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生贄の迷宮 その5

ヨトォンを一人で追い掛けたラバァル、後ろを振り向かず一心に逃げに徹した

ヨトォンに中々追い付くことが出来ず、PTの者達とはかなり離れた場所まで追いかける羽目に・・・   



               その65




その頃、ラバァルはヨトゥンを追って、仲間たちから遠く離れた地点まで来ていた。「あの怪物を確実に仕留めておかねば、後々面倒なことになる」――その一心で深追いした結果だった。

ヨトゥンは僅かな隙を突いてラバァルとの距離を開けると、完全に逃げに徹していた。その巨体からは想像もつかない俊敏さで迷宮の奥深くへと逃げ続けるため、神速の力を得たラバァルといえども、なかなか追いつくことができず、かなりの距離を追走する羽目になっていた。

しかし、執拗な追跡の末、ようやく遠距離攻撃が届く間合いまで詰めることができた。

「逃がすかよ!」

ラバァルは、必死に逃げるヨトゥンの背中に向け、練り上げた《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》を鋭利なランス状に変化させ、力強く投擲した!

赤黒い闘気のランスは、唸りを上げてヨトゥンへと猛追し、その巨大な右太ももに深々と突き刺さった!

『グギャアアッ!!』

悲鳴と共に、ヨトゥンは逃走の勢いのままバランスを崩し、地面を激しく転がりながら倒れ込んだ。速度がガクンと落ちる。

すぐさま追いついたラバァルは、負傷し苦痛に喘ぐヨトゥンの前に仁王立ちとなり、冷徹な視線で睨みつけ。

「この野郎……手間かけさせやがって」

ラバァルは吐き捨てると、今度こそ止めを刺すべく、全身の《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》の濃度を高め、ヨトゥンの頭部を粉砕しようと力を集中させた、まさにその瞬間だった!

ヒュゥゥゥゥン……!

ガシャン!!

ドッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!

予期せぬ方向から、強大なエネルギー波が飛来し、ラバァルに直撃!

攻撃の瞬間、闘気の大部分を「ランス」として放出し、さらに残りを「止めの一撃」に集中させていたため、ラバァルの防御は手薄になっていた。エネルギー波は、薄くなった赤黒闘気のバリアを貫通し、ラバァルの肉体に深刻なダメージを与えたのだ!

「ぐっ……!? なんだ、今の……!?」

吹き飛ばされた衝撃で、地面には深く巨大なクレーターができている。凄まじい威力だ。

だが、ダメージを受けたそばから、《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》が急速にラバァルの肉体を修復していく。体からは白い蒸気が勢いよく噴き出し、まるで沸騰しているかのようだ。

ラバァルは、ゆらりと立ち上がると、クレーターの底から軽々と跳躍し、迷宮の固い地面に着地した。そして、すぐさま周囲の気配を探る。一体、どこから攻撃が?

危険を知らせる直感が、新たな脅威の存在を捉えた瞬間――ラバァルの全身に、これまで感じたことのないほどの強烈な悪寒が走った!

「……やべぇ……! なんだ、こいつは……!?」

全身の闘気を最大まで引き上げ、臨戦態勢を取る。目の前にいるのは、ヨトゥンとは比較にならない、桁違いの危険な存在だ。

ラバァルに察知されたことに気づいたのか、その「何か」は、隠れる素振りも見せず、あっさりと闇の中から姿を現した。

それは、ヨトゥンより二回りほど小さい、屈強な人間の男に近い体躯をしていた。人間と同じく二本の腕と二本の脚を持ち、その手にはグレイブ(長柄の斧槍)が握られている。しかし、武装しているにも関わらず、戦闘態勢は取っておらず、グレイブを無造作に右肩に担ぎ、どこか余裕のある態度で立っていた。

その姿に、ラバァルは侮られていると感じ、内心で怒りの炎が燃え上がらせている。

(この野郎……舐めやがって……!)

だが、最も異様なのは、その頭部だった。人の頭があるべき場所には、まるで小型の太陽そのもののような、眩い光球が鎮座していたのだ! その頭部は、絶えず核融合反応を繰り返しているかのように、強烈な光と熱を周囲一体に放射している。地下深くの迷宮とは思えないほど空間は明るく照らされていたが、それはもはや「明るい」というレベルを超えていた。常人ならば、その眩しさに目を開けていることすらできず、その姿を直視することなど不可能だろう。

ラバァルは、目で直接見るのではなく、全身を覆う《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》をフィルター代わりにして、辛うじてその姿を捉えていた。じっくり観察すると、太陽のような頭部の外郭部分は、中心部よりも温度が低いのか、やや暗く見え、まるで黒い輪郭のようになっている。

そして、その「太陽頭」が放つ放射熱は凄まじく、周囲の温度はコンマ一秒単位で急上昇していた。もし仲間たちがここにいたら、この熱気に耐えきれず、あっという間に焼け爛れ、灰と化してしまっていただろう。ラバァル自身が灰になっていないのは、この赤黒闘気が身を守っているからに他ならない。

ラバァルが思考を巡らせている間にも、周囲の岩盤は熱で融解し始め、どろりとしたマグマへと変わり、天井からさえもマグマの雫がぽたぽたと滴り落ち始めていた。

「なんて奴だ……! 何もしていないのに、周囲の岩がマグマに変わっていくぞ……!」

ラバァルは、ヨトゥンを遥かに凌駕するであろう怪物の出現に、焦りを感じずにはいられなかった。

その時、太陽頭の男の斜め後ろから、先ほどまで必死に逃げていたはずのヨトゥンが、まるで怯えた子犬のように地面に身を伏せ、小さく唸りながら顔を覗かせた。すると、太陽頭の男は「キュルルルルル……キュ〜ピッ」と、人間には理解不能な奇妙な音を発しながら、ヨトゥンの頭を優しく撫でたのだ。

(……こいつが、ヨトゥンの主人だというのか……!)

ラバァルは状況を悟った。

ヨトゥンの強さは、神の力を一部とはいえ扱えるようになった今のラバァルから見ても、相当なものだった。しかし、その力を使いこなし始めた今の自分ならば、単体であれば問題なく対処できる自信が持てるまでになって来ている。

だが、ヨトゥン級の怪物を、しかもその「主人」と思われるさらに上位の存在と同時に相手取るとなれば、話は全く違ってくる。勝てるかどうかも分からない。勝てたとしても、熾烈な消耗戦になることは必至だろう。しかも、あの様子から察するに、太陽頭の男の実力は、ヨトゥンとは比較にならないレベルである可能性が高い。状況は、最悪と言ってよかった。

「……はっ、まんまと誘い込まれたってわけか。完全に形勢逆転しちまってるようだな」

ここまでヨトゥンを追ってきたラバァルの口から、自嘲気味な言葉が漏れる。力を手に入れたことで、油断があったのかもしれない。

だが、感傷に浸っている暇はなかった。もはや逃走は不可能。太陽頭の男が、動いたのだ。それに呼応するように、ヨトゥンも低い姿勢から、いつでもラバァルに飛びかかれる体勢で身構えている。

(あの野郎、この俺をおびき寄せるためここまで誘い込みやがってのか……! ちっ、力を手に入れたからって、調子に乗りすぎてたぜ……!)

先に仕掛けてきたのは、太陽頭の男だった。肩に担いでいたグレイブを振り上げると、瞬間移動したかのような速度でラバァルに急接近し、その鋭い刃を薙ぎ払ってきた!

動き出す気配は察知していたラバァルだったが、先ほどの不意打ちによるダメージが完全に回復しきれていなかったためか、反応がわずかに遅れた。その猛烈な速度に対応しきれず、あっという間に間合いを詰められる。気づいた時には、グレイブの刃はもう眼前に迫っていた!

今からでは攻撃範囲外への回避は間に合わない。ラバァルは咄嗟に、全身の《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》を左腕に集中させ、その攻撃を腕で受け止めることを選択した!

バァァァァァァァァァァァン!!! ギシッ! バキィィッ!! ビリビリッ!!

グレイブの刃が、高密度に圧縮された赤黒闘気に接触した瞬間、凄まじいエネルギーの衝突が発生した。二つの強大な力が激しく反発し合い、周囲に衝撃波と閃光を撒き散らす。それでも太陽頭の男は、まるで意に介さないかのように、平然とさらに力を込めてグレイブを押し込んでくる!

刃先は、赤黒闘気の防御をこじ開けながら、ついにラバァルの左腕の肉にまで到達し、骨を軋ませるほどの激痛が走った!

「ぐぅっ……!」

だが、ラバァルは常人ならば発狂しかねない激痛を受けながらも、怯まなかった。一万年を超える幽閉地獄の中で、アンラ・マンユによって与えられた想像を絶する苦痛に耐え抜いた経験が、彼の精神と肉体に、人間離れした恐るべき耐性を刻み込んでいたのだ。

赤黒闘気が威力の大部分を削いでくれたおかげで、腕が千切れるには至らなかった。傷口からは赤黒い闘気が噴き出し、瞬時に傷を塞ぎ、急速な再生を開始する。

だが、その隙をヨトゥンが見逃すはずはなかった。再生を開始したラバァルに対し、ヨトゥンの太い腕が横から伸びてきて、その巨大な拳がラバァルの脇腹を思い切り殴りつけた!

「ぬぉぉぉっ……!」

強烈な打撃を受け、ラバァルは再び遠くまで吹き飛ばされてしまった。

勢いが殺された地点で、ラバァルはのそりと身を起こす。しかし、相手もラバァルがこの程度で死ぬなどとは思っていない。即座に追撃を仕掛けてきた。

「くそっ! 調子に乗るんじゃねぇぞ、テメェら!」

ラバァルも怒りを爆発させ、全力で応戦する。太陽頭の男が振り下ろしてくるグレイブに対し、ラバァルは圧縮・高密度化させた《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》を巨大な漆黒の大剣へと変化させ、それを受け止めた! 激しい金属音と共にグレイブの攻撃を弾き返すと、返す刀で、太陽頭の男の胴体を真横に薙ぎ払う!

(よしっ!)

確かな手応えに、ラバァルは内心でガッツポーズを決めた。だが、休む間はない。次に来るであろうヨトゥンの動きを既に予測していた。予想通り、太陽頭の男が怯んだ隙を突いて、ヨトゥンが巨体を躍らせて飛びかかって来る!

「させるか、ボケェ!!」

ラバァルは咆哮すると、赤黒い闘気の大剣を、跳躍してきたヨトゥンめがけて振り下ろす!

大剣はヨトゥンの頭部から股下までを、まるで巨大な丸太を割るかのように、一刀両断にした!

ラバァルが着地すると同時、ヨトゥンの巨体も地面に落下し、バサッと音を立てて左右真っ二つに分かれた。夥しい量の青い血が噴き出し、あっという間に辺りを血の海に変える。

長きにわたり、この迷宮の深部で成長を続けてきたであろう伝説の神獣ヨトゥンは、この瞬間、その活動を完全に終えたのだ。

倒されたヨトゥンの体からは、莫大な量の〖魂力〗――930万――が輝きながら抜け出し、それを倒したラバァルの体へと吸い込まれていく。だが、ラバァル自身は魂力の吸収には気づかず、目の前の現実に意識を集中させていた。二つに割れ、ピクリとも動かなくなったヨトゥンの亡骸を確認し、ラバァルは感情を爆発させると。


「どうだぁっ! この野郎! 手間かけさせやがってぇぇぇぇ!!」


獣のような咆哮を上げ、剥き出しの感情と共に勝利を叫ぶ。かつての冷静沈着なラバァルからは想像もつかない、荒々しい姿だった。アンラ・マンユとの魂の融合が、彼の内に眠る本能的な部分を呼び覚ましているのかもしれない。

しかし、勝利の余韻に浸る間もなく、信じられない光景がラバァルの目に飛び込んできた。先ほど、確かに胴体を真っ二つにしたはずの太陽頭の男が、何事もなかったかのように再生し、平然と立っていたのだ! そして、勝利を確信し油断したラバァルに向け、再びグレイブを振るってきた!

(なっ……!?)

勝利宣言をした直後の不意打ち! それでもラバァルは、反射的に防御行動に移る。

だが、ほんの一瞬、反応が遅れた。グレイブの刃は、ラバァルの右肩に深々と食い込み、そのまま振り抜かれた!

ザシュッ!

鈍い音と共に、ラバァルの右腕が肩から切断され、宙を舞う。さらに、太陽頭の男は、頭部中央付近から一条の眩い粒子砲を放ち、切断され落下していくラバァルの右腕を、跡形もなく消滅させてしまったのだ!

「くっ……!」

右腕を失うという深刻なダメージ。それでもラバァルは体勢を崩さず、敵を睨み据える。もはや一時たりとも、この怪物から目を離すことはできない。

彼は残った左腕に意識を集中させ、《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》を高密度に圧縮し、鋭利な剣へと変化させた。片腕だけで、この化物を迎え撃つしかない。

「この野郎……なぜ死なん……!?」

ラバァルの問いかけに、太陽頭の男が反応を示すことはない。言葉が通じないのか、あるいは通じるが答える気がないのか。ただ、凄まじいスピードと破壊的な【力】をもって、再び滅茶苦茶な攻撃を開始した。

ラバァルは、左腕の闘気の剣でその猛攻を必死に弾き、捌きながら、反撃の機会を窺う。そして、一瞬の隙を突いて懐に飛び込み、左腕の剣を太陽頭の男の腹部へと深々と突き刺した! さらに、突き刺した状態で闘気のエネルギーを流し込み、内部から爆破する!

ギギギギギギギギッ!! バチバチバチッ!!

激しい火花が飛び散り、反発し合うエネルギーが激しく弾け合う!

「……やった、か……?」

今度こそ仕留めたかと思われた。太陽頭の男の動きが、一瞬止まったのだ。

だが、それも束の間。数秒後には、またしても何事もなかったかのように再生し、攻撃を再開してきたのだ!

「……不死身……だとでも言うのか……!?」

ラバァルは愕然とした。

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

それから、どれほどの時間が経過しただろうか。

延々と続く、終わりなき戦い。

何度斬り裂いても、何度突き刺しても、何度爆破しても、太陽頭の男は即座に再生し、攻撃の手を緩めない。

ラバァルも、さすがに疲労の色が濃くなっていた。

(……くそっ、こんな攻撃をいくら繰り返しても無駄だ……! 何か、別の……奴の核を破壊する方法を見つけなければ……!)

しかし、具体的に何をすれば決定的なダメージを与えられるのか、皆目見当がつかない。それでも攻撃を繰り返し、敵の反応を探るしかない。彼の驚異的なタフネスと、闘気による回復力だけが、この絶望的な戦いを支えていた。

その時だった。

「ギョォンワァァァァァァァァァーーーーーッ!!」

偶然だった。本当に、ただの偶然。ラバァルが振るった闘気の剣が、太陽頭の男の弱点と思われる箇所――頭部の太陽の中心、青白く最も高熱で輝いている一点――を、ほんの僅かに掠めたのだ。

その瞬間、太陽頭の男の様子が劇的に変化した! 全身をブルブルと激しく震わせ、頭が割れんばかりの金切り声を上げ始めたのだ!

そして次の瞬間、その体躯が急速に膨張し、巨大化していく!

狂乱状態に陥った太陽頭の巨人は、もはやラバァルだけを狙うのではなく、その壊滅的な【力】を使い、周囲一帯を無差別に破壊し始めた! グレイブを振り回し、粒子砲を乱射し、足元のマグマを噴き上がらせる。その破壊力は凄まじく、見る間もなく周囲の地形は変貌し、巨大なクレーターがいくつも生まれ、新たに生成されたマグマが滝のように流れ落ちていく。

先ほどよりもさらに二回りは巨大化した太陽頭の巨人の滅茶苦茶な攻撃は、もはやラバァルの反応速度すら上回る速さで繰り出され、手当たり次第に辺りを破壊し尽くす。その広範囲な攻撃から逃れようとするラバァルにも、しばしば攻撃の余波が及び、深刻なダメージが蓄積していく。もはやまともに戦うことすら困難な状況に追い込まれていた。

だが、絶望的な状況の中にあっても、ラバァルの思考はクリアだった。先ほどの敵の反応から、確信を得ていたのだ。

(……間違いない。奴の弱点は、あの頭の中心部……一番温度が高く、輝いているあの箇所だ! あの核に、俺の最大の【力】を叩き込むことができれば……必ず、仕留められる!)

しかし、そのためには、残された全ての力を注ぎ込む必要がある。これまで受けたダメージは、《赤黒闘気(ゼメス・アフェフ・チャマ)》による常時回復をもってしても、回復速度を上回るペースで蓄積していた。先ほどヨトゥンから吸収した莫大な〖魂力〗も、本来ならば異空間に存在するアンラ・マンユとの魂の海に注がれるはずだったが、その大部分がラバァル自身の回復のために激しく消費されてしまっていた。

それでも、まだ残っている。ヨトゥンと、そしてこれまでの戦いで吸収してきたであろう莫大な〖魂力〗が。これを全て使い切り、あの核へと叩き込む。それ以外に、この化物を倒す術はない。

そう答えを出したラバァルに、もはや躊躇いはなかった。彼は、ふらつく足で、しかし確かな一歩を前へと踏み出す。

「はぁ……はぁ……はぁ……! うぜぇ……! 絶対に……倒してやる……!」

ラバァルは荒い息をつきながら、天を仰ぐようにして叫んだ。

「今こそ力を貸せ、アンラ・マンユさんよぉ! 目の前の狂った化物を、完全に破壊し尽くしてやるからよぉっ!!」

その言葉に応えるかのように、ラバァルの体内から、残された全ての〖魂力〗と〖力〗が、赤黒い闘気となって溢れ出した!

彼はその全ての闘気を練り上げ、自身の全身を覆う巨大なランス状へと変化させた。そして、その赤黒い巨大なランスの先端を鋭く尖らせると、高速で回転させ、まるで巨大なドリルと化す!

目標はただ一つ、狂乱し破壊の限りを尽くす太陽頭の巨人の、頭部中心核!

ラバァルは、自身が巨大な赤黒いドリルランスと化し、一直線に巨人へと突撃した! 凄まじい速度で繰り出される巨人の無差別攻撃を、最小限の動きで掻い潜り、ついにその頭部へと到達する!

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!

赤黒いドリルランスは、太陽頭の巨人の最も硬く、最も輝く頭部中心核を、真正面から衝突!


すると、凄まじい衝撃とバチバチとエネルギーのぶつかり合いで生じる金色の液体の様な光と赤黒い液体の様な光が火花の様に周囲に散乱しながら地面に落ち、暫くの間{約3.2秒間}のせめぎ合いを繰り広げていた、しかしドリル状に回転しながら圧力を掛け続けるランス状のゼメス・アフェフ・チャマが、じわじわ奥へとねじり込まれて行き、ぶつかり合いが始まって3.2秒後、とうとう太陽頭の核が破砕、そのまま貫かれた太陽頭の巨人は、ピタリと全ての動きを止めた。そして、全身をブルブルと小刻みに震わせ始めると、頭部以外の、首から下の部分が、まるで脆い陶器のようにヒビ割れ、ボロボロと崩壊し始めたのだ……。

その割れた内部からは、光り輝く粘性の高いマグマのような物質が、どろどろと流れ出してくる。

赤黒いランス状態を解いたラバァルは、貫いた敵の頭部を見据えた。そこには、まるでボールに大きな穴が穿たれ、その向こう側が見えているかのような、光景が広がっていた。


頭部こそが、その巨体を維持する力の源だったのだろう。核を砕かれたことで、胴体を形成していた光り輝くトロトロマグマの物質は、形を保てなくなり、次々と地面に零れ落ちていく。そして、地面に落ちたマグマは急速に冷却され、熱量を失い、やがてこの世界から完全に消滅していった。

太陽頭の怪物を形成していた物質が全て消え去ると、それが存在していた場所に、ひときわ強大な〖魂力〗――1969万――が出現。それは、ヨトゥンの魂力と同様に、ラバァルとアンラ・マンユの魂が混ざり合う、魂の海へと静かに吸い込まれていく。

「……なんとか……やった……か……」

激闘の終焉を確認したラバァルは、安堵の息を漏らした。だが、彼の限界もまた、訪れていた。

フラッ……

全身の力を使い果たしたラバァルの体は、もはや立っていることすらできず、そのまま意識を失い、眼下に広がる灼熱のマグマの中へと、ゆっくりと落下していった……。



最後まで読んで下さりありがとう、また見かけたらクリックして見て下さい。

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