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10媚 原作の武器

さてさて。僕の部下である3人の育成(主には双子ちゃんたち)は順調。

ただ、順調ではあるけど理想のペースではないから、僕もちょっと手助けをすることにした。本当は発見は原作だとかなり先になるんだけど、


「小型のダンジョンをあさってきてくれない?多分どっかに、凄くいい経験になるところがあると思うんだよね」


「そうなの?」


「そうなの。まあ、僕が読んだ色々な文献に間違いがなければの話だけどね」


「ふぅん?……………まあそういうなら行ってみる」


「よろしく~」


マリナちゃんは僕の指示に不信感を抱いていそうではあったけど、おとなしく従ってくれる。もし裏切られて変なところに行かされたとしても、今の万全な状態なら首を飛ばすくらい簡単だとか思ってるのかもしれないね。

まあもちろん、わざわざここで殺してくるようなメリットがないとかほんの少しだけ芽生えてる信頼とかもあるのかもしれないけど。

まあそういう理由は兎も角として、マリナちゃんは行ってくれる。


「……………で、そうなると僕たちは暇になるわけだけど」


「ん。暇」


マリナちゃんは、ダンジョンという初めての場所に連れていくということもあって、戦闘が得意なグレーシアちゃんの方を連れて行った。

そのため部屋に残るのは僕とテレサちゃん。テレサちゃんはグレーシアちゃんと違って僕に抱き着いたまま寝たりもしないし、一緒にやることがちょっと変わってくるんだけど、


「本でも一緒に読む?」


「読む」


そこまで相手をするのは難しくない。表情や声からは分かりにくいけど、テレサちゃんは好奇心旺盛でいたずらっ子なところがある。それでもって知識欲も強いから、本とかすごい好きなんだよね。

僕も早く読んで主人公に渡さなきゃいけない本があるから丁度良い。


「じゃあまずはこのモンスター図鑑とか見て見ようか」


「ん……………これ強そう」


「あぁ。本当だ。強そうだね。生息域は海って書いてあるから暫くは見ることなさそうかな」


「そっか」


「見たかった?」


「別に」


「そっか」


テレサちゃんの返事は淡白で、会話が長続きすることはない。ただ、心なしか目がキラキラしてるしゆったり体も揺れてるから楽しんでるのは間違いないと思う。

しかも、


「これ、似てる」


テレサちゃんは図鑑の途中に書いてある、弱い魔物がまとめて書いてあるページの1体を指さしてそんなことを言う。

その口角は少し上がっていて、何か楽しいと思うことをしようとしてるか考えてるのは分かった。


「似てる?誰に?」


「ドグマ―様」


「え?僕?……………まあ、確かに見た目はかわいいから似てると言えば似てるかもしれないけどさぁ」


「弱くてかわいい。そっくり」


「弱くてかわいい!?弱いところも似てるポイントなんだ!?」


丸っこいフワフワの小動物みたいなモンスターが、可愛くて弱いから僕と似てるなんて言い出した。笑ってるっぽいからからかってるのは分かるんだけど、


「ほら、弱い」


「……………そうだねぇ」


僕が弱いっていう部分を否定しようとする前に、喉元に練習用の木製のナイフが突きつけられる。最初からこれを狙ってたみたいだね。僕はさすがにそこまでされると否定できず、おとなしく認める。


「勝った~」


「負けた~」


両手を上げて喜ぶテレサちゃん。その顔はほとんど変化していないはずだけど、勝ち誇っている感じなのは理解できた。

そんな風に僕と所々で遊んでくるテレサちゃんと一緒に本を読みつつ、暇をつぶしていく。

今頃マリナちゃんたちは今頃なにをやってるかなぁと思いながら。



数時間後、


「どういうこと?」


「いや、どういうことって言われても困るんだけど」


「いや、でも、おかしくない?」


「まあ、おかしいとは思うよ。でも、文献通りだし………」


帰ってきたマリナちゃんは、僕を問い詰めてきていた。どうやら僕の予想通りダンジョンでいろいろとあったらしいね。

そんな僕たちの様子を見て何にそこまでマリナちゃんがあせっているのかよく分からないようで、双子ちゃんたちは仲良く首をかしげてる。かわいい。並んで一緒に首をかしげて写真撮りたいね。


「だとしても、なんであんなところにこんな強い装備があるわけ?」


マリナちゃんがそう言って見せてくるのは、いくつかの装備。

綺麗な装飾の施された薄い水色や淡い赤色の剣や槍がいくつも出てくる。それはもうたくさんあって、


「ごめん。ちょっと待って。僕もここまでの数は知らないよ。せいぜいこの短剣くらいしかわかってなかったんだけど」


「え?あっ、そうなんだ」


原作で、主人公のところまで流れてきた商人が「小さいダンジョンを探ってたらたまたま見つけまして」とか言って氷属性の付いた魔法剣を売るシーンがあったの。

その剣が凄く強いって設定だったから今のうちにとってきてもらおうと思ってたんだけど、まさかそれ以外にもこんなに出てくるとは思わなった。


「ま、まあ、持ってても損はしないし良いと思うんだけどさ」


「だ、だよね?でも、なんであんな小型のダンジョンにこんな魔道具が置いてあったんだろう?」


「さぁ?それは僕にも分かんないよ」


ダンジョンと言えば、大きいダンジョンで奥に潜って行けば行くほどいい装備ができるって印象はある。

でも、小さいダンジョンを探索してたらいい装備が出るって話はないよね。それならわざわざ大きいダンジョンに行く必要もないわけだし。


「まあとりあえず、しばらくそういうのがゲットできる間は小規模ダンジョンの探索をお願いできるかな?」


「う、うん。了解。あのくらいのダンジョンなら2人を鍛えるのにも調度良いし、またいくつか行ってみるね」


原作キャラの武器を奪う形にはなっちゃうけど、主人公が追放された後に主人公の街にこれを送り届ければいいだけだからね。

そこまで焦る必要はないでしょ。

というかそれよりも、関係ない人に取られる前に確保しといたほうが良いかもね。


こうして強い装備を手に入れたりダンジョンに行って経験を積んでもらったわけだけど、


「なんか、実力差がどんどん開いてくね」


「そ、そうだねぇ……」


訓練をしていて、そう感じた。僕と双子ちゃんたちの実力差が、明らかに開いてる。それも、相当なペースで。

やっぱり経験って大事なんだなぁ。


「ドグマ―様。余計なこと考えてるとやられる」


「げふんっ」


テレサちゃんの持つ剣が僕の頭に軽く触れるのを感じつつ、実力差を改めて思い知った。

……………いいことではあるんだけど、裏切られないように頑張っていい主人アピールしないとなぁ。

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