、駆け出しジャーナリストとして、勉強のためにオフレコで少しだけ貴重なお話を伺ってもいいですか?」
「もちろん、華子さんのお願いでしたら断れませんよ。」
「わっ!嬉しいです。」
「プライバシー空間への監視カメラ設置については、党内でも意見が二分していると聞いてます。春二郎先生はどうしてこの件にこだわっているのですか?」
「うーん。華子さんだから本音を言うけど、僕は国民にプライバシーなんて必要ないと思っているんですよ。」
「はあ。というと。」
「そもそも、今の国民は政府に最低限の生活や安全を守ってもらっているのに、更にプライバシーを守れなんてワガママ過ぎじゃないですか。」
「我々管理する側からすると、自宅という監視カメラがない閉鎖空間をいいことに、好き勝手に遊び呆けて、あれやこれや楽しんでいるのは実に腹立たしい。一体何をしているやら分かったもんじゃない。そのくせ、いざそのプライバシー空間に泥棒が入ったら、警察の対応が悪い、政府の政策が悪いとワガママ放題。いい加減にしろって感じですよ。」
「ほほう。プライバシーを守りながら、生活の安全を求めるのはワガママだと。」
「政府に安全安心な生活、一定の収入を求めておいて、はい、こから先はプライバシーなんで入ってくるな、自由勝手にさせろなんてワガママ過ぎじゃないですか?」
「誤解を恐れずに言えば、家畜にはプライバシーなんてないじゃないですか。」
「ほほう。我々国民は家畜だと。」
「家畜と同じようなものだと言っているんです。家畜は食糧になるからまだましかな。ハハハ!」
「華子さんは当然こちら特権階級の管理者側に入れる人ですよ。なんなら僕の伴侶になってスムーズにこちら側に入るのもいいですよね。あっ管理者にはプライバシーはありますからご安心ください。管理者権限って奴です。」
と春二郎が語った直後。
すくっと立ち上がった華子の強烈な回し蹴りが、春二郎の顔面にヒットしていた。
そして、春二郎は椅子から部屋の端まで飛ばされて転がっていたのだった。
「ありゃ。春二郎を無傷で返す計画では。」
棟梁がつぶやいた。
「お前の嫁などなるか!ボケ。腐れ下道が!」
「現在をもってプランOを発動する!
全員速やかに作戦を決行せよ。」
華子が声高らかに宣言した。
プランA=割りと優しく、プランB=ちょっと厳しく、プランC=とっても厳しく、をはるかに越えるプランOの予期せぬ発動。
作戦に参加する全員にイナズマのような緊張感が走ったのであった。
「さあ!お仕置きの時間よ。」
夏ちゃんすまん。
華子は夏子に心の中でちょっとだけ詫びたのだった。




