表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/45

プロローグ 目覚め

突然だけど、僕は転生した。

転生先は中世ヨーロッパ風の、よくある剣と魔法のある世界。しかも都合のいいことに僕の生まれた家は貴族っぽい。貴族に転生なんてこれはもう勝ち組人生間違いない(ただし家からはお金と質のいい教育だけもらってさっさと出ていくつもりではあるけど)でしょ!

僕がこの世界の主人公!目立とうとは思わないけど、適当にチートっぽく自由気ままに過ごしちゃうぞ!!



なんて思ってたのは、というか思えたのは、転生から数日の間だけだった。

そんな認識を改めさせられたのはまだ転生から数日で、この世界の言語も全ては理解できていない時。使用人に抱っこされながら屋敷を移動していると、バシンッ!という強く何かを叩くような音がした。

そして、


「キャアアアァァァァァァ!!!!!!???????」


響く悲鳴。

驚いたのか、僕のことを抱っこしていた使用人の力も強くなる。顔を見てみれば、その表情は何かへの怯えと心配が見て取れる。

怯えっぽい感情が強く出ているのが気になるところではあるけど、そこはいったん放置。

覚えてたら後から考えるとして、今度は音のした方を見て見る。

そこには、


「キャハハハッ!!この※※※※※※!俺様が※※※※※※※※※※喜べ!」


「アガァッ!?や、やめ……………あ、ありがと、ございまず」


そこには、2人の人間がいた。

1人は小学校低学年くらいの少年で豪華な身なりをしており、もう1人が20代後半くらいのメイド服を着た女の子。

問題は、その2人の行なっていること。なんと、男の子の方が女の子をかなり痛そうな棘付きの鞭で何回も叩いてるんだよね。

さらに言うとすればその叩いている少年が、


「ん?何見てるんだお前。もしかして※※※※※※※のか?」


「ヒッ!?ち、違います。わ、私はボドマー様をお世話※※※※※※※、お屋敷の散策をしていたところです!」


「おぉ!ボドマーか!※※※?兄様だぞ。ボドマーも俺様から※※※、公爵家として恥ずかしくない※※※※を持つんだぞ」


何を言っているのか全ては分からないけど、ボドマーなんて名前の僕に対して自分のことを兄様って言ってくる、つまりは僕の兄ってことなんだよねぇ。

そうして中世の貴族の世界観だとしても近代的な価値観を持っていた僕からすれば嫌悪感が出てしまうような兄弟の様子と、さらにそこから起こっていく出来事で理解してしまったの。

あれ?ここってもしかして、僕が前世で読んだラノベの世界じゃない?って。さらに追加で、この僕の生まれてきた家は、そのラノベに出てきた悪役貴族の家じゃない?ということも。


判断材料は、まず僕の名前や家族の名前。これが知っている悪役貴族家の家族関係の名前にピッタリとあてはまった。

そしてほかにも、家族のやってる悪逆非道な行いや家の爵位なんかも同じ。

そして何よりも、


「こ奴が補欠者となるものだ。汚らしい下民の子ではあるが、念のため危害は加えぬように」


「「「「えぇ~~」」」」


「そう不満そうにするな。これも貴族としての慣習であるのだから仕方なかろう」


2歳の時、僕の今世の父親がそんなことを言いつつ新しい家族を紹介してきた。

それが、


「……………主人公じゃん」


原作だとこの家から追放されて成り上がっていく、主人公だったんだから。

これはもう間違いないんだよねぇ。名前も頭髪や目の色も間違いなく主人公のもの。


つまり僕は、悪役貴族家にいる悪役の1人に転生しちゃったってこと。





さて、まさか転生先がこんな家だとは思わなかったけど、いつまでたっても驚いて落ち込んでいるわけにもいかない。

ということでここから僕が考えていかなきゃいけないのは今後の身の振り方。

僕は原作だと将来主人公にあっさり負ける設定なんだけど、さすがにそういうわけにもいかない。わざわざ転生したからと言ってもう1回死にたいとは思わないからね。


じゃあそれなら、主人公の敵とならないように悪いことしなければいいんじゃない?と思うのかもしれないけど、


「ボドマー。公爵家としての威厳を示すのだ」


「下民共に力を見せつけてやらねぇとなぁ」


僕の家族がそれを許してはくれない。

悪いことをしないと家の人間じゃないみたいな雰囲気になってるんだよねぇ。まだ今は僕が小さいから何もしなくても許されてるけど、5歳くらいになっても何もしないようなら僕もあまりよくない待遇を受けることになるかもしれない。

ということで、悪いことを全くしないで主人公と敵対しないという意見は却下。


それなら逆に、徹底的に悪者になって主人公の成長する機会をとことん潰していけばいいんじゃないかと思うかもしれないけど……………当然僕としては受け入れがたいんだよねぇ。

あんな今の家族みたいな外道と同じにはなりたくない。



となると、あとは僕に何が残るのか。

もう全部をなげ出して今から家出するのも1つの手だし、家のどこかに隠してあるだろう不正の書類なんかを見つけて王家や他の公爵家に見せるのもありかもしれない。

もちろんそういう選択肢も取れると思う。


ただね、原作だとこの家って今引き取っている主人公を追放して、その追放された先で成り上がってくる主人公と僕たちは敵対することになるの。

それを考えると、ある程度将来が分かるし原作の流れを汲みつつ、


「主人公の仲間に、僕の部下を送り込めば助命懇願してもらえないかな?……………よし!そうしよう!表で家族には悪事してるアピールしつつ、裏で優秀そうな部下をたくさん作って主人公の部下にして命だけは助けてもらおう!!」


僕が主人公のポジションになろうとは、正義の味方になろうとは思わない。

でも、それでも悪役のフリをしつつ命だけは助けてもらえる妥協点を探して汚く生き残る僕の暗躍がここから始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ