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9媚 家庭教師

「お前たちは何をやっているのだ」


「何って、俺たちは親切心からあの下民に知識を与えてやってただけだぜぇ?貴族の慣習だか何だかしらないけど、あいつも賢い方が良いんだろぉ?」

「父上。何か問題でもあんのかよ」


「しかし怪我をさせるのは……………いやしかし、本か。鞭や刃物でないと考えるとな」


主人公に向けて兄や使用人と一緒に本を投げた後。

案の定父親に呼び出されてお説教をされそうになった。

ただそこまでひどいことにはならないだろうから、僕は何が悪いのかよく分からないというちょっと人を馬鹿にした感じで、兄は少し喧嘩腰な感じでそれぞれ対応する。

これがもし兄だけだったら喧嘩腰なのもあってヒートアップしていって怒られるのが目に見えてたけど、僕のこのふざけた感じの態度がそれを抑えたようで、


「知識を与えるのはかまわん。しかし、顔や頭には当てるな。そして本の中にものを入れたりするのも禁止。もちろん外側に危険なものを付けることも禁止だ。また、本に金属が使われているものも禁止とする」


「えぇ~」


すらすらと出てくる禁止される内容。

流石に公爵だけはあって最低限頭は回るみたいだね。ちょっと父親をなめすぎてたかもしれないかな。

兄は不満そうにしてるけど、


「おぉ。それでいいぜ。俺はただ知識を与えてやりたいだけだからなぁ」


僕は反抗心がありませんよという姿勢を見せておく。

態度は兎も角として、こういうことを続けていけば父親には僕が逆らうことのない存在という風にすり込めて行けるんじゃないかと思ってるよ。


そして、僕の主人公に本を投げる目的としてもそういった条件を付けてもらえるのはありがたい。

これから僕だけじゃなくて使用人や兄なんかも本を投げていくだろうけど、その建前はあくまでも知識を与えること。つまり必然的に、主人公は本を受け取ることになる。

それが大きな僕の狙い。主人公は原作だとそれまでの間信用できるメイドからしか教育を受けられなくて結構常識とか専門知識とかが欠如してたから、今回は変えておくべきだと思うんだよね。

原作だと人が大勢死ぬほどの被害は出てなかったけど、僕が関わることによってだまされる内容なんかが変わってひどい被害を受けるなんてことにもなりかねないから。


「性格まで変わるとそれはそれで困るけど……………そこは許容するしかないかな」


原作の人に甘いところまで変わっちゃう可能性がないわけではないけど、そんなところまではさすがに気にしていられない。

性格の変化なんていろんな可能性がありすぎて、対処の仕様がないからね。せいぜいよく観察して、バレない程度にたまに鑑定して、変化を見ていくしかないよ。


「しかし、知識をあやつに与えるというのであればお前たちも知識の大切さがわかっているということか。予定より早いが、家庭教師を呼んで勉強を始めさせてやるとしよう」


「なっ、父上!?」


僕がこれからのことを考えていると、父親が悪そうな顔を浮かべて家庭教師の話を出してくる。

まあ、あれだけ知識がどうこう言ってて自分たちは知識がいらないのかって問われるとね……………ただ、ここで問題になってくるのが、


「父上~。俺様は関係ないでしょ~」


「そんなことはない。お前の弟たちが知識は大切だと言っているのだ。長男であるお前が抜かされるわけにもいかんし、まずはお前からだろ?」


「そんな~。2人ともよくもやってくれたなぁ~」


本を投げるのにかかわったのは、僕と次男。

ただ、家庭教師を呼んで最初に授業を受けることになるのはやっぱり1番年上の長男になるんだよね。だから、恨みのこもった視線が長男から僕たちに向けられる。


「あ~。悪ぃな兄上。でも、つまんねぇ授業するなら首にすればいいだろ………あぁ。どうせならその家庭教師とやらに、その体を使って良いいじめ方を教えてもらうってのはどうだ?」


「クヒッ!それは良いかもしれないなぁ~」


あんま兄たちにかしこくなられても困るし、家庭教師に従い過ぎないように言っておく。

良い笑顔が得るね。まったくかわいくはないよ。

そんな僕たちの様子を見ながら何とも言えない表情を浮かべている父親をよそに、僕たち兄弟は家庭教師をどう痛めつけるかなんていう話をしていくことになる。

まあ、そんな感じの話になるともうどうでも良くなるとして、


「家庭教師、かぁ」


「ん~。何かするの?」


「いや、何もしないけど。というか今のところは何もするつもりはないけど」


僕のつぶやきが気になったらしいマリナちゃんが質問してきて、僕は首を振る。

今のところ家庭教師に対して何かしようとは思ってない。ただどこかしらで、そういう家庭教師みたいな学があってある程度人にものを教えられる人と主人公を結び付けておく必要はあると思うんだよね。主人公の作る街の人たちのためにも。


「それもどっかで確保しないとな~」


ここに家庭教師をしに来た人を捕まえるのか。それとも1からそういう人材を育てていくのか。どちらにするにせよ、それぞれ候補は見つけておいた方が良いと思うんだよね。絶対必要な人材だと思うし。

そろそろマリナちゃんたちも割と気楽に外に抜け出せるようになってきてると思うし、新しい人材を確保しても良いかなぁとは思うんだけど、


「外に出てる感じはどう?最近は順調にやれてる?」


「ん~。まあまあかな。2人ともこの屋敷から抜け出すのはとりあえず問題なくなったとして、まだ若干モンスターと戦うのに関してはテレサの方に不安があるかも。隠密能力とかに関してはテレサの方が高いんだけどね」


「そっかぁ」


僕としては両方とも問題なくなったくらい。それこそ、マリナちゃんと外で別行動をとっても問題ないくらいにまで成長したら安心して新しい人材を引き込めると思ってる。

ただ今の状態を聞く限りだとむずかしそうだね。


「それならちょっと行ってみてほしいところがあるんだけど……………」

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