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番外編 冒険者タンガ誕生 その1

今回は、タンガ15才、ロスコフ14才の時のエピソードです、 

本来なら少年達と鉱山の後に入れるべきエピソードなのですが、

後から追加したのでもう手遅れでした。 これはタンガをメインにした話なので

ロスコフはわき役に成ります、港町ホエッチャに行った一行は悪魔討伐の話を

持ちかけられ、それに乗る事になります、舞台は大型船に乗りハイメッシュ島へと向かい

悪魔と戦う予定になっています。

      



 

  

 

  その13

番外編 タンガの旅立ち。




今日は、ロウ爺さんの息子さんが暮らしていると言う、

ワーレン伯爵邸がある『リバイン村』から南西約380㎞進んだ所にある

リバンティン公国唯一ある港町『ホエッチャ』に、タンガと共に連れてきてもらっていた。

 

数日前


ロウ爺さんは、息子さん夫婦に子供が生まれるという知らせを受け、フォルクスにしばらく実験に来られないことを告げにやって来ていた。そこで、港町『ホエッチャ』に行くことを話していたのだ。


するとそこへ、タンガを連れたロスコフがやってきて。いつものように自分の机に向かい、何かを探し始めるロスコフだったが、爺さんたちの話が自然と耳に入ってきてたのだ。何気なく話を聞いていると、タンガの様子がおかしいことに気づいた。


(なんだろう?)


様子を見ていたロスコフは、爺さんたちの話に出てくる港町『ホエッチャ』のことを、特に気にしているように見えたのだ、ロスコフはその事を尋ねることにした。


「ねぇ、タンガ。君はどうして、おじい様たちの会話をそんなに気にしているの?」


そう聞いてみると、タンガが答える。


「うん。俺は15になったら、冒険者になろうと前から決めてたんだ」


「えっ、冒険者だって?」


「そうだ。俺はどうしても強くなりたくて。

どんな相手にも負けない男になると誓ったんだ。」


今度は逆に、子供たちの話を爺さんたちが聞いていた。ロスコフたちがそんな話をしていたので、近くにいた3人の爺さん婆さんの耳にもしっかりと聞こえていたのだ。

そんな話をしてる二人に、エクレア婆さんが口を挟んできた。


「タンガ、お前さんそんなに強くなりたいのかい?」


「うん、エクレア叔母さん。俺はスペアーを無くしてしまったことを、今でも悔やんでる。それは俺が弱かったからだと悔やんでるんだ。」


「馬鹿をお言い。お前さんはよくやったよ。どこの誰があれ以上のことができたと言うんだい?」


「そんなの関係ねぇんだ。誰かと比較しても、スペアーが死んだ時、俺が弱かった事実は変わらねぇ。だから、だから、こんな思いはもうしたくねぇんだ。だから俺は、とびっきり強い誰にも負けない男になって、ロスコフ様を守りたいんだ。」


「くぅ~♫ よく言ってくれたタンガ。儂は、感激しておる。お主にならロスコフの片腕としての役目を任せられる。」


タンガの宣言を聞いたフォルクスは、とても嬉しい気持ちになり、エクレアとロウに言った。


「お前達、有望な少年の助けになってやってくれぬか。タンガは必ず立派な男になるはずだ。儂が保証するぞ」


すると、ロウ爺さんは。


「そんなこと、フォルクス様に言われなくとも分かっておるわい」


続いてエクレア婆さんも。


「何を今更。タンガのことは、私だって以前から贔屓にしとるよ」


「だったら、どうしたら強くなれるか教えてやらぬか!」


「ダメだね。タンガに秘術師の才能はないよ。あったらとうの昔に弟子にしてたよ」


氷門(アイスゲート)のエクレア】からはダメ出しが出された。


続いて【守護(ガーディアン・ロウ)】ことロウ爺さんからは。


「ふむ。タンガの魔法の才は小さいというのは、わしもエクレアの意見と同じじゃ。じゃが、タンガにはそれよりも実戦で役に立つ才能をもっておるぞ。」


「ほ~、それはなんじゃ。言ってみぃ」


フォルクスが催促する。


「ファイテングスピリッツじゃ。ハートじゃよ」


「う~む。ロウよ、しかしだな心だけで敵は倒せんぞ?」


「フォルクス様。ハートが強ければ、やり遂げる力が増しまする。それにタンガはこれからの男なんじゃから、これから実践で鍛えれば、グングン引き延ばせる。そしていつか大陸で知らぬ者はいないほどの強さを持つ男になるのじゃよ」


燃える爺さんからの熱い言葉を受けたタンガは、自分のハートにも火をつけた。


「お~~~し、やってやんぜぇ!」


「こらこら。あんまり力みさすでないロウ。そこまで煽ったのじゃから、何か教えてやることはあるんじゃろうな」


「わかっておるわいエクレア。ちょうど儂は明後日から『ホエッチャ』へ行く。よかったらタンガ、一緒に来んか?」


「えっ、『ホエッチャ』に連れて行ってくれるのかロウ爺!」


「うむ。港町『ホエッチャ』なら、お主の望む冒険者も多くおるじゃろう。確か、冒険者組合に加盟した酒屋もあったはずじゃ。そこで色々話を聞くのも良いかもしれんぞ」


「ロウよ。タンガはまだ15じゃぞ。酒はまだ早いだろう?」


「心配しなくて良い。儂が飲んでやるからのぉ♪ それに、ワシらが15の頃のことを思い出して貰えんかフォルクス様」


「ロウ、それは昔の話だろう。今とは時代が違うぞ」


「何を言うフォルクス様。ワシらは皆、15の頃には樽一杯の酒を飲み干すくらいじゃないと一人前の男にはなれんと言っておったではないか」


「ロウ、タンガを呑み助にするんじゃないよ!」


わっはっは♫


エクレアの指摘を、ロウ爺さんは笑い飛ばした。


「分かっておるわい、お主も年じゃな。心配のし過ぎじゃわい」



そんなこんなで、ロウ爺さんと共に、タンガ、そしてエクレアさんの弟子だというレザリア(18)、さらにはなぜかロスコフまで一緒に、港町『ホエッチャ』にやって来ていた。



レザリアは、ロスコフを守るために、急遽師匠であるエクレアさんに呼び出され、同行するように命じられたそうだ。


港町『ホエッチャ』の人口はおおよそ30万と言われており、リバンティン公国の中では3番目に人口の多い都市だ。


港町なので、主な収入は海産物や、他国から船で運び込まれる外国産の品々を『アンヘイム』まで運ぶことだ。街には、船で他国からやってきた多くの移民が住んでおり、今ではリバンティン公国の人間よりも、他国から流れ着いた移民の方が数が多く、街は色とりどりの人々で溢れかえっていた。


その中には、海賊崩れの者たちや、外国から逃れてきた逃亡者など、様々な悪事を働いてきた者たちも混在している。


中でも、黒鮫団(ブラックシャーク団)と呼ばれる凄腕の傭兵や剣士を含む集団もいるらしく、『ホエッチャ』の執政官、バンフォーレン子爵も、最初の頃は討伐するために多くの兵を送り込み作戦を行っていたが、とにかく動きが掴みづらく、情報を元にあちこち探索しても悉く失敗させられ、多くの兵士が徒労に終わり、ただ費用がかさむだけとなってしまったため、今では警戒はしているものの、表立って行政に対する敵対行為はしてこないことから、必要悪として放置する方針に切り替えたという。


そんな『ホエッチャ』に着くと、まずはロウ爺さんの息子さん夫婦が住む、かなり高い位置に作られた高台の家に向かった。この辺りの家は、皆白い石造りの家で、かなり頑丈そうな作りになっている。


ハリケーンなどが来てもビクともしない丈夫な作りになっているらしく、簡単には壊されないように作られているらしい。


そんな家から飛び出してきたのは、ロウ爺さんの孫だ。年は6つの男の子だ。


ロウ爺さんは、その孫を抱きかかえ、家の中へと入っていった。


すると、すぐに息子さんが顔を出し、挨拶してきた。


「どうも、ロスコフ卿でございますね。父がいつもお世話になっております」


「そんな、お世話になっているのは私たちの方ですから」


ロスコフは、ロウ爺さんの息子さんの顔を見て、あまり似ていないなと思いつつ、世話になっているのは自分の方だと訂正した。


先ほど中へ入ったロウ爺さんが、顔だけ外に出し言った。


「ロスコフ卿、そんなことはどうでもよいじゃろう。さあ、中に入って生まれたばかりの孫の顔を見てやってくれませんか」


それを聞いた息子さんは、「さあ、皆さんお入りください」と促した。


ロスコフたちが家の中へ入ると、息子さんの奥さんが、生まれたばかりの女の子の赤ちゃんを抱きかかえ、ロスコフに挨拶してきた。


「よくいらっしゃいました、ロスコフ卿。父がいつもお世話になっております」


「いえ、お世話になっているのは私の方ですから」


ロスコフは、右手で頭の後ろを掻きながらそう言った。


可愛い赤ん坊と共に、今日という日はロウ爺さんの息子さんの家で終わることとなった。


次の日の朝、朝日が昇る前の時間に、ロウ爺さんにタンガは叩き起こされ、二人は外に出て行った。タンガの横で寝ていたロスコフは、「何しに行ったんだろう?」と思ったが、自分は起こされなかったため、タンガに用事があったのだろうと、あえてついて行くことはしなかった。


しかし、やはり気になりだし、ロスコフは布団から出ると、そっと外へ出ていく。


そして、やって来たのは見晴らしの良い高台だった。


見ると、ロウ爺さんとタンガが何かをしている。近くで見たいのだが、タンガだけに何かを教えているようなので、ロスコフは「あれかな」と思い浮かべ、近くに行くことをやめた。


(あれとは、来る前に話していた、強くなるための指導のことだ)


「よ~し、タンガ。あと300回」


「おっしゃ~!」


タンガへの基礎訓練は始まっていた。


日が昇り、皆も起きた頃になると、朝練を終え、朝食を済ませた。興奮のあまり待ちきれないタンガは、もう外に出て冒険者ギルドへ向かおうとしていた。


「ちょっと待て、タンガ」


元気はつらつ、エネルギー全開のタンガと、もうすぐあの世が近づいているのかもしれないロウ爺さんとでは、エネルギーに差があった。夜明け前からタンガと共に朝練をしていたロウ爺さんは、すでに一日分のエネルギーを使ったのか、行動がとても遅かった。そのため、頭を使い始めて。


「タンガよ、先に行くのは構わんが、場所も知らんじゃろうが、急ぐ出ない、

それに酒場に入るには保護者が必要になるのは分かっとるんだろうな!」


そこを指摘されたタンガは、「じゃ大体の場所を教えてよ。」 


「仕方ないのぉ、海側まで下りてから南に行って人に聞けば知らんでもわかる、

しかしじゃ、知らない町で迷子になってもわしは知らんぞ!」 


迷子になるかもと指摘され、過去に迷子で酷い目にあった経験から、それは不味いと思い、

ムキキとなりながらも、遅いロウ爺さんを待ちながら進むしかない...。


しかし、きつい階段やスロープの作りだ。よく昨日はこれを登ったなと思いつつ、今朝は上から降りているにもかかわらず、カーブしたスロープを降りたり、真っ直ぐな階段を降りたりと、迷路のように細い勾配の道を下っている。


白い壁に囲まれた細い路地を抜け、タンガ達は港へと続く階段を下りて行く、遅れて歩くロウ爺さんを見て。「早く行こうぜ、ロウ爺さん!」タンガが叫ぶ。ロウ爺さんは、「もう少し待ってくれ」と、それに答えた。


まるで山を削り、無理やり家を建てたような光景だ。隙間なく密集した家々は、かつての地形を想像すらさせないほどに作り替えられている。


急斜面の階段を、くねくねと蛇のように曲がりながら降りていくと、そこは港へと続いており、目の前には濃い青色の海が広がっていた。


砂浜はなく、いきなり深い海になっているため、崖崩れなどが起これば、そこに建つ家々はすべて海へと落ちてしまうだろう。


後から聞いた話によると、この辺りの地盤はサンゴでできており、硬い石灰で固まっているため、地盤には長い杭が打ち込まれており、そう簡単に雪崩のように崩れ落ちることはないという。


「ここの建物は、怖い作りだなぁ」


それが、ロスコフの率直な感想だ。


「へいこら、へいこら、へいこら」


朝早くから、S字に大きく曲がりながらの傾斜、と思ったら今度は真っ直ぐ降りたりする階段やスロープを、各家の横に作られた路地のような道を通り、目的地である冒険者ギルド指定の酒場へと向かっていた。


平地のように真っ直ぐ進むことができずに、ただ移動するだけでもかなりの労力を費やすことになっていた。


そんなタンガ一行の前に、突然、奇妙な男たちが現れ、道を塞ぎ、通行を邪魔してきたのだ。そんな相手に、急ぐタンガは怒りの声をあげた。


「なんだ、てめぇら!邪魔だ、どけぇ!」


タンガの怒声が響き渡ると、後ろからついてきていたロスコフとレザリアは、突然の出来事に驚いている。


「どうしたんだ、タンガ?」


さらに後ろから来ていたロウ爺さんも、


「一体、何を騒いでおるんじゃ?」


と言いながら、ゆっくり降りて来る。


「どうしたもこうしたもねぇ!

なんだか分からねぇけど、こいつらがここを塞いでやがんだ!」


「なんじゃと?」


見ると、黒い頭巾を被った若者たちが6人、道を塞いでいるのが見えた。


タンガの説明を聞いたロウ爺さんは、道を塞いでいる者たちを見回すと、


「なんじゃ、お主らは。早くそこをどかんか!」


タンガに続き、ロウ爺さんも退くように言ったのだが、


「へへへへへ」


「ふふふふふふ」


不気味な笑みを浮かべ、ただヘラヘラしているだけで、返事をしようとしない。


「なんだ、こいつら。頭が悪いのか?もしも~し、こ・と・ば・わ・か・る?」


タンガも呆れながら尋ねた。


すると、男たちはニヤリと笑い、


「おめぇら、馬鹿なのか?ここを通りたきゃあ、通行料を払え。一人、銀貨1枚出せば通してやんよ」


そんな要求を出して来た。




「マジか、こいつら。何の時代の人間だよ。頼むから黙って消えてくれよ、ボケッ」


タンガは、本気で怒り始めた。


そんなタンガを落ち着かせなければと、ロスコフはロウ爺さんの方を見た。


「えっ?」


しかし、ロウ爺さんはタンガよりも早く、実力行使に出ていた。


「フンッ」


ロウ爺さんは、目の前にいた者たちの頭上を飛び越え、道を塞いでいた柄の悪そうな者たちの前に躍り出ると、躊躇なく叩きのめし始めた。


ボコッ、バコッ、ドスンッ、ボスンッ、ドカンッ。


その様子を、物陰から見ている者もいた。


さらに、その隠れている者を察知している者もいる。レザリアだ。彼女は、隠れている者に殺意がないことを確認すると、自分よりも若いと思える年齢の者だったので、そのまま観察することにした。


その間にも、ロウ爺さんは武術系の技を使い、素手で悪党たちを叩きのめしてしまった。


先ほどまでのそのそと後ろからついてきていたロウ爺さんとはまるで違う、あまりの早業にタンガは全く動く暇もなく、道を塞いでいた者たちは全員叩きのめされ、地面に倒れてしまった。


「うごっ、俺は一人もやれなかった…」


一人残った柄の悪そうな女は、


「何、やられちゃってんのよ、あんたたち。役立たずねぇ」


そう言うと、今度はこちらに向かって遠吠えを残す。


「この街で、私たちにこんなことしてただじゃ済まされないわよ」


そう言い残すと、後ろに走り出し逃げていったのだ。


「なんだ、ありゃ。格好悪い女だぜ」


タンガは、捨て台詞を吐いて逃げていく女にそう言った。


「負け犬の遠吠えね」


レザリアも、そう切り捨てた。


「ちょっと、ロウ爺さんがそんな事やってしまって良かったんですか?」


ロスコフは、本来ならタンガを抑制する立場にいるはずの大人が、一番最初に手を出したことに驚き、こういうやり方もあるのかと、自分の考えは間違っているのかと色々考え込んでしまう。


「ロスコフ様、行きましょう」


ロスコフは我に返ると、倒れている者たちを避けながら、再び歩き始めた。


港に近づくにつれて、潮の香りが強くなってきた。海面には、忙しそうに飛び交う海鳥たちの姿が見える。彼らは、停泊しているトール船の周りを旋回したり、海面すれすれを滑空したりしながら、餌を探しているようだ。


スロープを下まで降り切ると、目の前には紺碧の海が広がっていた。街路と海面との間には、高低差がかなりあり、砂浜は見当たらない。代わりに、切り立った崖のような地形が、そのまま深海へと続いていて落ちると死ぬかもしれない、ロスコフは危険を感じたのか、端から遠ざかっている。タンガは、怖くないのか、一番端まで行って、真下を見下ろしている、

レザリアさんは、ロスコフの傍らから離れず、黙って横に居た。ロウ爺さんは、先ほど運動したのが原因か、また一人遅れ、降りてきてはいない。

  


何隻かの小型船が行き交い、向こうの方には大型船の船着き場があり、今は2隻の大型船トールシップが停泊しているのが見えている。


港には、様々な国の旗を掲げた船が行き交い、異国の言葉が飛び交っていた。積み上げられた荷物、忙しそうに働く船員たち、そして活気に満ちた港の雰囲気が、タンガの冒険心をくすぐり興奮させている。


その船を近くで見ることになり、初めて大型船を見たロスコフとタンガは、

船の大きさに武者震いをし、興奮を隠しきれずにいた。


「こんな、こんなに凄いのか。なんて大きくて迫力があるんだよ!」


「そうだね、タンガ。あんな大なものが水に浮くなんて、なんて不思議なんだろうね」


タンガはただ、トールシップの大きさに驚き、こんな船で冒険に出られたらと、憧れの眼差しで見ているだけだったが、ロスコフはまた違った見方をしていた。特に浮力のことに興味が向いていた。これだけ大きな船の浮力は、どう制御しているのだろうか。中を見たいという思いが強く湧き上がっていたのだ。


「ねえ、ロウさん。あの船の中を見てみたいんだけど、どうすれば乗せてもらえるのかな?」


「なんじゃと?船に乗りたいのか、ロスコフ様」


ロウ爺さんは少し考えていたが、


「ロスコフ様。今回はタンガの希望を叶えるために、冒険者ギルド指定の酒場へ行く途中なんじゃよ。だから、今はそちらを優先しようと思うのじゃが」


「ロウさん、分かりました。ちょっと中を見てみたかっただけですから、酒場へ行きましょう」


「うむ、すまんのう、ロスコフ様」


ロウ爺さんの言う通り、当初の目的地へ向かうことになり、タンガも船の方からは目を離して冒険者たちが居ると言う、酒場のへ行こうと言うロウ爺さんの方へ寄っていた。


「皆、こっちじゃ」


今度はロウ爺さんの後に続き、ついて行くと、船員たちや冒険者などで外まで溢れかえっている店の前に辿り着く。


そこの看板には、冒険者ギルド組合指定の正規ギルドのマークが入れてあったため、冒険者ならすぐに分かる。


「うげっ、朝っぱらから人がうじゃうじゃと。一体どれだけ人気なんだよ」


「ほんに、こんなに人で溢れとるとは。はて?一体何事があったんじゃろう」


ロウ爺さんは、近くにいた冒険者風の女魔術師に声をかけ、情報を仕入れる。


「すまんのう、若いの。ちょっと聞いてもよいかのう」


「はい、何でしょうか、お爺さん」


「ここは確か冒険者の酒場の筈じゃが、朝っぱらからこの混みようは一体何事なんじゃろうか?」


「あら、お爺さんは知らないのですか?ホエッチャから二日の航海で着くハイメッシュ島に、ドミネートという悪魔が出て、アモラー総督と島を管理していた騎士達が皆殺しにされたんですって。知らせを受けたホエッチャの執政官はアンヘイムへと使いを出したらしく、『公』であるルクトベルグ公爵へと知らせが入り、そこで『公』ルクトベルグ公爵は、冒険者ギルドへ報奨金を出すことでこの事態を片付けようとしているらしく、今日は正式に報奨金の額とギルドへの依頼が行われることになっているから、みんな、いくらの報奨金がかけられたのか見に来ているってとこですね。かく言う私も確認しに来たところです」


「ほ~、悪魔をのう。そりゃあ厄介な相手じゃのう」


そんな話をしているところへ、ホエッチャの行政府から来たのだろう、執政官の命でやって来た王国兵士2名が、さっと酒場から出てきたギルドの者たちの案内で、冒険者ギルド兼酒場の中へと入っていった。


その様子を見ていたタンガやロスコフたちは、事の成り行きを見守っている。


「わぁぁぁぁぁ」


「こいつぁすげぇぞ」


「わぁぁぁぁぁ、なんて額だよ」


しばらくすると、王国兵士2名が出てきて、表に溢れている者たちに大きな声で言った。


「お前たちが待っていた悪魔ドミネート討伐者への報奨金が決まった。ドミネート討伐の証を執政官庁まで持ってきた者には、報奨として30万ゴールドが支払われる。それと、リバンティン公国認定冒険者として、30年間有効の通行許可証が発行される」


「うぉぉぉぉ」


「3万ゴールドだとぉ~♬」 それに対し他の者が「ばっか30万だ間違えぇるな。」   


「きゃっは~、うっそ~、A級の賞金の10倍を超えてるじゃんか♫」


「30年も有効な通行許可証が付くらしいぞ」


その間にも、酒場の中からどよめきが沸き起こっていた。


「なんだ、そんなに凄いのか?」


タンガも、知りたくなってきた。


ロスコフは、「へ~、30万ゴールドとか言ってるよ。そんなに凄いことなのかな?」

などと言っている。


レザリアは、自分と関係ない話にはあまり関心がないようだ。


ロウ爺さんはというと、酒場からぞろぞろと人が出てきたのを見て、


「さあ、タンガ。中に入るぞ」


そう言うと、タンガたちはようやく酒場の中へと入ることができた。




最後まで読んでくれありがとう、また続きを見かけたら宜しくです。

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