第1話 隊長黒川華子の夢
華子は父の大きな背中で揺れていた。
初夏の暑い日、二人をオレンジ色に沈む太陽が照らしていた。日焼けした顔に当たる日の光がちょっと痛かった。小学校の放課後の校庭サッカーで、男子生徒に吹き飛ばされて足を痛めた華子を父が迎えに来てくれたのだ。父は友達のお父さん達よりかなり年上で、髪には白いものがたくさん混じっていた。正直華子はみんなの若いお父さんが羨ましかった。
「お父さんの匂いがする」
「仕事帰りで臭いかな?ごめん。ごめん。」父の仕事について華子はよく知らなかったが、日本を守る大事な仕事だとお母さんは言っていた。
「華子。お父さんの匂い好きだよ」
「本当か。嬉しいなあ」
父は上機嫌でよくわからない歌を歌い出した。
「華子はお父さんの宝物。華子はお母さんの宝物。華子は日本の宝物。。。♪」
ピピピピ~ 目覚まし時計がなった。
「ううっ。またこの夢。」
華子の頬と父の形見の古くさいそば殻の枕を包む花柄のカバーが涙で濡れていた。「お父さん。おはよう。今日も華子は日本を守る為に頑張ります!」




