30媚 圧倒的才能
まだ若干距離はあるけど、僕もルイーゼちゃんとスーザンちゃんとの仲を深められてきた。
「ドグマ―様!これ読んでください!」
「見てください!魔力使えるようになりましたよ!!」
「おぉ~ルイーゼちゃんすごいね。もう魔力操作そんなにうまくなったんだ…………じゃあ、本読もうか。スーザンちゃん貸して。ルイーゼちゃんも聞く?」
「聞きます!!」
ルイーゼちゃんから自慢をされたり、スーザンちゃんからねだられたりするくらいには仲良くなれたよ。かなりなつかれたと思うね。
さてさて、それじゃあ2人に本を読んであげようか……………と、思ったところで気配を感じて、
「あっ。3人ともお帰り~」
「「ただいま」」
「……………ただいま」
外に出ていた双子ちゃんとマリナちゃんの3人組が帰ってくる。奴隷な2人が来たことで、ある程度騒いでることもあって3人がどこかに行っても不審がられなくなったんだよね。おかげで3人は、というか特に双子ちゃんが実戦経験を積んでめきめきと成長してるよ……………僕との実力差は離されるばかり(泣
で、そうして3人が帰ってきたのが分かると、
「おかえりお姉ちゃんたち!!」
「お、おかえり」
「もぅ~ルイーゼ。外行ってて汚いんだから抱き着いてこないでよ~。着替えてからにして~」
奴隷な2人は3人の方にかけていって迎えの挨拶を。笑顔が輝いてるね。ルイーゼちゃんに至ってはマリナちゃんに抱き着いてるくらいだし。
……………いや、言いたいことは分かるよ?あれでしょ?僕よりも断然3人の方がなつかれてるじゃんとか言いたいんでしょ?どうせ僕は近所の人くらいのなつかれ具合で、3人は家族くらい仲が深まってるって言いたいんでしょ!!
2人とも敬語だし!なぜかルイーゼちゃんも僕に敬語使うようになってるし!そう言いたいのは分かるしうすうす僕もそう思ってるよ!!
なんでなんだろうね。やっぱりまだ最初の印象が響いてるのかな……………
「あっ。ドグマ―様。兵士の人たちが訓練してたからルイーゼ連れて行って来たら?」
「ん?そうなの?じゃあそうしようかな……………いこっか。ルイーゼちゃん。スーザンちゃんも時間があったら見ておいた方が良いと思うんだけど」
「はい!分かりましたドグマ―様!!」
「い、行きます……………」
マリナちゃんから情報をもらったから。ルイーゼちゃんとスーザンちゃんを連れて僕は部屋を出る。マリナちゃんたちと別れて若干寂しそうかな……
向かう先はマリナちゃんから教えてもらった兵たちが訓練をしている場所で、
「ん?何だお前たち。やってるのか」
「ド、ドグマ―様!お疲れ様でございます!本日は大変お日柄も良く……………」
僕が話しかけに行くと、非常にかしこまった様子で兵士たちの教育を担当している人が挨拶をしてくる。長ったらしいあいさつで僕苦手なんだけど、やらないと無礼になるらしいんだよね。
まあそんな挨拶は聞き流しつつ、調度良いタイミングで、
「やってるならルイーゼも混ぜろ。ついでに俺も軽く動く」
「か、かしこまりました!では専用のメニューに致します!!」
僕とルイーゼちゃんの訓練への参加をお願いする。まあ、お願いっていうより命令に近いけどね。僕が確定事項みたいに言って断れるわけがないんだし。
で、そうして僕たちが兵士たちの中に入っていくとルイーゼちゃんは何人かの兵士に囲まれて、
「いや~。ルイーゼは成長が楽しみだな!」
「よし!今日も相手してやるぞ!!」
「は、はい!お願いします!!」
熱心な教育が始まりだす。ルイーゼちゃんは僕のお気に入りみたいな立ち位置になってるから、兵士たちからすれば凄い大切に扱わなきゃいけない存在。だからこそ、相手をする兵士は訓練をさぼれるんだよね~。それが狙いでみんな群がるの。
では僕はというと、
「ドグマ―様は、いつものような形でよろしいのでしょうか??」
「ああ。あんまり本気でやるつもりもないしな」
僕は誰にも囲まれない。僕はほかの兵士に混じって、完全にそのまま訓練してるんだよね~。
もちろんまじめにやってるようには見せないで、適当にさぼったり冷やかしたりしつつにはなるけど。
ただ、それでもちゃんと観察してだいたい兵士としての動き方は分かってきてる。マリナちゃんから学んでる暗殺者的な立ち回りじゃなくて、こういう兵士としての戦い方も学んでおくと結構応用が利くんだよね~。この2つを切り替えることでどうにかギリギリ双子ちゃん達相手でもまだ数秒は保ててるし。
ただ、
「てやああぁぁぁ!!!!」
「うぉぉぉ!!!!すげぇ!まっすぐ行ったぞ!!」
「木剣でここまでできるなんてな。本当にルイーゼは才能の塊だな!」
ここで僕の心を折りに来るのがルイーゼちゃん。圧倒的な勇者としての才能によって、僕のことを超えていったんだよね。
暗殺の技術はいつの間にか僕とトントンくらいになってて、断然兵士たちから習う戦い方はルイーゼちゃんの方が上手くなってるし。まあ言っちゃうと、僕の完全上位互換だね!…………うん。あまりの才能の差に僕は悲しくなってくるよ。
「よしっ!模擬戦だぁぁ!!!」
「は、はい!お願いします!!」
「いい返事だな!行くぞ!とりゃ、えぇ!?ちょ、待て!?うわあああぁぁぁぁ!!!????」
ちなみに、ルイーゼちゃんは一般の兵士くらいなら数秒で終わるね。僕でもギリギリ30秒持ちこたえられるかどうかってとこかな。
僕を倒す時間から考えてまだ双子ちゃんたちの方が強いのは分かると思うけど、追い上げの速度で言えば断然ルイーゼちゃんの方が速い。双子ちゃんが負けるようになるのも時間の問題なんじゃないかなとは思ってるよ。
で、こうしてルイーゼちゃんの勇者としてのバリバリに高い才能は示せたわけなんだけど、
「……………はぁ。少し疲れたな。よし、ルイーゼ戻れ!家庭教師のところに行くぞ!!」
「は、はい!!」
僕たちはある程度訓練をした後、家庭教師のところに向かう。あの長男に勉強を教えてる家庭教師だね。
その家庭教師のとこに言って今度活躍するのは、
「ふむ。素晴らしいですねスーザン。ドグマ―様の奴隷としてふさわしい才能ですよ」
「あ、ありがとうございます!!」
賢者であるスーザンちゃん。
家庭教師は平民には魔法がどうこうとか最初僕が魔法を教えてもらう時に言ってたけど、スーザンちゃんが魔力感知できるって言ったら目の色を変えて教えだしたの。
僕を教えてる時も長男の時よりは楽しげだったけど、スーザンちゃんへの対応はそれの比じゃない。
非常に生き生きとした様子で、たぶん秘伝なんじゃないかみたいな技をいくつも見せてスーザンちゃんに教え込んでいくんだよね。おかげでスーザンちゃんは、
「え、えい!」
窓から、外に向かって魔法を使う。すると、雷の線がまっすぐ伸びていって、直後ズガガガーンという激しい音と共にその線の下の方にいくつもの雷が落ちていく。
家庭教師が最初これの下位版みたいなものを見せてきた時は驚いたけど、スーザンちゃんはあっさりそれを超えてきちゃって……………恐ろしい限りだよねまったく。
「ん~?ドグマ―。今何かあったか?」
「いや、あいつらが魔法使っただけだ。そんなに気にするようなことじゃねぇよ」
「そうかぁ。ならいいや。俺は寝るぜ」
そんな音に反応して顔を上げるのが、家庭教師がスーザンちゃんに夢中になっている間はサボれる長男。
基本的に机に突っ伏して眠っている。
魔法の音でビックリして起きたみたいだけど、あんまり興味ないみたいですぐに寝ちゃったね。
まあこんな感じで、スーザンちゃんもルイーゼちゃんも、双子ちゃんたちと違って今はまだ実戦経験は積めないけど、そこそこのレベルの教育を受けさせられて成長させられてる。
これだけでも充分原作が始まるまでに必要な最低限の戦力は揃えられたと思うんだよね。
後は、戦闘面以外の人材が欲しいところではあるんだけど……………
「そこは時間をかけていくしかない、か」




