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少年達と鉱山 その3

今回も少年達と鉱山の続きです。  

狂獣に襲われる少年達は、強烈な出来事に遭い、ピンチに、

そんな時、鉱山に眠っていたマナ結晶石が共鳴し始めたのだ、

更に魔昌石にも飛び火、続いて離れた所で実験に使われていた大魔晶石までも活性化させる事に!  

        



           その6



タンガは、スペアーの姿が見当たらないことに気づき、不安を募らせながら周囲を見渡し探し始めた、しかしそれらしい人影は見当たらず、もう一度同じ所も見直したのだ。


すると、先ほどは意識がせずスルーしてしまったモノに意識が向いたのだ、それは人影にしては小さい、それが地面にあったのだ、それに意識を向けると、ガツンと殴られる程のショックを受け、

ブルブルと下半身が震えだし、止まらなくなってしまった、言い知れぬ不安はそれが原因だったことを予感させ、更に集中して見る。


地面に倒れている影が、それだと気づく・・・ 



「そんな……」


視線を固定し、震える足で倒れている者に近づいていく。


タンガの心臓は、激しく鼓動を早めていた。


近づくにつれて、体の震えが大きくなっていく。


足の震えも激しくなり、ガクガクと大きく震え始めた。


「どうして……そんな……バカな……」


ガクガクと震え、前に進むことを拒むかのように邪魔をする足を、無理やり前に動かし、倒れている者に近づこうと必死に進む。


さらに近づくと、その者の周りには水たまりができており、魔晶石の光を反射していた。もっと近づき、そして見た。下半身がないのだ……はっきり見えた…… 


「わぁぁぁぁぁ~~~!」「おぇ……おぇぇぇぇ……ぉぉぉぉ……」


もうはっきりと誰なのか理解出来たのだ、それはスペアー。


ついさっきまで一緒にいたはずのスペアーの上半身だ。


幼い頃からいつも一緒に連れ回して遊んでいたスペアーだ。


魔晶石を掘る仕事も一緒に考えてやってきた、弟のように思っていたスペアーの体だったのだ。


ここまで勇気を出し、一切弱みを見せず、怖がることもなくやってきたタンガだったが、倒れたまま全く動かない下半身のないスペアーの姿を見て、嗚咽し始め、胃の中のものをすべて吐き出してしまう。


「うぇぇ……ごぉぇ……ごぉぇ……ごぉぉ……」


「もう何が何だか分からない……これは夢なのか?どうなっちまってるんだ……?」


体が現実を拒否し、ガクガクブルブルを通り越して全身痙攣を引き起こし、震えながら気を失ってしまった。


あまりのショックに、体の防御作用が働きタンガを守ったのだ。


ロスコフとタンガ、二人とも意識を失ってしまった。


しかし、時間の流れは止まってはいない。貪欲な二匹の怪物モグラは、再び姿を現し、二人を食らおうと近づいてきていた。


その間にも、輝いていたマナ結晶石や魔晶石は波動の力を強め、【共鳴】を繰り返し行い、フォルクスたちが実験に使っていた【大魔晶石】までも揺り動かし活性化させている。



フォルクスと共に実験を手伝っていたエクレアとロウ爺さんは、突然輝き出した【大魔晶石】を見て慌てていた。エクレアはフォルクスを守ろうと動き、ロウ爺さんは防御魔法を最大で使用し、輝く大魔晶石を封じ込めようと試みていた。


フォルクスたちのほうでも連鎖した力が働き、そのような状況だったが、ロスコフたちのほうではさらなる上位石が目覚めようとしていた。


フォルクスの研究室でモビリティアームに置かれた【大魔晶石】の輝きと振動は、

守護(ガーディアン・ロウ)】最高レベルの防御魔法【デフェンショ・クィルクルスクリプタEX】を周囲に展開していたにもかかわらず、その防御壁を突き破るほどの大きなエネルギーの塊を放ち、地下に作られた研究室の壁を貫き、直径一メートルほどのトンネルを作り出してしまった。


「なんじゃ、どうなっとる?」


ロウ爺さんの問いに、フォルクスは答えた。


「儂にも分からん。これは一体、何が起こったのか調べんといかん。今日の実験はここまでにしておこう。」


大事が起こってしまったので、とりあえず実験を終了し、フォルクスたち三人の老人たちは上に戻ることにした。


一方、ロスコフから始まった振動が小粒のマナ結晶石を活性化させ、その共鳴が魔晶石に感染、さらに離れたところで実験に使われていた【大魔晶石】を活性化させ、その活性化したエネルギーを放った方向にあったのは、宙に浮くロスコフの体だった。


すごいエネルギーの塊は、地中を突き抜けロスコフに命中すると、何事もなかったかのようにかき消えてしまった。


しかし、先ほどからの共鳴は止まることなく、どんどん大きくなっていく。


そしてついに、連鎖していくその輝きとロスコフから発せられている【共鳴振動】は、【精霊石】にまで成長していたマナ結晶石にまで飛び火した。


原初の頃より少しずつ成長し続けてきたマナ結晶石が、今、目覚める。


何が起こったのか?


それは、この鉱山に眠っていた【精霊石】に宿る【大精霊】を目覚めさせることとなったのだ。


【共鳴振動】を発するロスコフの体からは、すべての精神体が抜け、精霊界へと来ていた。


「この私を目覚めさせた者は誰だ!」


輝きと共に【共鳴振動】するロスコフに、【大精霊】が声をかけてきた。


大精霊の声は、意識のないロスコフのアストラル体、エーテル体、意識体などに直接メッセージを刻み送ってきた。


やがて、ロスコフは意識の世界で【大精霊】と直接話すこととなっていた。


「あれ、私はどうしてここに?」


「そなた、目覚めたか。」


意識が戻り目覚めると、すぐ側に巨大で足のない、本に出てくる魔人のような者がいた。


ロスコフはびっくりしたが、今日はもう何度もびっくりすることや恐ろしい目に遭っていたため、何気に耐性がついていたようで、とりあえず、何を言っているのか質問する。


「えっ?なに?何を言っているのか分かりません。」


しばらく待つが返事がない……


全く意味が分からず、チンプンカンプンだ。


どういうことだろう?


確かタンガとスペアーと共に坑道に入って道に迷ってたはずなんだけど。


そして目が赤く光る怪物に襲われたんだ。


あっ。


記憶を辿ると、生々しい惨劇が思い出される。


「そうだ、スペアーが目の前で噛み千切られたんだ。それからそいつスペアーの下半身を口にくわえて逃げていったんだった。畜生、取り返さなきゃあ。」


そのことを思い出すと、涙があふれ、深い悲しみと怒りが沸き起こる。


すると、巨大な魔人が言った。


「とても辛い経験をしたのだな。」


「えっ?」なぜ?


ロスコフはただそう思考しただけだった。


だが、目の前の巨大魔人は言った。


「そなたの記憶を共有したのだ。そなたから発されておる【共鳴振動】によって小精霊は目覚め、精霊を起こしたのだ。それにより、この私までもが目覚めさせられた。」


「あの、【共鳴振動】って何ですか?」


「なんだと、そんなことも知らんのか!」


「すみません、知りませんでした。」


「まあ良い。教えてやろう。そうだな、どんな存在でも存在している限り、自身の持つ周波数を必ず持っておる。そしてちょうどその周波数が同調し重なり合った瞬間、お互い近くにいることができる。こんなところだろう。」


「周波数?なんだかよく分かりません。」


その様子に、幼いロスコフでは理解できないと判断し、話を切り替えてきた。


「この話はやめておこう。何か他に質問はあるか。」


「それでは現在、ここはどこなのでしょうか?一緒にいたタンガはどうなったんでしょう?」


「ふむ、そなたの友は狂獣と戦っておる。」


「えっ?それじゃあ助けに戻らなくっちゃ。私でも少しは役に立たないと。」


ロスコフは、目の前の巨大な魔人にそう言うと、


「よかろう。先に狂獣を大人しくしてやろう。」


そう言うと、巨大魔人の目が怪しく光り、何度かピカピカと点滅した。



坑道では、スペアーの変わり果てた姿を見たタンガが、あまりのショックに気を失っている。


そこに、一匹の化け物モグラが近づいてきていた。


こいつはスペアーの腹を食い千切り、千切れた下半身を持ち去った憎き敵だ。スペアーの肉を腹に収め、再び獲物を求めてやってきたのだ。


そいつは、気絶しているタンガにゆっくりと近づいていた。


一方、もう一匹の狂獣は、宙に浮かび光り輝くロスコフに狙いを定め、今にも襲いかかろうとしている。



倒れたままのタンガに、死んだばかりのスペアーが、周囲から発せられるマナの光の影響を受け、幽体となりながらも、必死にタンガを起こそうとしていた。


「……」「……」「……!」


幽体のスペアーは、力を振り絞る。すると、マナ結晶石や魔晶石から、大小さまざまな色に輝く光の球が、スペアーに吸い込まれるように集まり、力を貸し与え始める。


その結果、スペアーは気絶したタンガに、見えない力を加えることができたたのだ。物質世界のタンガは、本当に揺り動かされるように動き始めた。


何度か揺り動かされるうちに、タンガはゆっくりと目覚めた。


「んっ、ここは……」


タンガは頭を振り、体を起こした。目の前に、あの化け物モグラが迫っていたのが見えたのだ。


「うわっ、こいつ、また来たのか!」


タンガは慌てて起き上がり、地面に落ちたピッケルに目を向けると、それを掴むために走り出した。


なんとか攻撃を受ける前にピッケルを拾い上げると、タンガはスペアーの仇を思い出し、怒りがこみ上げてきた。


「お前がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


襲い掛かってきた化け物モグラに対し、タンガは避けることなく、逆にピッケルを構えて突進する!


ガシッ!


ギィィィィィィィ!


タンガのピッケルは、化け物モグラの左頬に突き刺さり、そのまま勢いよく振り抜かれた。


しかし、タンガの攻撃は止まらない。振り抜いた勢いで化け物モグラの頬の皮を引き裂くと、さらに勢いを増して、何度もピッケルを叩き込んだ!


タンガの周囲には、淡い光を放つ小精霊たちが集まり、不思議な力を与えていた。


今まで感じたことのない力が湧き上がり、タンガは疲れも息切れも感じることなく、狂ったようにピッケルを振り回した!


戦っているタンガは気づいていなかったが、その姿はまるで勇者のようだった。周囲には光が溢れ、一心不乱に敵を打ち倒していた。


ピッケルにも輝きの力が加わり、とっくに壊れていてもおかしくないはずなのに、化け物モグラの硬い皮と肉を破壊し続けた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!だりゃゃゃゃゃ!」


タンガは無心でピッケルを振るった。ただひたすらに、目の前の仇を討つために。


めちゃくちゃにピッケルを振り回し、全身全霊の攻撃を叩き込んだ。


「俺の大事な、スペアーを……よくも……よくも……」


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……


気づくと、ピッケルは壊れ、柄だけが残っていた。しかし、化け物モグラもすでにボロボロだ。頭から上半身はほとんど原型をとどめておらず、液状化した血と肉が地面に広がっている。気づくと下半身だけが、立ったまま死んでいたのだ。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……


精魂尽き果てるまで戦い抜いたタンガは、その場に崩れ落ちてしまった。


一方、残り一匹となった狂獣は、まだ光り輝くロスコフに狙いを定め、執拗に噛みつこうとしていた。しかし、見えないバリアに阻まれ、逆にダメージを受けていた。知能が低い狂獣は、本能のままに攻撃を繰り返していた。


ボロボロになった牙、口からは涎ではなく血が流れ出ていた。


ドスッ、ドスッ。


何度も攻撃を繰り返したが、見えない壁は狂獣の攻撃を全く寄せ付けなかった。


その時、精霊の主が何かを命じると、鉱山全体のマナ結晶石や魔晶石から、一斉に小精霊たちが飛び出し、狂獣への攻撃を開始する。


ロスコフを狙っている狂獣に対し、小さな精霊たちは合体し、青白い炎を纏った巨大な手の姿となり、狂獣を掴み上げ、勢いよく投げ飛ばした!


ギィィィィィ!


ガシン!


狂獣は坑道の壁に叩きつけられ、悲鳴を上げたのだ。


まだ動く狂獣に対し、間髪入れずに火の玉が発射された!


ボボボボボボーーーー!


【ファイアー・ボール】だ。


ドバァ~ン!


ファイアーボールの直撃を受けた狂獣は、体が四散しながら燃え尽き、骨も残さず灰となった。



最後まで読んでくけた方、ありがとうございます、

良ければ、書く力に成るように評価を宜しくお願いします。   

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