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5媚 最初の部下

連れてきた女の人に、途中で護衛に買いに行かせたポーションを使う。

するとすぐに体の表面にあった傷なんかが消えて、少しだけ顔色が良くなった。ポーションってすごいね。僕は使ったことなかったけど、やっぱり効果あるっていうのが確認できてよかったよ。

まあそれはそれとして、傷を治したことに対して理由を聞かれたから、


「よかったら、君たち僕の部下にならない?」


素直に勧誘をしてみた。

スラムで倒れてたわけだし、訳ありなのは間違いない。でも、殺されてはいなかったから絶望的にまで差がある相手に狙われてるとかではないと思うんだよね。

だから、勧誘する方がメリットが大きいと僕は判断した。


「部下?」


「そう。部下。3人とも優秀そうだったから欲しくてね。他の人の下についてるとかだったら諦めるけど………」


「それは、ない」


女の人は否定する。とりあえず誰のかの下についてるっていうことはないらしい。

そのまま暫く僕と見つめあった後、


「分かった。ただ、娘たちを傷つけないでほしい」


「OK!その条件で良いよ。じゃあこれで交渉成立ね」


信用できるかどうかは別として、かなり有能な部下を手に入れることができた。どこかで裏切られたら簡単に殺されそうだけど、それでも悪役として主人公に殺されるよりは断然マシかな………。


「それじゃあ部下になってくれるってことだし、3人にご飯ね。ゆっくり食べて」


「ありがとう、ございます」


3人の前に、料理人へ命令して作らせておいた病人食みたいなものを並べる。

双子ちゃんたちは兎も角として、女の人は飢餓の状態異常までステータスに表示されてたし固形物とかを食べさせるのはマズいだろうからね。ちょっとでも長く万全な状態でいてもらえるように僕も気を付けておかないと。


「それで、食べながらで良いから君たちの話を聞いても良い?」


「……………分かりました」


とりあえず今最低限3人を生かすためにやるべきことはやったから、今度は話を聞いてみる。

まずは自己紹介から始まって、3人の名前が鑑定結果と同じ様に語られた。女の人がマリナちゃん、双子ちゃんがそれぞれテレサちゃんとグレーシアちゃん。テレサちゃんの方がお姉ちゃんで、グレーシアちゃんが妹らしい。

流石に鑑定だとそこまで詳しいことは分からないけど、まあこの部分で嘘をつく必要もないし本当だと思う。


マリナちゃんのこれまでの話とかいろいろと聞いて行って抱えてる問題とかは理解したんだけど、


「あっ。実の子なんだ」


「そうですよ。そんなに似てませんか?」


「いや。別にそんなことはないけど、暗殺者の子がそんなに若いうちから子供を作るとは思ってなかったから」


「なるほど?」


似てるかどうかはともかくとして、お母さんとは呼ばれてたもののマリナちゃんが本当に母親だとは思ってなかったからあわててごまかした。

実際マリナちゃんの年齢は鑑定で見た限り19才だったし、4才の2人を生んだのは15才くらいの時の話になる。この世界では標準的な年齢なのかもしれないとは思うけど、僕の前世の感覚からすると相当若い。


「それで、マリナちゃんが勝手に決めちゃったけど、テレサちゃんとグレーシアちゃんは僕の部下になるので本当によかったの?」


一先ずマリナちゃんの話は聞けたから、今度は話題を双子ちゃんたちの方へ。

あまり話をするタイプではないのかそれとも人見知りなのかまだ警戒しているのかは全く分からないけど、ここまで一切と言って良いほど何も言ってきてないんだよね。だから少しでも気持ちを知るために話がしたいところなんだけど、


「ん」

「……………ん」


「そっかぁ………あっ。一応言っておくけどしばらくスリとかはしないでね?ここでそんなことしたら多分普通に処刑されちゃうから」


「ん」

「……………ん」


2人の返事はそれだけ。

わざとやってるのか元々こうなのかは分からないけど、何とも会話が発展していない子たちだね。僕としては優秀で僕の指示に従ってくれるならそれでいいんだけどさ。


「…………おっ。もう食べ終わったんだ」


そうして2人との会話に苦戦してるところで、丁度良い事に食事が終わっていることに気が付いた。

流動食だしすぐに食べ終わるかと思ったけど、意外と長くかかったかなって感じだね。まあそれはそれでいいんだけどさ。


「足りなかったらごめんね。急に量を増やすと体に負担がかかるから暫くはそれで我慢してねぇ」


「分かりました」


マリナちゃんは頷くけど、何も言わない双子はやっぱりどこかまだ物足りない様子。

それに苦笑しつつ、だからと言って量も増やせないので別のことで気を紛らわせることにして、


「じゃあそこにお風呂あるから入ってきて。着替えも用意してるからそっち着てねぇ」


「え?」

「おふろ?」

「……………?」


三者三様それぞれの反応が返ってくる。

見た感じ、テレサちゃんとグレーシアちゃんはまずお風呂というものの存在自体を知らなそうだね。


「マリナちゃんは使い方わかる?」


「え?あっ、は、はい。分かりますけど……………」


「じゃあ2人に使い方教えてあげてね……………もちろん何かわからない物とかあったら変に触らずに聞いてね?壊されても困るし」


「わ、分かりましたた?」


本当に分かってるのかよく分からないけど、マリナちゃんは頷いて双子ちゃんを連れていく。

そこから数十秒後、1つも機能が分からなかったマリナちゃんに呼び出されて僕も一緒に入ることになったのは言うまでもないかもしれない。

何がとは言わないけど……………ごちそうさまでした。いくら食べてなくてガリガリでも、凄い物はすごいんだね。うん。


そうしてちょっと僕のわがままで父親に作ってもらったお風呂を最大限活用したら意外な効果が出て、


「あれ?2人とも、髪の色………」


僕が見るのは、双子ちゃんたちに髪の色。さっきまではスラムとかで汚れてたから全く分からなかったけど、洗ったことで元の色が見えるようになったんだよね。

それぞれテレサちゃんが黒で、グレーシアちゃんがそこから名前を取ったのかは分からないけど灰色。それがまた何とも興味深いことに、


「この辺で嫌われてる色じゃん」


「「「え?」」」


双子って言うだけじゃなく、髪の色でもさらにこのあたりの地区では嫌われる要素が出てしまった2人。

何てこのあたりの地区と相性が悪いんだろうと思いながらも、


「ま、まあ、僕はそういうのに差別的な意識はないから気にしなくていいと思うよ。どちらかと言えば面倒なのが寄ってこなくなるからラッキーなんじゃないかな」


「……………本当ですか?」


マリナちゃんからものすごい疑うような目線が向けられる。

それは僕に差別的な感情がないとかいう部分へではなく、おそらく面倒なのが寄ってこなくなるということに対して。

まあその面倒なのを知らないからどう効果が出るのかは分からないと思うんだけど、


「すぐにわかるよ。この屋敷で生活するなら嫌でも会うことになるしね」


「は、はぁ。そうなんですか」

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