生贄の迷宮 その1
ようやく生贄の迷宮に入れる事に成ったラバァルたちは、
内部に入り、怪物たちを倒しながら下層へと進んで行く、すると・・・
その61
嬉しさのあまり放心しているマルティーナに、ベラクレスが優しく声をかけた。
「行きましょう、マルティーナ様」
ラバァルに続きベラクレスも促す。どうやら一行の間では、マルティーナ達のパーティー復帰は当然のこと、という空気が醸成されつつあるようだ。本人のあずかり知らぬところで、あるいは少し強引に、物事は進んでいく。
迷宮の入り口をくぐると、国家魔術師のラージンが詠唱を始めた。彼の手から放たれた魔力が集束し、迷宮内を照らす光源を生み出す。
【明球】中×2
子供の頭ほどの大きさの光球が二つ、ふわりと宙に浮かび上がり、ダンジョンの闇を柔らかな光で満たし始めた。
Aランクの冒険者たちは、各々が暗視の術を使ったり、自身の周囲だけを照らす小規模な魔法で視界を確保したりしていたが、ラージンが生み出した光球の規模と輝きの強さには目を見張った。
「さすがは国家専属の魔術師だ。これほどの魔力量、並ではないな」
誰かが感嘆の声を漏らす。
視界が確保されたことで、探索は格段に進めやすくなった。一行は順調に迷宮の奥へと足を進める。
地下1階では、特筆すべき敵は現れなかった。時折、骨ばかりの貧弱なスケルトンや、小柄なコボルドがどこからか湧いてくる程度で、いずれも熟練の冒険者たちにとっては取るに足らない存在だった。
見つけた階段を降り、地下2階へ。ここも1階とさほど様子は変わらない。この階層で最も手強そうに見えたジャイアントスパイダーですら、防御力は低く、ここにいるメンバーであれば一人でも容易に仕留められるレベルの魔物でしかなかった。
初めて迷宮に足を踏み入れた者たちは、事前に聞かされていた迷宮の危険度とのギャップに、やや拍子抜けした様子を見せていた。「迷宮の魔物とは、この程度のものなのか?」と。
そんな油断にも似た空気を纏ったまま、一行は探索を続け、地下3階へと続く階段を降りていった。
この階層で最初に遭遇したのは、グールだった。その不気味な姿と共に、ラバァルから「麻痺性の毒を持つ厄介な相手だ」と説明が入る。一体や二体であれば問題ないが、今回は違った。一体、また一体と現れ、瞬く間にその数は膨れ上がり、気づけば10体、20体、30体…ついには50体を超えるグールの群れが一行を取り囲んでいた。
さすがに数が多く、誰もが本格的に武器を構え、連携を取りながら殲滅戦へと移行する。
激しい戦闘の後、グールの死骸が散らばるフロアで、ラバァルが大声で確認した。
「負傷した者はいるか!」
幸い、負傷者はいないようだ。ラバァルは頷く。
「ふむ、この程度の相手なら問題ないか」
そう言うと、ラバァルは再び前進を指示した。地下3階では、敵を発見次第、即座に殲滅するという方針で進んでいく。おそらくこの階層にはもう敵は残っていないだろうと思えるほど徹底的に掃討した後、一行は30分ほどの短い休憩を取り、地下4階への階段へと向かった。
地下4階へ続く階段を降りると、そこは今までの階層とは明らかに空気が異なっていた。淀んだ瘴気が濃密に充満し、空気を重くしている。並の精神力では、この瘴気に当てられるだけで意識を失ってしまうだろう。肌を刺すような邪悪な気配が漂っていた。
「やっと迷宮らしい雰囲気になってきたわね」
ジュリアンがどこか楽しげに呟くと、隣にいたニコルが不思議そうに尋ねた。
「お姉さん、ウキウキしてるの?」
「そうね、面白いじゃない。誰も足を踏み入れなくなった危険度S指定のダンジョンに、今、私たちが挑んでいるのよ。坊やにはまだ少し早いかもしれないけど、ゾクゾクしちゃうわ♪」
ジュリアンの言葉の意味を、ニコルは完全には理解できなかった。だが、その会話を聞いていた他の者たちの反応は様々だった。マルティーナは頬を赤らめ、ちらりとラバァルの横顔を盗み見る。アスタリオンは面白そうに口元を歪め、学者のノベルは「不謹慎ですよ」とでも言うようにジュリアンにイエローカードを出す仕草を見せた。
束の間のやり取りの後、再び緊張感が戻る。一行が進むにつれ、姿は見えないながらも、禍々しい気を発する何者かの存在を、熟練者たちは肌で感じ取り始めていた。
ラーバンナーが短く呟く。
「ラバァル」
「ああ、いるな」
ラバァルも即座に応じる。手練れたちも、感知能力の高い者から順に、その不穏な気配に気づき始めていた。
ラバァルが鋭く制止の声を上げた。
「待て、敵だ!」
まだ気配を察知できていない者たちが、戸惑いの声を上げる。
「どこだ? 何も見えないぞ!」
「動くな! 分からない者は自分の身を守ることに専念しろ!」
ラバァルの指示が飛んだ、その瞬間。
シャッ!
影の中から突如として何かが現れ、隊列の前にいたリバックに襲いかかった。リバックは気配を察知すると同時に、条件反射のようにタワーシールドを前面に構える。
直後、「ドスッ」という鈍い衝撃音が響き、タワーシールドが何か硬いものを受け止めたことを示した。
間髪入れず、ジュリアンがリバックの横を駆け抜け、まだ姿の見えない敵に向かって飛びかかった。振り抜かれた手斧が一閃し、何かの首が宙を舞い、コロンと音を立てて地面に転がった。
その瞬間、透明化が解け、異形の化け物の首が切り落とされたのだと判明する。
「おお、やったぞ!」
誰かが歓声を上げたが、それは束の間の安堵に過ぎなかった。
次の瞬間、同じような気配を持つ敵が、複数同時に、四方八方から襲いかかってきたのだ!
パーティーは瞬時に混戦状態となり、各々が自身の戦闘技能を駆使して応戦せざるを得なくなった。
ラバァルの元にも一体が音もなく迫る。ラバァルは迫りくる敵の攻撃を冷静に見切り、体捌きで回避すると同時に、素早く手刀を数発打ち込み、敵を地面に叩き伏せた。そして間髪入れずに懐から短剣を引き抜き、倒れた敵の額に深々と突き立てる。
とどめを刺された敵の姿から、もやのような透明化の術が解けていく。現れたのは、蒼白い肌を持つ吸血鬼――バンパイアだった。
しかも、透明化の能力に加え、風のように素早い動き。地下3階までの魔物とは比較にならない、格段に危険な相手だと誰もが理解した。
「こいつらの能力、先ほどの階の奴らとは雲泥の差だ! どうなっておるのじゃ!」
どこかから悲鳴に近い声が上がる。だが、文句を言っている暇はない。このバンパイアは、Aランク冒険者でなければまともに渡り合えないレベルの敵だ。当然、同行しているマーブル国の兵士やB級冒険者たちにとっては荷が重すぎる。ラバァルは即座に状況を判断し、援護に回る必要性を感じた。
「ラーバンナー、ニコルを頼む!」
「分かってる!」
ラーバンナーが力強く応じる。
「エルトン、Bランクの連中を援護してやってくれ!」
「了解!」
エルトンも即座に駆け出す。
ラバァルは一瞬、マルティーナたちの様子を確認する。シャナとオクターブが、彼女をしっかりと守るように陣形を組んでいる。問題ないと判断すると、ラバァルは戦闘に不慣れなマーブル兵たちが苦戦している箇所へと駆けつけた。
しばらく激しい戦闘が続いた後、ようやく周囲に見える範囲の敵を殲滅することができた。アスタリオンが額の汗を拭いながら、やれやれといった様子で呟く。
「やれやれ、地下4階でこれかよ……先が思いやられるな」
Bランク冒険者の一人、ソドンも息を整えながら言う。
「あらかた片付いた……ようだな」
リバックが、先ほど共に戦ったジュリアンと連れ立ってラバァルの元へ歩み寄ってきた。
「よう、そっちは無事か?」
「ああ、問題ない」
ラバァルは短く答える。
ラバァルは全員を集合させ、負傷者の有無を確認するよう指示した。
「負傷者はいるか? 些細な傷でも報告しろ!」
すると、Aランク冒険者の一人、双剣使いのテリアルが、大量の冷や汗をかきながら進み出た。彼はバンパイアの爪による引っ掻き傷を負ったことを告げた。見ると、傷口を中心に腕の血管が黒く変色し、不気味に浮き上がっている。触れずとも分かるほどの発熱もあり、明らかに単なる傷ではない。
近くにいたノベルが険しい顔で診る。
「これは……毒ではありませんね。呪いの類です。バンパイアが持つ呪詛を、傷口から擦り付けられたのでしょう」
ノベルの説明を受け、ラバァルは回復系の魔法を使える者たちに視線を向けた。
「誰か、この呪いを解ける者はいないか?」
回復魔法を多少心得ている戦士のジュリアンや、クレリックでもあるボウガンナーのアンバーに治療の可否を尋ねる。アンバーはテリアルの腕を慎重に観察した後、首を横に振った。
「これは通常の治癒魔法では対処できません。呪いに侵された者の血が体内に入り込んでいるようです。これを浄化するには、祝福系の祈りの中でも、より高位の力が必要です。私程度の技量では、効果は期待できないでしょう」
アンバーの言葉に、周囲に重い沈黙が流れる。その時だった。これまで心配そうに様子を見守っていたマルティーナが、おずおずと前に進み出た。
「ん? どうした、王女」
ラバァルが少し意外そうな顔で問いかける。
「いえ、その……もしよろしければ、その方を、私が回復してみましょうか?」
マルティーナの申し出に、ラバァルは驚きを隠せない。
「できるのか!?」
「確実とは申し上げられません。セティア様の加護の祈りを、人に対して直接用いた経験がないのです。動物に対しては、いくつかの祈りを試したことがあり、その際は確かに効果がありました。女神セティア様の加護の祈りの言葉は、書物を通じて一通り記憶しております」
「加護の言葉を記憶、か……」ラバァルは少し考え込む。「うーむ、正直、心許ない気もするが……今は他に手立てもない。まあ、やるだけやってみてくれ」
「はい、では」
マルティーナは静かに頷くと、苦悶の表情を浮かべるテリアルの傍らに膝をついた。目を閉じ、静かに祈りの言葉を紡ぎ始める。
〖浄化〗
マルティーナが凛とした声で詠唱を終えると、テリアルの黒く変色した腕が、淡い、清浄な光に包まれた。白い蒸気のようなものが傷口から立ち上り、黒ずんだ血管は見る見るうちに元の色を取り戻していく。まるで穢れが洗い流されるかのように、呪いの兆候が消え去っていく。
その様子を確かめたマルティーナは、間髪入れずに次の詠唱に移る。
〖癒〗
すると今度は、バンパイアの爪によって裂かれた傷口そのものが、柔らかな光の中で急速に塞がっていく。痛々しい傷跡はみるみるうちに薄れ、やがて完全に消え去った。
テリアルは自身の腕を信じられないといった表情で見つめ、驚きの声を上げる。
「おお……! 痛みが和らいだ……! 腕を締め付けられていたような感覚も消えていく……! なんてことだ、傷まで完全に塞がったぞ!」
その奇跡的な光景を目の当たりにした冒険者たちは、皆、言葉を失い、そして次の瞬間、感嘆の声を上げた。
「毒と呪いを同時に浄化してしまった……!? まさに女神の御力だ!」
「もしや、マルティーナ様は女神の化身なのではないか!」
「こんな治癒、見たことも聞いたこともないぞ! 俺たちは、とんでもない方と一緒に冒険していたのかもしれん!」
わあっ、わあっ、と周囲から称賛の声が上がる。マルティーナ王女への評価は、この一件でうなぎ登りに高まり始めている。ラバァルでさえ、その驚異的な能力を目の当たりにし、マルティーナに対する見方を改め始めているのが表情から窺えた。
そんなラバァルの変化に気づいたマルティーナは、安堵と喜びの入り混じった表情で、改めてラバァルに向き直った。
「ラバァル様、先日は私の我がままをお許しいただき、そして、こうしてパーティーに貢献する機会をお与えくださり、本当に感謝しております。どうか、このまま私たちを、ラバァル様のお傍に居させてください」
真摯なマルティーナの言葉に、その場にいた全員が固唾を飲んでラバァルの返答を待った。
ラバァルはしばしマルティーナを見つめた後、ふっと息を吐いた。
「うむ……まあ、見事な働きだった。これほどの高位回復術を使える者は、このパーティーにとって不可欠だ。君が必要であることは、疑いようもない」
「では、正式にお許しくださると?」
マルティーナの瞳が期待に輝く。
するとラバァルは、マルティーナの後ろに控えるオクターブとシャナに視線を移し、少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。
「まあ、コブが二つくっ付いてくるのは、正直、まだ気に食わないが……君の活躍に免じて、今回は大目に見よう。ただし、そちらの二人の立場は、まだ正式なメンバーとは認めん。あくまでも『王女のおまけ』としての参加だ。いいな!」
ラバァルの言葉に、マルティーナは満面の笑みを浮かべた。たとえ護衛の二人がまだ「おまけ」扱いだとしても、自身が認められ、共にいることを許されたことが、彼女にとっては大きな喜びだった。
「はい! 感謝いたします、ラバァル様!」
そのやり取りを見ていた他のメンバーたちは、顔を見合わせ、ひそひそと囁き合った。
「おいおい、これって、あれだな」
「ああ、間違いなく、あれだろ」
彼らが何を言っているのか、ラバァルはあえて聞かなかった。
総勢27名という大所帯のアライアンス。当初はぎこちなさもあったが、皆も段々とパーティー内での自身の立ち位置や役割に慣れてきていた。ここまで一人の脱落者も出さずに進んでこられたのは、幸運と、そして各々の実力があってこそだろう。
しかし、その勢いのまま地下5階に足を踏み入れると、状況は一変した。これまでの階層とは比較にならないほどランクの高い魔物が、次から次へと容赦なく襲いかかってきたのだ。一行は前進することすらままならなくなってしまった。
激しい戦闘の後、ある冒険者が肩で息をしながら報告する。
「今のはミノタウロスと、ワータイガーの混成部隊だった……! かなり手強い個体もいたぞ。俺の鋼のバスタードソードが、ついに折れてしまった……」
別の者も続く。
「まずいな。連戦に次ぐ連戦で、皆の武器がかなり消耗している。このままではジリ貧だ」
「一度、迷宮から撤退すべきではないか?」
「それはできん。仮に外へ出られたとして、どこで武器を補充できるというのだ? この極寒の地では、街はおろか鍛冶場すらないぞ」
皆の間に不安が広がる。問題は武器の消耗だけではない。携行してきた食料も、底をつき始めていたのだ。
そんな重苦しい空気の中、ラバァルがこともなげに言った。
「心配するな。食料なら、そこに転がっているだろう」
ラバァルはそう言うと、先ほど倒したばかりのミノタウロスに近づき、その太い脚をナイフで手際よく切り落とした。そして、ラージンに頼んで魔法で火を起こしてもらうと、慣れた手つきで肉に塩を振りかけ、焼き始めたのだ。
「うそ……!? まさか、それを食べる気なの?」
ロゼッタが信じられないといった表情で問いかける。
ラバァルはそんな彼女にふっと笑いかけると、こんがりと焼けたミノタウロスの太もも肉に、平然とかぶりついた。そして、ワイルドにムシャムシャと食べ始める。
最初のうちは、亜人ともいえるミノタウロスの肉を口にする者は、ラバァルの部下たちくらいだった。しかし、ニコルが実に美味そうに肉を頬張る様子を見て、空腹に耐えかねた冒険者の一人が声をかける。
「おい、坊主。それ、うまいのか?」
ニコルはもぐもぐと口を動かしながら答える。
「オジサンも食べてみれば分かるよ。すごく美味しいかって聞かれると……まあ、不味くはない、とだけ言っておくけどね」
その会話を聞きつけ、空腹が限界に達していた者たちから、徐々にミノタウロスに手を伸ばし始めた。
「よーし、俺も食ってみるか!」
「食わず嫌いでは、この先生きのこれんからな!」
それぞれがもっともらしい言い訳を口にしながら、恐る恐る焼けた肉を口にする。すると…。
「なんだ、意外と……いけるじゃないか!」
「ああ、いけるいける! 下手な鹿肉より、よっぽど歯ごたえがあって旨いかもしれんぞ、これ!」
一度口にしてしまえば、抵抗感は薄れるものらしい。冒険者たちは次々にミノタウロスの肉にかぶりつき始めた。
その様子を見て、他の者たちも動き出す。シャナがマルティーナにそっと囁いた。
「マルティーナ様、ここは私どもも我慢して頂戴しましょう。空腹で動けなくなっては、足手まといになってしまいます」
シャナに促され、マルティーナとオクターブも、意を決してミノタウロスの肉を口にした。
そんな一行の様子を横目に見ていたラバァルは、先に腹七分目まで食べ終え、一息つくと、素早く周囲の警戒へと意識を切り替えた。
しばらくすると、ラバァルは不意に動き出し、物陰から接近してきていた新たな獣人の群れを狩り始めた。短剣を巧みに操り、的確に急所を突いていく。既に彼らを『食料』と認識しているためか、肉を無駄に傷つけないよう、最小限の動きで、しかし確実に仕留めていた。
その手際の良さに気づき、ノベル、リバック、ジュリアンの三人が駆けつけた時には、既に戦闘は終わっていた。
「ありゃ、もう終わってる!」ジュリアンが驚きの声を上げる。
リバックは倒された獣人の死体を検分し、感嘆した。
「これは凄いな……。見ろ、全員が一突きで急所を仕留められている。肉にもほとんど損傷がない。まるで、最初から食料にするために、意図して殺傷したかのようだ」
「このレベルの獣人を、ほとんど無傷で……。あの兄ちゃん、一体何者なのよ?」ジュリアンも改めてラバァルの実力に舌を巻く。
そんな三人の元へ、ラバァルが何事もなかったかのように戻ってきた。
「あれ、もう食い終わったのか?」
その呑気な一言に、三人は思わず声を揃えて突っ込んだ。
「それはこっちが言うセリフだっての!」
「さあ、これで食料の補充は十分だろう。悪いが、こいつらも焼いて保存食にできるよう、他の奴らに頼んでおいてくれ」
ラバァルは三人にそう指示すると、ラーバンナーたちがいる方へと戻っていった。
そしてラバァルは、集まった全員に対し、今後の探索方針と、水汲み及び地上への連絡・退路確保のための人員配置を提案した。
「みんな、聞いてくれ。ここまで来るのにかなりの時間を費やし、出現した魔物はほとんど倒してきた。だが、ここからが正念場だ。今、我々が考えるべきは、いかにリスクを低減し、この迷宮を安全かつ確実に攻略するか、ということだ」
ラバァルは現状の課題を挙げる。
「目下の課題は二つ。一つは、消耗・破損した武器にどう対処するか。そしてもう一つは、飲み水の確保だ。水は生命線であり、優先して解決すべき課題だ」
そこで、とラバァルは具体的な指示を出す。
「Bランク冒険者のアンバーとティーバッグ(※キャラ名確認)、それとマーブル兵6名、そして国家魔術師のラージン殿。計9名には、一旦、地上付近まで戻ってもらい、水の補充をお願いしたい。外の雪を溶かせば、十分な量を確保できるだろう」
続けて、護衛部隊の編成を告げる。
「ソドン、ラーバンナー、エルトン、ニコルの4名は、地下4階に待機。水汲み部隊が戻ってきた際に、4階と5階に残存している可能性のある魔物から彼らを護衛するのが役目だ」
「「「「了解」」」」4人が力強く頷く。
「そして、残りのメンバーは、このまま5階の探索を続行し、敵を殲滅しつつ、次の階層への道を探す」
「分かった」他のメンバーも同意する。
方針が決まると、一行はすぐさま行動を開始した。この危険な迷宮では、無駄にできる時間など一秒たりともないことを、誰もが理解していたからだ。
最後まで読んでいただき感謝します、また続きをみかけたら読んで見て下さい。




