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ラガン王国首都『ロット・ノット』へ

ようやく腰を落ち着け、早5年、ラバァルたちに直接的な戦いではない、陰謀と言う戦いが仕掛けられてきていた、その者たちは首都から己の欲望のままに、暗躍、敵対勢力を押しのけ、利権を広げ勢力を拡大させようと絶えずしのぎを削っていた者たちだった。    

              その97 



ルカナンの空は朝から強い日差しに満ち、夏の到来を告げていた。ラバァルたちがマーブル新皇国からこの地に逃れて、五年と二ヶ月。二十三歳になったラバァルは、すっかり大人の男の風格を漂わせている。仲間たちも同様に時を重ね、特にニコルの成長は目覚ましく、誰もがその変貌に目を見張るほどだった。

彼らの住処は、かつてタロットがグラティア教徒を毒殺したあの地下秘密基地を改修したものだ。ニコルたちはその陰惨な過去から使用に強く反対したが、ラバァルの強い意志――いや、半ば強引な決断で押し切られた経緯がある。


その地下広場では、湿った冷気が漂う中、いつもの訓練の音が響いていた。エルトンが二本の短剣を振るい、ニコルを鍛えている。空気を切り裂く鋭い音、金属が激しくぶつかり合う音。「カキーン!」衝撃を受けたニコルの体から鈍い音が響き、「バシッ!」素早いステップの足音が続く。「タッタッタッ!」再び金属音。「カキーーン!」そして、ニコルが地面に叩きつけられる重い音。「ドサッ……」。

訓練を見下ろす高台で腕組みをしていたラバァルは、隣のシュツルムに低く呟いた。「ニコルの奴、かなり腕を上げたな。もうエルトンと互角に見える。」

滅多に人を褒めないラバァルの言葉に、シュツルムは顎を少し上げ、含みのある声で返す。「互角は言い過ぎだ、ラバァル。エルトンはまだ『切り札』を見せてないぜ。」

「だろうな。訓練で見せるような切り札は、切り札とは言わん。」ラバァルの声に笑みが混じる。

「俺なら、そこまで凌いで初めて互角と認めますがね。」

「ふむ…」ラバァルは唸り、「まあ、ニコルにしては、という前置き付きで、見違えるほど成長したのは確かだな。」と結論付けた。

広場に背を向け、「さて、俺は見回りに行ってくる」とラバァルが告げる。

「一人でか? リーダーが率先して単独行動は示しがつかない、と言っていたのはどこの誰だったかな?」シュツルムが皮肉っぽく言う。

痛いところを突かれ苦笑したラバァルは、「…そうだったな。なら、お前も来るか?」と誘う。シュツルムは「いいですよ」と短く応じ、二人は石段を上がり、初夏の陽光が満ちる地上へと出た。埃っぽいルカナンの街を並んで歩き始める。

古い石畳の道を歩くと、街に活気が戻りつつあるのが肌で感じられた。通りを駆け回る子供たちの数が増え、その声も明るい。五年前とは雲泥の差だ。レクシアたちが始めた食糧供給が、着実に実を結んでいるのだろう。パンの焼ける甘い香りが漂い、人々の顔にも希望の光が宿り始めていた。

巡回中の兵士たちが、すれ違う度に行き届いた敬礼をしてくる。ブレネフ参謀とラバァルが並んで歩く姿を目撃した者から話が広まり、ラバァルが何か重要な立場にあると認識されているらしい。今はただの散歩なのだが。

次に、新しく開墾された農地エリアへ向かう。かつてここは、盗賊や野盗が潜む危険な場所だったが、ラバァルたちが彼らを制圧し、武器の代わりに鍬を握らせた。汗と泥にまみれ、食料を得る大変さを骨身に沁ませた結果、今ではすっかり農民として馴染み、熱心に土地を耕す姿があちこちで見られる。

農夫たちは、ラバァルたちを見ると作業の手を止め、笑顔で挨拶してくる。ラバァルも軽く手を上げて応え、「何か問題はないか?」と声をかけ、情報を集めながら緑の若い芽が広がる農地を進む。開墾のペースは早いが、それ故の歪みがまた新たな問題を生むだろう、とラバァルは予感していた。

続いて訪れたのは、増築されたレクシアたちの集会場。木製のドアを開けると、朝の光が差し込む心地よい空間が広がっていた。子供たちがすぐに駆け寄り、「ラバァル兄ちゃん、今日はお土産ないの?」と手を広げる。

「はは、すまん! 今日は忘れちまった」ラバァルは照れ笑いを浮かべ、代わりに地面に座って子供たちと砂遊びを始めた。

「あらあらラバァル、もう子供たちに捕まったのね」明るい声でレクシアが笑いかける。

「よう、レクシア。順調そうだな」ラバァルが立ち上がり、いつもの調子で返す。

「ええ、見ての通りよ」レクシアの笑顔は太陽のように明るい。かつての目の奥にあった厳しさは和らぎ、ヨーデルから来たセティア信仰者たちとの協力で負担が軽減されたのだろう、穏やかな光を放っているように見えた。

子供たちとの時間を過ごし、集会場の様子を確認したラバァルは、執政官庁舎へと向かった。重い鉄板張りのドアを押し開けると、紙の擦れる音や話し声が満ちている。

ラバァルを見つけたハイル副指令が声をかけてきた。「ラバァル! 丁度良いところに。今からアンドレアス将軍の所へ行くのだが、君にも関わる話だ。一緒に来てくれんか」彼の声には、いつもの冷静さに加え、わずかな焦りが見えた。

ラバァルはシュツルムに「少し話を聞いてくる。ここで待っていろ」と言い残し、ハイルと共に将軍の執務室へ向かった。



重々しい木製の扉を開けると、中には既にブレネフ参謀の姿もあり、壁に背を預けて腕組みをしていた。

「おお、ラバァル。良い時に来たな。」ブレネフの声にも、いつもの落ち着きとは違う、僅かな焦りが感じられた。ラバァルは何事かと、大きな執務机の向こうに座るアンドレアス将軍に視線を向けた。

将軍は重い溜息をつき、しかし威厳のある声で言った。「まずは、よく来たな、ラバァル。」


「ハイル副指令がお声掛けくださいましたので。」ラバァルは短く答える。

「そうか。それでだな、なぜ『丁度良い』かと言うと…実は我々は今、かなり厄介な事態に直面しているのだ。」将軍の眉間には深い皺が刻まれていた。

「厄介な事態、ですか?」ラバァルの声に警戒の色が浮かぶ。


「そうだ。端的に言えば、ラガン王国の政治中枢を牛耳る者たちが、元タートス領を管理する我々第一軍の力が拡大することを恐れ暗躍しているのだ。」アンドレアス将軍の声は重い。「先だって、ジュピターを使って我々より先にヨーデルを占領させ、奴らにマーブル新皇国の領地を治めさせたのも、我々の功績を抑え、力の均衡を保とうという連中の画策だった。我々はその意図を汲み、不満はあれど事を荒立てずに引き下がった。そこまでは、わしも受け入れていたのだが…。」将軍はそこで言葉を切り、ブレネフに目配せした。「この続きはブレネフから説明させよう。」

ブレネフは一つ咳払いをし、ラバァルとハイルに向き直った。


「では、将軍のお話を引き継ぎます。まず、ラガン王国の権力構造からご理解いただく必要があるでしょう。」ブレネフは確認するように二人を見渡し、頷きを確認すると、声を潜めつつも明瞭に語り始めた。

「王国で最大の権力者は当然、【ラ・ムーンⅤ世】陛下と王族の方々です。しかし近年、七つの議席からなる評議会議員の力が著しく増大しています。ここルカナンで前執政官であったラ・ムーンⅣ世の次男、エスカバリー殿下が失政の責を問われ、死罪に処されたのも、そしてⅣ世陛下が隠居に追い込まれたのも、有力な評議会議員たちの画策によるものなのです。表向きの罪状は、ロマノス帝国を実質支配するグラティア教が送り込んだ司祭という名の先兵たちの活動を長年放置し、元タートス領民だけでなく、王国軍内部にまでグラティア教徒を蔓延させ、国を危険に晒した、というものですが、これも権力闘争の口実に過ぎなかった。」


ブレネフは机上の地図か書類を指し示す。「そして今回、我々に敵対的な動きを見せているのは、その有力議員の中でも特に我々を敵視する者たちです。**彼らは、順調に復興し始めたルカナンが生み出すであろう有力な商業利権、そして元タートス領の豊かな資源と人を巡る権益を欲している。そのためには、この地を統治する我々第一軍と、その最大の支援者である名門スタード・ベルグ家が邪魔なのです。**その中心人物が、評議会議員筆頭格であるゾンハーグ家当主【エリサ・ゾンハーグ】と、現ラガン王国宰相【アルメドラ】です。彼らが結託し、第二軍のジュピター将軍を駒として使い、アンドレアス将軍の手柄を潰し、勢力拡大を阻止しようとしたのがヨーデルの一件の真相でしょう。将軍はその政治的判断を尊重され、事を起こされなかった。しかし、奴らの狙いはそれだけに留まらなかったのです。」

ラバァルは先を促した。「では、奴らの真の狙いは?」

「…端的に言えば、このルカナンそのものです。」ブレネフは重々しく告げた。「そして、その最大の障害がアンドレアス将軍であり、後ろ盾のスタード・ベルグ家だと見ている。将軍とジョン様を失脚させ、この地を奪う方針なのでしょう。そのために、様々な揺さぶりをかけてきている状況なのです。」

「何だと…!? ルカナンを欲しがっているだと? それは困る! 俺たちはアンドレアス将軍の庇護があるからこそ、ここで何とかやっていけているんだ。別の奴が来て、また全てをぶち壊されたら堪らない!」ラバァルの声には怒りが滲んだ。


「うむ…。」アンドレアス将軍が口を開く。「そして事態をさらに複雑にしたのが、奴らが送り込んできた間者たちのことだ。ラバァル、お前がことごとく始末したそうだな?」将軍の鋭い視線がラバァルを射抜く。

ラバァルは一瞬逡巡したが、隠すことではないと判断した。「…はい。情報が漏れれば、ろくなことにならないと考えました。」

「そうだろうな。だが、奴らにとっては、送り込んだ間者が一人も戻らないという事態が、逆にこのルカナンへの疑念と関心を深めさせる結果となってしまったのだ。」将軍は再び溜息をついた。

「では、俺たちの行動が、将軍にご迷惑を…?」

「いや、それは違う。」将軍は首を振った。「ブレネフも言った通り、奴らの狙いは元よりこのルカナンであり、我ら第一軍とスタード・ベルグ家の力を削ぐことだ。間者の件があろうとなかろうと、遅かれ早かれ、対立は避けられなかっただろう。」

「はい、それは間違いありません。」ブレネフが頷く。「現状をより深く理解していただくために、現在の評議会の勢力図について、もう少し詳しくお話ししましょう。全7議席ありまして、現在の序列と影響力で言えば…」

ブレネフは指を折りながら説明を続けた。


「筆頭は、我々第一軍の後ろ盾でもある【スタード・ベルグ家】。当主はジョン・スタード・ベルグ殿(63)です。王国最強と認識されている我ら第一軍との繋がりから、元タートス領から得られるこれからの利益予測。そして王家から賜った酒や香辛料の独占利権により、長年、議員の中でも最大の力を持つ勢力とみられております。」

「第二位は、【ゾンハーグ家】。当主はエリサ・ゾンハーグ(55)。こちらも老舗の名門で、第二軍のジュピター将軍を支持し、羊毛の独占利権を持っています。さらに、裏では老舗の暗殺団【サギー】とも繋がりがあると言われています。それに、宰相のアルメドラとは親戚関係にあります。これが今回の敵対勢力の中核です。」

「第三位は、近年急速に力を伸ばしてきた新興勢力の一つ【ムーメン家】。当主は若く野心的なモロー・ムーメン(34)。彼らは特定の独占利権こそ持ちませんが、密造酒の流通や闇市への介入など、既存のルールを無視したあくどいやり方で莫大な富を築いています。第五軍のデュランダル将軍を支持しており、裏では暗殺団【アウル】と密接な関係にある、あるいは当主モローとアウルの首領は兄弟だ、などという黒い噂も絶えません。」

「第四位は【ベルトラン家】。当主はローラン・ベルトラン(58)。名門でも新興でもありませんが、長く議席を維持している老獪な家です。ロット・ノットでのライ麦の独占利権を持ち、第四軍のパタロワ将軍を支持しています。」

「第五位は【デュラーン家】。当主はマクシム・ディーラン(46)。こちらも中間の家ですが、その力の源泉は謎に包まれています。現在、名門ベスウォール家から離れた第三軍のヘーゲンス将軍を取り込み支持しています。しかしそれだけではない。ロマノス帝国の悪名高い総合奴隷商【フェドゥスサンギニス】と通じているという不穏な噂があり、当主マクシムの周りには常に得体のしれない護衛がついていると言われます。」ラバァルは眉をひそめた。奴隷商の名は、彼の過去にも関わる響きを持っていた。

「そして…」ブレネフは声を落とした。「かつてはスタード・ベルグ家、ゾンハーグ家と並ぶ三大名門と称された【ベスウォール家】。今は第六位にまで落ちており、見る影もありません。現当主は放蕩息子のアントマーズ・ベスウォール(27)ですが、実権は隠居した元当主**ジョルズ殿(69)**が辛うじて握っている状態でしょう。絹織物とチーズという二つの独占利権は今も持っていますが、かつて支援していた第三軍にも見放され、守ってくれる軍もなく、他の家々、特にムーメン家やデュオール家のようなハイエナに事業を食い荒らされています。」

「最下位、第七位は【デュオール家】。こちらも新興勢力で、当主は**エマーヌ・デュオール(29)**という若い女です。表立った利権はありませんが、新市街の賭博場『シュガーボム』を拠点に、麻薬や売春といった非合法なビジネスで成り上がってきました。傘下には暴力組織『キーウィ』やチンピラ集団『オーメン』を抱え、他家の事業を妨害するなどの汚れ仕事も請け負っているようです。」


ブレネフは息をつき、ラバァルとハイルを見据えた。「…と、まあ、このようにラガン王国の権力中枢は、複雑怪奇な利権と軍閥、そして裏社会の繋がりが絡み合った、魑魅魍魎が跋扈する世界なのです。そして、その中でゾンハーグ家と宰相が、我々とスタード・ベルグ家を排除し、ルカナンを手に入れようと本格的に動き出した。これが現状です。」

説明を聞き終えたハイルは青ざめた顔で呟いた。「なんと……これほどまでに腐敗と陰謀が渦巻いていたとは……。」

ブレネフは重々しく続けた。「そして最大の問題は、今、『ロット・ノット』からアンドレアス将軍に対し、出頭命令が下されたことにあります。首都へ赴けば、おそらく何らかの口実で政治犯収容所サイオンへ投獄される可能性が高い。そうなれば、我々には手が出せなくなります。しかし、出頭を拒否すれば、反逆と見なされ、他の将軍たちを差し向け、武力でルカナンを制圧しに来るでしょう。」ブレネフの声には、打つ手が見つからない焦りが滲んでいた。


事の全貌を理解したラバァルは、重い空気を吸い込み、アンドレアス将軍を真っ直ぐに見据えた。「…では、将軍は黙ってロット・ノットへ行かれるおつもりなのですか?」

「うむ。」将軍は静かに頷いた。「わしは軍人だ。政治的な駆け引きで奴らに対抗する術は持たん。それに、敵前逃亡するような臆病者にはなりたくない。」

「将軍! そんな簡単に決めないでください!」ハイルが声を上げる。「将軍がご不在の間に、奴らがルカナンで事を起こす危険性も十分にあるのですよ!」

「そうなれば、お前たちで対処してくれ。」将軍の意志は固い。「残された時間は少ない。これ以上、返答を遅らせれば、怖気づいたと見なされ、さらに足元を見られることになる。」

このやり取りを聞いていたラバァルの中で、ようやく軌道に乗ったルカナンの復興、レクシアや仲間たちの暮らしが再び脅かされることへの怒りが沸点に達した。彼は低い、しかし抑えきれない怒気を込めて言った。

「…ならば、話は簡単だ。問題の根源である、そのエリサ・ゾンハーグとやら、アルメドラ宰相とやらを、全て消し去れば良いのではないか?」

その直接的すぎる提案に、アンドレアス、ハイル、ブレネフの三人は、揃って険しい表情でラバァルを見た。

「短絡的に考えるな、ラバァル!」アンドレアス将軍が厳しく諌めた。「今回、敵対している者たちも、ラガン王国の重要な構成員なのだ。彼らがいればこその国でもある。彼らを排除するというのなら、お前が彼らに成り代わり、彼らが担っていた役割を果たせるだけの器量と覚悟を示さねばならん。そうでなければ、単に国の力を弱め、他国からの侵攻を招くだけだ。」

「将軍の仰る通りだ、ラバァル。よく考えろ。」ハイルも続いた。

「そうだ。」ブレネフも言葉を添える。「力だけで国は治められん。人々を導き、まとめ上げ、自ずと協力者が集まるような…そういう指導力、政治的な力が不可欠なのだ。」

アンドレアス将軍は、ラバァルを真っ直ぐに見据え、熱を込めて言った。

「ラバァルよ。お前が政治の力を身につければ、この状況を打破できるかもしれん。わしと共にロット・ノットへ来い。そして首都で、お前自身の力で政治的な地歩を築いてみせよ。…いつの日か、我らを率いる存在になってみせよ!」

将軍の言葉には、ラバァルに対する深い期待が込められていた。ハイルとブレネフも、まるで示し合わせたかのように、力強く頷いた。

「まさにそうだ、ラバァル。」ハイルが言う。「この問題を真の意味で解決できる可能性があるとしたら、それはお前かもしれん。お前が我らを導き、ラガン王国の力となるのだ。お前が、今のルカナンでの暮らしに収まるような器ではないと、わしも以前から感じていた。」

突然向けられた重すぎる期待に、ラバァルは低く呟いた。「政治、か…。魑魅魍魎が跋扈する、未知の世界だ。だが、ここで燻っていても、この問題は解決しない。もっと大きな…人を動かすための新たな力が要る、ということか……。」

その日は、重い課題を抱えたまま、ラバァルは自らの拠点へと戻った。

翌朝早く、執政官庁舎からの使者が地下基地の鉄扉を叩いた。届けられたのは、赤い封蝋で封じられた書状。内容は、明日、アンドレアス将軍と共に首都ロット・ノットへ出発するよう命じる、正式な要請だった。これを受け取ったラバァルは、これが長期の不在になることを覚悟した。彼はすぐに仲間たちを集め、今後の大まかな方針と、状況に応じた各自の判断で行動するよう指示を与えておく、そして最後に逃げても構わんから死なないようにしろと命じた。

そして遅くなったが、レクシアたちの元へも赴き、首都へ行くことを告げた。あっと言う間にその日が終わり。

翌日。まだ冷気の残る早朝、ラバァルは、アンドレアス将軍と、彼に付き従う僅かな護衛兵と共に、首都『ロット・ノット』へと旅立った。ルカナンからロット・ノットまでは、南へ360キロメートル、さらに西へ1100キロメートルという長大な距離だ。重装備の将軍一行が乗る馬の蹄の音だけが響く、埃っぽい道を辿る、およそ一ヶ月近くにも及ぶであろう長い旅が始まった。






最後まで読んで下さりありがとう、引き続き次話を見掛けたらよんでみてください。

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