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6媚 演出

「よぅ。ドグマ―。ペットを拾ってきたってぇ?」


「あっ。兄上。そうなんだよ。ちょっと双子がいたから丁度良いかと思ってな」


「双子で丁度良いって……………」


3人を部下にした後、ちょっと僕だけ外に出て歩いてると兄の1人に声をかけられた。この家の次男で、長男の腰巾着という印象が強い子だね。

正直三下っぽい雰囲気があるよ。

実際、呪われてるなんて言われてる双子の話を聞くだけで関わりたくないという気持ちがありありと伝わってくるような表情になってるし。


「ついでに言うと灰色の髪と黒の髪だったぞ」


「はぁ!?黒と灰って……………汚れてるにもほどがあるだろ。いくらペットつったってそれはさすがにどうかと思うぜ」


「アァ?別に良いだろ。俺が好きに使えばいいだけの話だし」


「そ、それはそうかもしれねぇけどよ………」


怯えた様子で後ずさる兄。

僕のことも少し怖くなったのか距離を空けて、そのまま逃げるように去って行ってしまう。

その背中を呆れた視線で見送った後、僕は自分の部屋へ戻っていく。


「ただいまぁ~。大丈夫だった?」


「はい。大丈夫でした。特に誰も近づいてこなかったので」


部屋に残してた3人に問題がなかったか聞いてみると、マリナちゃんが首を振る。本当に双子っていうのが怖がられてるみたいだねぇ。

まあ辺に手出しをされるよりは断然マシだね。


「はい。それじゃあ持ってきたよ、これ」


安心しつつ、僕は持ってきたものを見せる。

そしてそのまま、計画通りに事を運んで、




「キャアアアアアァァァァァ!!!!!!?????????」

「やめてぇぇぇぇ!!!!!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!!!!」


部屋の中に、いや、外にまで響くほどに絶叫が発せられる。

それと共に、ビシバシッ!という何かを強くたたく音も小刻みに発せられる。

悲鳴の主はマリナちゃんで、小刻みな音の主はムチ。ムチは、僕が振るってるよ。今まで振ったことなんてなかったから若干苦戦中。

その音はまさに、僕が鞭でマリナちゃんを叩いてマリナちゃんが悲鳴を上げているようなもの。声や音を聞くだけで、その体に赤い痕や傷が増えていることがありありと想像できてしまう。


「……………こんなもので良いかな?」


「はい。恐らく良いと思います」


当然、全部演技というか演出。

僕は適当に鞭を板みたいな物に打ち付けて、それに合わせてマリナちゃんが悲鳴みたいなものを上げていただけ。まあ、ペットって言って拾ってきたからこの家の人間としてこれくらいはやっておかないと怪しまれちゃうと思うんだよ。

やっぱり演出って大事だよね。


「さて。そしたらここから傷を付けなきゃいけないんだけど……………」


「はい。お願いします」


ここまで演出したのに、体に傷やあとがないというのはやっぱりおかしい。だから、今度は傷とかの演出もしないといけないの!

ということで今回僕は、


「この化粧グッズを使ってそれっぽいのを作らないとねぇ」


「すみません。お願いします。私はそういう技術はないので……………」


「あぁ~。大丈夫大丈夫。僕ができるよ多分」


マリナちゃんはそういった技術がないから無理って話だったけど、前世の経験もあるから僕なら多分でききる。

なんてったって、これでも僕も結構な頻度で化粧してたからね!運よく結構可愛げのある顔に生まれられたから可愛い雰囲気の出る化粧とかも学んだし、そこそこ化粧品の使い方とかも分かってる。

だから、


「先にちょっとおめかししちゃおうか」


「「「へ?」」」


まあ、傷をつけるのもちろんするよ?ただ、とても素晴らしいことにマリナちゃんとか双子ちゃんたちとかも素材として良い。

これは確実に、光る予感がするんだよ。

ということでちょうど化粧品もあることだしメイクをさせてもらって、


「うん。かわいいね」


「……………あ、ありがとうございます?」


どう反応すればいいのか分からないと言った様子で、マリナちゃんが首を傾げつつお礼を言ってくる。双子ちゃんたちはお互いの顔が変わって面白いのかぷにぷにしあって遊んでる。混ざりたい。

残念なのは洋服がペットとして飼うということもあってあんまりかわいくないものなことだけど、こればっかりはしょうがないよね。


「……………なんか見てたらやりたくなっちゃった。僕もメイクしちゃお」


「え!?」


僕の言葉を聞いて驚愕し困惑するマリナちゃんをよそに、僕は自分の顔にもメイクをしていく。

このドグマ―君という僕の顔は、そこそこいかつい感じになってる。ただそれは表情とか原作を再現するために無駄に逆立てている髪型とかの問題で、お風呂上がりで髪を下ろしてる今の僕は逆にかわいげがあるんだよね。というか結構可愛い。

まだ2歳だし幼い感じの可愛さではあるけど、それでも化粧をすれば。


「え?ご主人様って女の子だったんですか?」


マリナちゃんからそんなことを言われるくらいの出来栄えにはなる。

初めてこのドグマ―君に転生して良かったと思えた気がするね。

まあそんなこともしてちょっと僕に対する警戒心を解かせるように努力してみつつ、化粧を落としてもらって今度こそちゃんとした偽装をする。


「………そういえば、僕のことご主人様じゃなくて名前で呼んでもらえる?なんか、あっさりと従ってる感じがして疑われる気がするから」


「は、はい」


「テレサちゃんとグレーシアちゃんもよろしくね?」


「ん」

「……………ん」


化粧する間も暇だから、色々と雑談をしていく。

とはいっても相変わらずテレサちゃんとグレーシアちゃんはほとんど何もしゃべらないから、マリナちゃんとしゃべるのが大半。

そのまましばらくは2人とうまく仲良くなれないなぁって思いながら過ごしていた時だった、


「……………終わり?」


「ああ。うん。終わりだよ。暇だったら何かしてても良いよ。この部屋限定けど」


グレーシアちゃんにいくつか傷の化粧を施し終えたところで、飽きたのか分からないけどそんなことを問いかけられた。

このまましばらくやることはないし自由にして構わないと伝えると、


「……………寝る」


「寝るの?おやすみ。そこのベッドは好きに使って良いよ」


「……………ん。おやすみ」


どうやらグレーシアちゃんは眠たかったらしく、すぐに寝息を立て始めた。僕のベッドの上で……………ではなく、


「あれ?そうされると動きにくいんだけど?」


「……………すぅ~」


「あっ。完全に寝てしまっていますね。すみませんドグマ―様」


「え、えぇ?」


僕に抱き着き寄りかかるようにして眠るグレーシアちゃん。

どうやら僕は抱き枕になったらしい。


「……………絶対ベッドの方が寝やすいと思うんだけどなぁ~」

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