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38媚 交渉

「さて、これなら対話ができるか?」


僕は、足元に広がる血だまりを気にもせず主人公たちに問いかける。

ただ僕が気にしなくてみんながそれを気にしないというわけではなく、


「……………え?」

「な、なぜ?」

「……………なぜだ!なぜ貴様は、自分の部下を殺した!?」


理由を尋ねてくる。僕が、ついてきた()()()()()首を切り落として全員殺害した理由を。

まあ、突然敵だと思ってた人がその人の仲間を全員殺せばそんな反応にもなるよね。でも、最初からこの兵士たちを僕は仲間だなんて思ってなかったし、


「ウィッタが言ったんだろ?こいつらがいるから話し合いなんてできない、ってな」


「なぁっ!?だ、だがだからって……………」


「だがじゃねぇよ。俺が譲歩したんだから話し合いくらいして見せろ。そっちは、戦力がまだまだあるんだろ?それで俺1人になってやったんだから十分すぎる譲歩だろうが」


そう問いかける僕の前には、僕が剣を抜いたときに何か来ると思って主人公が生み出した木のゴーレム。いわゆるウッドゴーレムが並んでる。

原作でもこのゴーレムは結構活躍して、この町の防衛の主戦力になってたんだよねぇ。質はそこまで高いわけではないけど、数があるから充分この死の大地のモンスターとも渡り合えるって感じ。


「……………まあもっと説明が欲しいって言うなら、追加で言うとすればあいつらは父上のお気に入りみたいな連中だったってことだな」


「ど、どういう意味だ?」


「そのままの意味だ。父上のお気に入り、つまり相当いろんなものを積んできたり、親が有力者だったりするってことだな。まとめて処分するには良い機会だろ」


「そ、それは……………まさかお前、最初からこちらの味方だったとでもいうつもりか!」


僕の発言から主人公サイドに歩み寄ってきていることを感じ取ったウィッタちゃんが、怒ったような表情を見せてくる。

まあ急に敵だと思ってた相手が歩み寄ってきても怪しいし、今までやってこととかをなかったことにするつもりかって思うよね。

でも、


「あぁ?言うに決まってるだろ?俺がいったいいつ、どんな罪のない人間を殺した?俺は父上や兄上たちと違って誰かを痛めつけた覚えもないし、ここに追放したやつらも誰も死んでないはずだぞ?」


「っ!?き、貴様!それは結果論だろうが!」


「善悪なんて結果論だろ?というかわざわざここに運んでくる中に問題を起こすやつがいないよう選んでやったのは俺だっていうのに、文句でもあるのか?」


「……………なんだと?」


僕はこれまで市民に手を出したことはない。

やったとしてもマリナちゃんい連れて行ってもらって盗賊を処分したりとか、それこそ今みたいに問題がある兵士を処分したりとか。後はたまに商人の力をそぐために部下を処分したりとか。そのくらいしかしてないよ。

暴言を言ったことはあるだろうけど暴力はほとんど振るってきてないし、僕が悪であると判定するのはなかなか難しい。


しかもついでに言えば、この街の運営には僕が深くかかわってる。

何せ、ここに追放したのは基本的に僕が選んだ面々なんだから。


「おいおい。分かってなかったのか?痛めつけたり殺したりせずにわざわざ人をここまで運ぶ奴なんて俺くらいしかないぞ?わざわざ無害で高い技術力を持ってるやつを優先的に連れてきたっていうのに、まさか全く気付いてないなんてことはないよなぁ?」


「なっ!?……………そ、そうだったのか?いや、しかし、確かにお前は……………」


ウィッタちゃんもここまで言われると理解してくるようで、今までの僕の印象と僕の貢献の板挟みにあって悩んでるね。

ただ、その横から出てくる主人公はそこまで悩んでる素振りはなく、


「それで?ドグマ―兄上はここから何がしたいんですか?」


将来のことを尋ねてくる。

やっぱりここで気になるのが、わざわざ僕がこんなことをするメリットだろうね。

確かに僕がただ善良な人間であり主人公たちを支援していたとしても、ここまで僕が出張って兵士たちを殺す必要はない。自分でせいぜいこのまま公爵になって、自分の力でそういう人たちの力を弱めればいいんだから。


でもね。


「俺の目的は簡単だ。お前を、公爵にするんだよ」


「……………僕を、公爵に?」


主人公は心底理解できないといった感じの表情を浮かべる。

まあそうだろうね。今までの僕のイメージからすると、僕がわざわざ公爵を譲るなんて考えられないだろうから。

まあ僕は面倒なこととか嫌いだし貴族として縛られて生きていくのはあんまり好きじゃないんだけど、それはそれとして建前もあって、


「お前は、このまま俺が公爵になって改革をしたとして、公爵家への不満が完全になくなると思うか?」


「そ、それは……………」


公爵家に恨みを持つ人たちはたくさんいる。

それが公爵家が急に善政を敷きだしたとしても消える可能性はほとんどない。僕は、公爵になった場合かなりの恨みを受けながら領地運営をしていかなきゃいけないわけだよ。

でも、さすがにそれは面倒くさすぎる。善政を敷くにはあまりにも障害が大きすぎるんだよね。

となると、


「そんなことをするくらいなら、お前に公爵家を敗北させて支配を塗り替えたという形にした方が不満は収まりやすいだろう」


「な、なるほど。で、でも、それだと兄上の立場は……………」


「その時に俺は処刑をされなければそれでいい。父上と兄上たちの実権を持ってたり継承権を持ってる連中を処刑して、俺に継承権が回ってきたら俺はそれを放棄する。そうなれば、俺はただの公爵家の人間。そしてお前は男爵でありながら公爵家も継げるってわけだ。俺も別に持てる権力が変わるわけじゃねぇしそれで問題ない」


「そ、そう、ですか……………」


まだ少し信じられないといった様子で僕のことを見つめる主人公。

でも、僕もこれ以上主人公にかまってもいられないんだよね。かなりタイムリミットは迫ってきている。ここでもう一押しくらいできたらすぐに帰りたいんだけど……………

と、思ってたところでちょうどよく、


「お待ちくださいシギ様。あいつは、何もしてないわけではありあません!呪われてるとかいう子たちをいじめていたではないですか!」


「っ!そ、そういえば……………」


双子ちゃんたちの話が出てくる。

いやぁ~。本当に丁度いいね。まあこうなる流れになる事を期待してはいたんだけど、実にありがたい限りだよ。口にしてくれた主人公のメイドちゃんには感謝しないとね。


ということで、話題に出てきた双子ちゃんを馬車から出てこさせて、


「こいつらのことか?」


「そ、そうです!あなたが善人なら、そんなことをするはずがないでしょう!」


「そうか?別に普通のことをしてると思うんだけどな」


僕はわざとらしくすっとぼけた感じにした後、双子ちゃんたちに目を向ける。

そこからやることは単純で、


「見せてやれ」


「ん」

「……………ん」


論より証拠。

2人には、その傷だらけに見せる体をごしごしと布で拭いてもらう。そうすればすぐに見えてくるのが、


「え?き、傷が……………」

「ど、どうなってるの?」


「お前たちの目は節穴か?こいつらに着けてるのは、偽装用の特殊メイクに決まってるだろ?傷に見えるだけで、ただ絵の具で描いただけのものだ」


「なっ!?そ、そうだったのか……………」


本当は絵の具だけじゃなくていろんなものを使ってるんだけど、あんまり言い過ぎても良くないし絵の具だけってことにしておく。

まあそれでも十分騙せたみたいで、僕が本当はいじめてるわけじゃないってことは理解させられたみたいだね。


「じゃあ、屋敷に戻るまでにそれ描き直しとけ」


「ん」

「……………ん」


「……………とりあえずお前らの言い分はこれで全部違ったってことを証明できたな?それじゃあここで少し工作に協力してくれねぇか?」


とりあえず、僕が協力的な立場にいることは示すことができたと思う。

後は、ここからどうやって協力していくかが大事になってくるよね。僕は内側から。主人公たちは外側から。それぞれ公爵家にダメージを与えていってもらう必要が出てくるんだよ。

となるとやっぱり大事なのは、


「こ、工作?」


「ああ。まだ俺たちが手を組んでると思われるのは良くない。公爵家も決して弱いわけじゃねぇからな。だから、だます必要があんだよ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 原作主人公&ヒロイン無能すぎへん? いや主人公がしっかりしすぎてたからなんだろうけど、なんでそこまでして主人公を支えようとしてたのかは気になる。
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