無能VS氷の熱排貴
「決まってんだろ、この学校名物『始業試合』」
始業試合を初めて聞いた俺は周りは知ってるのかと思い見渡してみると、皆顔に?を浮かべている
「お前らさっきからなんで喋らないんだ?黙ってたら何もわかんないぞ?」
今ここで動けないクラスの生徒全員がお前の魔術で動けないんだよと言いたげな顔をして懈異を見た
「ん?ああ、そう言えば黙らせたのは俺だったな悪い、『解除』喋っていいぞ」
解除の声とともに喉に課せられていた魔術的ななにかが取れるような感覚がした。俺は喉に触れ違和感がない事を確認して試しに「あーあー」と声を出した。
その声を聞いたクラスメイト達も次々に口を開いて話し始めた。
「やっと喋れる、青璃大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫、ありがとハヤテ」
青璃はそう言って、ニコっと微笑んだ
その二人を見て夜緑くんがあっ、と小さく声を出し
「ハヤテさんに青璃さん?二人とも同じクラスだったんですね」
夜緑くんはどこか緊張が取れた様な顔をして近づいてきた.
それを見ていたと夜緑くんを一瞥してから嫌な男は「おっさんいいから動けるようにしろ」と懈異先生のほうを睨んだ
「先生、すみません。その『始業試合』って何ですか?」始業試合について何も知らない俺は先生にどんなものなのかを聞いてみた。
「始業試合ってのはなそのクラスで簡単に手合わせをしてどの程度まで、出来て、どの位の基礎がなっているのかを1VS1のタイマンで見せてもらおうって魂胆だ」どんな試合なのかを説明し終えた懈異先生は話し終えた最後に「あ、もう動いていいぞ」と言って一息ついた。
動ける様になった俺と嫌な男は、即座に距離をとって間合いを確保し、お互い警戒して睨めあう。
嫌な男は俺に対してまだ殺意を向けていて一向に解く気配がない
そんな一触即発な状況で周りに緊張が伝わり空気がヒリヒリとしているのを肌で感じている
すると、そんな空気をぶち壊すかのように青璃が口を開いた。
「ハヤテー?とえっと名前がわかんないやごめんね、そこのハヤテ睨んでる大きい人も今はやめにしない?ここ教室だし、みんないるからさ」
青璃がとりあえず今はピリピリしないで周りを見て一旦頭を冷やして争いは後々と俺達二人を軽く手で払い今は席に着くように催促した。
その声を聴いて俺達はお互いに構えていた構えを緩め警戒を解き各々席に戻るよーというクラスメイトにも席つくよーと着席を促した。
「おい、そこの青い女」
嫌な男がさっきと変わらず不機嫌だと今にも口に出しそうな顔をして口を開いた
「俺の名前はソビエツカヤ・アルケミラ、20年前に貴様らの日本、イギリスの同盟により敗戦した北国の落ちぶれた貴族だ」嫌な男改めてアルケミラは自分の名前と経緯について顔を険しくして忌々しそうに語った。
アルケミラの自己紹介を聞いたクラスメイトの一部が「ソビエツカヤってあの旧ロシアが負ける要因を作ったっていうあの?」一人のクラスメイトがアルケミラを馬鹿にするような声で話すとそれに便乗したもう一人のクラスメイトがあっ!それ知ってるー!と顔を笑顔にしながら楽しそうに会話した「最終的に祖国を裏切ったとして一人の国のお偉いさんの戦犯が降参する為の生贄として用意した女性がそのソビエツカヤで確か名前が『菫』だったよねー?」世界史に詳しい二人組はニコニコと旧ロシア改め新管理下国家露西亜の恐らくは最も屈辱的であろう歴史を掘り返し馬鹿にするようにアルケミラを笑っていた。
それを聞いていた青璃は綺麗な白い顔をどんどん真っ赤にしてその二人を怒った
「君たち!ちょっとその言い方はないんじゃないかな?」
見た目は知り合ったばかりのほんわかしている青璃だがその声には確かに怒りの心が籠っていた。
そう言われた生徒二人は青璃の方を睨み付け苛立ちを込めた言葉を話した
「はあ?なにあんたぶっっさいくの癖にうるさいわね」最初にアルケミラを馬鹿にした生徒が青璃に暴言を言って続いてバカにした生徒も「なに?これ正論ってやつなんですけどあんたキモイよそういうの」とこちらも苛立ちを見せた。
「それが正論だとしてもアルケミラくんのまえせわざとらしく馬鹿にするような言い方はさすがにないんじゃないの?」青璃はとても怒りのこもった声色でそう言い放ち微かにだが青璃の周りに魔力のオーラのようなものが立ち込めていた。
両方共に静かに怒りを露わにし、空気がピリピリしてきて緊張感というよりは爆発寸前の爆弾を前にしているような焦りを感じた
このままじゃやばいと感じ青璃を止めるべく、口を開こうとするとさっきまで疲れて眠っていた懈異先生がふああと目を覚まし、状況を察して言霊魔術を使用した。
「『黙れ』お前ら血気盛んすぎるだろ、そんなにすぐ始めたいのかよ、始業試合をよお」
懈異先生はどこか嬉しそうにわくわくしているような声で話した
「そんなにしたいならいいぜ、今すぐ始めてやる、お前ら『ついてこい』」
俺達はまた強制的にしゃべることを禁じられた挙句、意思関係なしに試合会場にまで連れていかれたのであった。
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「ここが試合会場か、、、、」武道館位の大きさで天井は筒抜けになっていて、中央に試合をすると思われる場所があり、それを囲うようにたくさんの観客席が用意されていてそこより少し高い場所にあるVIP席のような場所はきらびやかな装飾が施されている。
懈異先生は会場につく少し前に魔術を解いてくれていて先生の判断で今回試合をするのは
俺とアルケミラとなった。さっき言い合いをしていた青璃と生徒二人はお互いに謝って
今は三人仲良く笑いあっていた。
「お前ら、会場についたら自由行動な、試合が終わったら教室もどってこい」
先生は俺たちにそう言って自由時間を与えてくれた。
俺は何で学校初日なのにこんなに人がいるのか疑問に思い、どこから取り出したかわからない酒瓶をラッパ飲みしている先生に声を掛けた
「先生、何で試合会場にこんなたくさんの生徒がいるんですか?」会場はてっきり俺たちだけかと思ったら知らない顔がたくさんありとても賑わっていた。
「そりゃ、俺が集めたからに決まってんだろ、ギャラリーは多いほうが試合は盛り上がるからな」
先生は腹が立つくらいに声を上げて酒瓶片手にゲラゲラ笑いながら「がんばれよー」と一言だけかけて観客席のある階段へ不安定に揺れながら向かっていった。
「俺も気合入れて試合に挑むか」そう自分に言い聞かせ、
腹をくくり、背中に仕込んである仕込み刀を抜き、
出場者用のゲートのほうへ体を向け歩いた
出場者ゲートから会場の試合をする舞台まで続く道を歩いていると観客席のあるあたりからもう歓声が飛び交っていて今の俺の場所からでも熱気が伝わってしまうほどに会場内は大盛り上がりしていた。
歩いているとゲートであろう場所が見えてこの会場が屋上を開けた構造のせいも相まって出口がとてもまぶしく光り輝いていた
その光が差す出口をくぐり抜け舞台に顔を出すと俺の舞台入りに気づいた人たちがさらに「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」と声を大きく上げて大盛り上がりを見せた
アルケミラはもう先に会場入りしていて腕を組み仁王立ちをして後ろで短く縛っていた髪をなびかせ俺の出てくるであろうゲートをジッと睨んで待っていた
「遅かったな、ハヤテ」
落ち着いた声でアルケミラは俺に声をかけ静かに見据えていた。
「悪かったな、ちょいと道に迷っちまって」
アルケミラに数分前凍らされかけ危うく相打ちにになりそうだったのを思い出し少し距離を置き静かに構える
「まった!まった!まった!!!」
雰囲気をぶち壊す声が観客席の方から聞こえその声の主を見る。
その主は走って階段を駆け下りジャンプをすると俺とアルケミラの間に割って入ってきた
「君たち、勝手に始めるのは良くないんじゃないかい」飛んできたその男は俺達両方を見ると後ろに数歩引いて魔道具をもち観客席に振り向き手を広げて自己紹介を始めた
「突然の参戦失礼!!何せ急に決まった試合だ、私たち実況解説部も色々と準備をしていてね、一年生の皆さんはじめまして。私は見守解時こういったイベントの実況と解説をする三年の先輩だ。」見守先輩は俺達一年向けに自己紹介をしてくれたお陰でアルケミラと俺の緊張感が程よく和らいだ感覚がした。
見守先輩の自己紹介を聞いた観客席にいる見守先輩を知っているであろう人たちは盛り上がりを見せ俺がここに来た時より盛り上がっているのを肌でかんじ思わず唾をのんでしまった。
「お集りの皆さん!!せっかくの始業式、これからこの学び舎で学ぶための大切な日!それなのに!くだらない先生方のつまらない話だけではとても、息が苦しいというもの、刺激に欠ける、ハッキリ言ってスタートダッシュからこけている!そうだろう?」見守先輩は高らかに観客席に座っている生徒たちにそう問いかけ場を一気に掌握していく。
「そんな中舞い降りた一つの試合!なんと普通の試合じゃなく、今回の対戦カードは超! Exciting!!
一人はこの世界に生れ落ちてしまった異端! 常識外れ! 魔力なしの無能夙・ハヤテ!!! ともう一人は落ちぶれた旧ロシア改め新管理下国家露西亜の没落貴族にして敗戦の理由を作ったとされる大戦犯!ソビエツカヤ・アルケミラ!! 今回の試合はこの2人!始業式の開始から早くも目の覚める二人の試合!」
この男、見守解時は俺たち2人の事を簡単に会場全体が盛り上がるよう声に抑揚をつけて簡単に説明し、大袈裟な手振りまでしながら紹介をした。
その、力ある説明を聞いた観客席の人達は更なる盛り上がりをみせ、その熱気は試合会場に立っている俺たちにも伝わる程のもので俺は1滴の脂汗を額から流した。
そんな俺とは対照的にアルケミラの周辺はとても冷えきっており観客席から俺とアルケミラがいる舞台に伝わる熱気はアルケミラの周りだけ結晶化していた。
そんな熱気に気圧されかけながらも
俺とアルケミラはお互いに見つめ合い冷静に試合が始まるのを待っていた。
その俺たちに、目を軽く向け、準備が出来ているのを確認すると見守先輩は観客席にら向き直り大きく息を吸って試合開始の掛け声をした
「皆さん、おまたせしました!!!それでは学校始まって早速のダークホース対決、旧ロシアの没落冷鬼か日本が産んだ汚点無能!!それでは!試合開始ぃぃぃぃぃぃ!!!」
ボンッと大きな爆発音と共に開始の宣言が会場全体に響き渡り
その大きな歓声に感化され緊張に似た試合が始まると言う心地良さを覚えた。
俺はアルケミラのいる方向へ駆け出しアルケミラはそれを迎撃しようと周囲に氷の刃を生成した。
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時間は少し遡り
見守解時が舞台に上がってくる少し前
「カケル〜始まるわよ〜」
1人の女が気だるそうにのろのろと歩いてくる男にシャキッとさせるような声で名前を呼んだ。
「うへぇ〜、あの先生また始業式そうそう試合やらせんのかよ、、」
名前を呼ばれた男、カケルは今朝の部活動を終えて数キロメートルはある学校の道やっとの思いで歩き、教室の自分の席2まで辿り着きそこでやっと一息をつけると思ったら朝に出会った部活のメンバーであるハヤテの始業試合が始まるとミサに言われ
急いで試合会場まで走って来たのだ。
同じく走ってきたカケルの親友、タインも同様に息をぜーはーと切らして方で呼吸をしていた。
「カケル、あの懈異だぞ、魔力当たり前の世界が始まって数十年、手の数で数えるくらいしかいなかった魔力なしなんだぜ?そりゃ、試合させるよ」と言い切るとごふっと言いいカケルの肩に寄りかかった。
「懈異のやろうか!だからこんな突拍子も無いことしやがるのかよ」
カケルはどこか苦い顔をしてそういうとタインに「重い」と言って肩によりかかっていた腕を肩からどかすために身体を斜めにして腕を落とした、タインはバランスを崩して字面にゴンッと鈍い音を立て倒れ込んだ。
「まあ、いいじゃない、新入部員の実力これで見定めれるし」
ミサはカケルとタインの事は意に介さず先に行きましょと言いたげな足取りで先に試合会場に入っていった。
「俺らも行くか」
「そうしますか」
二人は気だるそうにのそのそと動きタインはよっこいしょと言いながら重そうな腰をあげてカケルと共にミサの後に続いて試合会場に入っていった。
試合会場は賑わう者とハヤテの対戦相手である外国人を嘲笑する者ので別れていた。
「あら、思ったよりも賑わっているじゃない珍しいわね」
ミサは意外な光景を見渡して驚いた顔をして座れる席を探していた
後に着いてきたカケルとタインも会場を見渡す。
「この場所は特に差別の色が濃いから嫌なんだよ」カケルは露骨に嫌悪感を顔に出し、嘲笑する者達に対して「同じ人間だろ」と隣のタインにしか聞こえない声でどこか悲しそうに呟いた
「仕方ないさ、カケル。この世界はそういう常識で成り立っているんだ、今更常識を変えろってのは難しいだろ」隣に立ったタインも同様に嫌悪感を示し同情するようにカケルの呟きに応えた。
「タイン、それはそうなんだが一人一人の意識の問題だろ?今更終わった戦争の事をずるずると引きづってなんになるんだよ」
そう言ったタインにカケルは納得できなさそうな顔で反論した
タインはそれを聞いて「俺もそう思う」と前置きして言葉を返した
「だがな、1度決められた常識を変えるのはとても難しいことだ。お前は急に信号は青で渡れじゃなくて赤で渡れって言われて体温出来るか?」
「それは、、少し難しいかもな」カケルはタインの問いにうーむ頭の上に沢山ハテナを浮かべ悩まされた。
「それくらい常識なことなんだよ、外国人の非難、差別はこの国でな」タインはまるで自分に言い聞かせるかのようにカケルに言った
カケルとタインは2人で難しいなぁとため息混じりに呟くと席を見つけたミサが前の方でこちらに手を振ってカケルとタインを呼んでいた。
ミサの見つけた席は出入口から少し歩いた所の舞台から近くの場所にありハヤテと対戦相手がよく見える場所にあった。
「よくこんないい所空いてたもんだな珍しい」
カケルはみさの座っている隣にカケルも腰を下ろし後ろに着いてきたタインも座った
「お互い牽制しあってんな」タインは座って早速舞台煮立っている2人を分析し始めた。
「きっとあれじゃないかしら、前だと被害が出るかもって」
ミサはカケルに言葉を返して舞台の2人を凝視する。
この舞台は1度最前列席にまで被害が及んだことがありそれ以降前の方に座るものは減ってったのである。
「なるほどな、だからか」カケルも納得して舞台の2人を見つめる
3人座ってしばらく緊張感のある空気を肌でヒシヒシと感じていると
2人が臨戦態勢に入り試合が始まろうとした。
その時に「まった」と声をかけ会場出入口から試合の解説、実況役の見守解時が舞台に立つ2人の中央に降り立ち一触即発の空気と会場に漂っている緊張感をぶち壊した。
「出てくるのか見守」
タインは見守の登場によりさらに気を引き締め、意識を舞台に集中させた。
「見守先輩が実況解説するって事は今回の試合、相当のものの様ね」同様にミサもスイッチを入れ替える様に声色を変え意識を舞台に注いだ。
「見守が出る大体の試合は大事だもんな」ははっとカケルは笑いながらワクワクした目で舞台の2人を交互に見直した。
見守は軽く自己紹介と今回の参加者を軽く説明し、ために溜めて遂に
試合開始の合図をした。
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(早速こちらに駆け出してくるかハヤテ、、、!)
アルケミラは真正面からこちらに向かってくる男、ハヤテを目で捉え確実に技を当てれるようにロックする。
アルケミラの魔術、『喚起・氷基錬成』はアルケミラ自身の魔力が届く範囲を自由に凍らせる事ができ、また、自身が思った物体をを氷の物体として錬成する事が出来る。
アルケミラは自分の周りに氷の刃を生成し駆け出してくるハヤテに対し迎撃体制を整える。
対するハヤテは特に気にする素振りもなく自前の仕込み刀を利き手である右手に構えアルケミラに向かう。
(この男、ハヤテは怖いもの知らずなのか、?)
アルケミラは自身の祖国が敗戦国というのもあって死に対する恐怖を熱として肌で感じることができる。
(なんなんだこの男は、さっきから恐怖どころか何にも伝わってこない)ただ言われた事を淡々と行う機械のように何も無いハヤテからはそういったものを感じることがない。
アルケミラは生きてきて初めての経験で戸惑いつつも思考してしまう。
アルケミラをよく視ていたハヤテはアルケミラの魔術がどう言ったものかをある程度は予想しており、恐らく自身の頭に関連する魔術の使い手であるアルケミラが一瞬でもほか事を思う素振りをハヤテは見逃すこと無く抜きみの仕込み刀で確実に仕留めるために首を狙い命を狩る為に放たれる超高速の抜刀術から発生する鋭い空気による一筋の斬撃「磨刃」をハヤテは呟き放つ。
剣士でありながら遠距離の技を放ったハヤテにアルケミラは驚きほか事を考えていたせいもあって回避が紙一重になりアルケミラの屈強な首に紙で切ったような傷をつけ血を垂らす。
アルケミラは目の前にいる男はただの無能では無い事を認識して後ろにバックステップし距離を取りつつ周りに生成されていた氷の刃をハヤテに向けて放つ。
ハヤテは迫り来る氷の刃をアルケミラに向かって走る足を1度止め、仕込み刀を振るい氷を斬る。
切られた氷はその場で地面にゴトンと鈍い音が響き、合図かのように静寂に包まれたあと会場はねっきにつつまれる
一瞬の攻防で会場は大盛り上がりを見せる
観客席からは大興奮した声が聞こえてきてその盛り上がりと熱量は凄まじいものになった。
「おおおっとぉ!! これは試合早々にハヤテ選手アルケミラ選手の首を確実に獲る動きを見せました!!!」
「それに対応するかのように首を思いっきりまげギリギリの回避を見せたアルケミラ選手も状況を立て直す為に1度距離を取り改めて間合いを設けたぞ!!!」
「この間わずか数十秒にも満たない殺り取りでこの満足感!!」
「はたして、この後どんな面白い展開になるんでしょうか!! 一挙一動から目が離せませんっ!!!」
見守は観客の歓声に更に盛り上がりをかける為、熱のある声で解説しさらに会場を盛り上がりに湧かせた。
ハヤテの一瞬の攻防をみていたカケル達一行は
「あのハヤテ今完全に首取りにいったよな?! 」
驚いたカケルはその場で立ち上がり横にいるタインとミサに声をかける
「「いったな」」2人はタイミングよくハモらせ立っているカケルに見向きせず舞台の2人を見ながら同じ事を言った。
「いいからカケル、落ち着いて事の顛末を見届けよう。」タインは落ち着いて驚き興奮状態のカケルに言った
「そうだな、あの剣技どこかで見たような感じもあって驚いちまった」カケルは呼吸を整え手自分の席に腰を下ろした。
舞台に立っている二人はお互いに見つめ合いお互いの出方を見ているとハヤテが口を開き言の葉をつむぎ始める
「アルケミラさっきは随分とギリギリの回避だったな?」ハヤテは煽るようにさっきかすり傷を付けたグビの部分を自分の首で見立てて傷のある当たりをとんとんと叩く。
「夙 ハヤテ、お前の剣技見事だ。」
アルケミラは表情を変えることなく賛辞をするがその声色は出会った時の純日本人の無能をバカにするそれではなくちゃんと目の前の敵は自分を殺し得る技術を持つ人間であると認めた声色へと変化していた。
「お前は強い、俺が戦ってきた人間の誰よりもその技術が洗練されている。よほど凄腕の師に恵まれたのだろうな」
アルケミラはハヤテを相手にすることの無い雑魚等ではなく本気で殺りにいかなければ勝てない相手と判断しより一層と魔力を高め周囲に魔術「凍てつく殺意」を広範囲へ広げ戦闘態勢を取る。
「そりゃあ、光栄だなこんな魔力なしに露西亜の大貴族様が全力を出して応えてくれるなんてなぁ?」対するハヤテは煽り口調で返し大袈裟に手振りをして会場を盛り上げる道化を演じつつ、心理内では確実に首を捕れる隙を窺っていた。
(あれが全力じゃないのかアルケミラの野郎っ! まだ隠し球があるのか?)ハヤテは自信が魔力のない雑魚の身である事を充分に理解している。そのため正攻法で勝てるとは思っていない。ハヤテは師から「能力者を相手にする時、一撃で仕留めれなかったら負けと思え」と言われ育ってきている。
(俺は1回負けてんだよアルケミラ)ハヤテは師匠に言われたことを思い出し、心の中でアルケミラに愚痴を吐く。
そんなハヤテも人である為に無能なりの意地を見せる。再び仕込み刀を構え直し観客席の声も聞こえなくなる程に意識を集中させ、アルケミラの出方を伺う。
「おやおや? お互い見つめ合い冷戦状態になってしまいましたァ!」実況・解説の見守は行動しろと言わんばかりの煽り口調で舞台の上に立つ2人に言葉をなげかけつつ。そんな意図があることを知らない観客は舞台の二人のやり取りと、実況・解説の見守の声を聞きより沸き立つ。そんな会場は舞台の二人をよそに熱気に包まれていた。
冷戦状態を破る様にハヤテはステージを周ってアルケミラを横から奇襲するかのように走り出す
「おぉーっとぉ?! 先にこの状況を破ったハヤテ選手!!
ステージ外周を走り出したぞっ!!!」
見守は実況・解説席から身を乗り出し話した。
(さぁ? どうくるかっ! 夙 ハヤテ!)アルケミラはハヤテの行動を制限する為に分厚い氷の壁をハヤテの右と左に展開する。
氷の壁は地面から生える用にハヤテの左右に出現しハヤテの道を制限する。…
「アルケミラ選手! ハヤテ選手の動きに制限をかけるかのように横に氷の壁を出現させたぞぉぉ!!! 」
(厄介だな)
ハヤテの横に出現した氷の壁は見事にハヤテの行動に制限をかけ、真っ直ぐに道なりに進むしか出来なくなっていた。
(このまま進んだら恐らくアイツの魔術の射程範囲一瞬で氷漬け、後退しても恐らく何かしらの仕掛けが発動するだろう。上から出るとしても空中は格好の的になる、どうするか)ハヤテは1度足を止めこの状況の打開策を、冷静に思考した。
「む?ハヤテ選手の行動が止まったぞ?」
(…さぁ、どう出る夙 ハヤテ)
アルケミラはハヤテの動き方を予測し氷を展開、前に進めば「凍てつく殺意」による完全凍結。
後退すればアルケミラ自信による氷の槍の攻撃。
その時、ハヤテが居たあたりの氷の壁がスパッとまるでバターを斬るかのように分厚い氷の壁が斬られ、その本人である夙 ハヤテはアルケミラのいる方目掛けて数分前にアルケミラの首を狙ったものと同じ斬撃を飛ばす。(ッ?! そう来るかっ!)
アルケミラは飛んでくる斬撃を左に飛んで避け、ハヤテに向けて氷の槍を生成し投擲する。
投擲された氷の槍は空を切り真っ直ぐにハヤテを消しさらんと飛んでいく。
氷の槍はジャキッと音を立てまたも真っ二つに斬られる。斬られた氷の槍は行き場を失い地面に触れる前に露散し空気と混ざりキラキラと空に消えていく。(なんだこの違和感?何でさっき斬り落とした時と同じ様に地面に落ちない?)氷の槍は地面に落ちることなく地面に触れず露散した。その違和感、先程の氷の槍とは違うおかしな動き。
「そうかっ! 露散させることによる遠距での攻撃を可能とする魔術か!!」
ハヤテはすぐ気付き対応しようと体をアルケミラのいる所とは反対の方に向きを変え先程斬り伏せた氷の残骸を視認しようとする。
だが、その反応はギリギリのところで間に合わなくアルケミラの術が発動する
「魔術『氷基錬成』霧氷の槍!!」
掛け声と共に空気に混ざっていた氷はハヤテの周りに再び氷の槍としての姿を戻し、飛んできた1本とは違い周囲に複数本の氷の槍を錬成した。
「くそっ!」
ハヤテは氷の槍を薙ぎ払おうと刀を一文字に振るうが対応が間に合わず、ハヤテの後ろに錬成されていた氷の槍の一部が刺さってしまう。
氷の槍はハヤテの左横腹を貫通しハヤテは片膝を着き、地面に伏せてしまう。刺された氷の槍はドロっと溶けて液状に変化し地面にハヤテの傷口の血液と混ざり地面にこぼれ落ちる
「てっめぇ、アルケミラやりやがって」ハヤテは何処かこの命の取り合いを楽しむかのように口から血を流しながらも口角を上げアルケミラを睨む
「貴様の事だそれくらいで倒せると思っておらん」
アルケミラがそう言うとハヤテが砕いた氷の槍はまた露散し、またも氷の槍を錬成した。
「三段構えの術式か! 相当あれはやばいぞ」観客席に居るタインが若干の焦りをみせ舞台を見つめる
「大丈夫だって、ハヤテなら隠し球の一つや二つあるだろ」それに対し楽観的なカケルはハヤテの傷をよそにいけるだろーとタインに言う。
(これは相当ヤバいな)ハヤテは止血の為に傷口を手で押えながら思考する。
(氷の槍は恐らく斬っても斬っても湧き続ける、近づこうにも俺が凍る。だが、何故俺の腹部に刺さった槍は露散しなかった?)思考するハヤテを意に介さず、氷の槍はまたも命を狩り取ろうと迫る。
「うっとうしい!」ハヤテはその場でジャンプし氷の槍を回避すると
握っていた刀を左腹部の傷口に刺す。
「ごふっ」ハヤテは逆流した血液により吐血する。
「ハヤテ選手まさかの行動にでたァァ!! なんと!自分の傷口に再び刀を差し込んだー!?!?! なにがしたいんだァ?!?!」見守解時は驚き声を上げる
観客席の人間もざわつきだしタインも「何やってんだハヤテ」とボヤき、そんな奇行を行ったハヤテをただ黙って見守るカケルとミサ。
舞台上のアルケミラも驚き目を丸くする
「貴様、何をしている?自殺行為だぞ」
アルケミラは驚き心配口調でハヤテに問いかける
「あぁ、これくらい大したことは無いさ」
ハヤテはアルケミラの問で1つ確信を得た。
(こいつは恐らく自分の魔術の弱点を知らない)
(なら、かけてみる価値はある!)
ハヤテは腹部に刺した刀を抜き振るう刀身に着いた血液は振った勢いで飛び散る。
そのまま地面に着地し氷の槍を踏みつけると一気に加速しアルケミラとの距離を詰める。
「速いなっ!だが、その程度!!」対するアルケミラは周囲を冷気で満たし防御を固める。
「斬り伏せる、『磨刃』!」ハヤテは血の着いた刀で斬撃を飛ばす。
「その技、もう見切っている。『氷基錬成』双冰防樺燐!」
アルケミラの周囲に立ち込めていた冷気が徐々に形となり氷の防壁を作り上げていく。
が、それを無視するかのように形成されてる氷の防護壁を斬りアルケミラのめ前まで斬撃が届く
「?!」驚いたアルケミラ 斬撃を避け、次の一手を打つべく氷期錬成を行うが遅い。ハヤテの刀はもうそこまで届いていたのである。
「もらうぜ? その手」アルケミラの真下、膝の辺りにいるハヤテは刀を振り上げ片手を切り落とす。腕は簡単に斬れアルケミラの悲鳴と共に空を舞う。
「うががぁぁぁぁぁぁ!!!! 俺の腕がァァァ!!」切られ他傷口を咄嗟に凍らせたアルケミラは一命を取り留めはしたが隙を逃すほど優しくないハヤテの追撃が迫る。
「『磨刃』その命を斬り伏せろ。」斬撃を飛ばし追い討ち確実に仕留めようと首を狙う。
「ハヤ・ハヤテェェ!! 『氷期錬成』!! 『冰王降臨』!!」
アルケミラの怒りとともに放たれる氷期錬成の奥義、王族の血筋だけが使用することの出来る『氷期錬成』の極致。
アルケミラから溢れ出る膨大な魔力の冷気に当てられハヤテは咄嗟に後方にバックステップによる回避を行う。
「どんなけ隠し玉があるんだよ、、」ハヤテの手札はもう底を尽きかけている。しかし、相手の魔術師は無数の手札。ハヤテは痛感してしまう。この世界における無能の弱さ、手数の少なさを。
アルケミラの魔力は空気を凍らせハヤテの吸う空気は鼻から肺にかけて駆け抜け体を内側から徐々に凍らせていき徐々にだが人の機能を奪い去っていく恐ろしい物に変化していった。
「こいつはやばいな、早期決着が求められそうだ」観客席のタインは冷や汗をかきただただハヤテの無事を願う。
「大丈夫だって、ハヤテなら何とかするさ」対するカケルはどんな状況でも変わらずにこやかにハヤテを真っ直ぐ信じる。
アルケミラは斬られた腕を空にかざして氷で作った手を広げ氷の武器を錬成していく。
その武器の見た目はロシア中世を彷彿とさせるツヴァイヘンダーを思わせる形状をしているが所々変化しておりその大きな剣の先端は鎌のようになっており、剣の柄は氷により固められ、刀身は氷によって形成されているためか形は歪だが全体的にとても大きい。
「おいおい、あんなサイズ片手で使うものじゃないだろ」
アルケミラのそこ知らない怪力に最早引きつつ目前の武器に見蕩れていた。
「うがァァァァァァァ!!!!!」最早理性の欠片も残っていない様子のアルケミラは叫びながら俺に距離を近付けてき、そのツヴァイヘンダーに似た氷の大剣を振り回してくる。
それをいなして攻撃を叩き込もうと空いてる脇腹を斬ろうとするとアルケミラの全身が氷に覆われ防具を錬成させた。
「そんなのありなのかよっ!」
「ーーーーーーーー!!!!」ハヤテの嘆きに応えるかのような声にならない叫び声を上げすぐさま氷の大剣をハヤテに振りかざす。
「ッ!!」ハヤテはそれを刀で受け止める。
「ーーーー!!!!」アルケミラは1度下がり両手持ちに替え、ハヤテを両断するべく真っ直ぐに大剣を振り下ろす。
ハヤテは攻撃を回避すべく回避行動に出ようと横に移動した時
カチカチと音を立てハヤテを囲うように冷気が侵食し、ハヤテの腕が凍り始める。
「ッ?! やっべ」ハヤテは驚きその場に留まるがその隙を逃さない両手持ちになった大剣からくる体重のかかった全身全霊によるアルケミラの一撃がハヤテを捉える。
「この野郎ッ!!」ハヤテは大剣の攻撃を刀で受け止め空いてる手を刀の峰に当て斬られまいと防御に入る。
「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」アルケミラの雄叫びと共に一層力の籠った大剣に膝を着いてしまう。
「うぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」重く身体に響くアルケミラの一撃、膝を地につけて地面が凹見ひび割れる一撃に地面が耐えれなくなってきているのである。
2人の熱い戦いを眺める観客はとても盛り上がり「無能が勝つのか、?!」と声が聞こえたり「露西亜の王族、これほどの実力があるのか」等の声が聞こえ実況の見守も「両者譲らない対決ッ!!お互いがお互いのプライドを懸けた戦い!さぁ!勝つのは無能のハヤテ選手か!! それとも露西亜の王子か!!! 今この瞬間に決着がつこうとしています!!!!」
(勝手なこと抜かしやがって、こちとら大ピンチだっつーの!)ハヤテは内心とても焦っていた。
決めてにかける技がハヤテには無いのである。
生まれた時から無能なハヤテは人を殺す術を師匠から仕込まれてはいるがそれでも猿に武器を持たせたものと等しく、魔術全盛のこの時代にはあまりにも不利すぎるのである。
その為にハヤテは技術を磨き、自衛する手段を何個か持ち合わせ、魔術師を殺す為に殺人術を極めた。
それでもこの世界ではあまりにも無力であり、届かないものであった。
ただ一つ、能力者と無能力者の間において平等なものそれは
人の知恵。無能力者はかの第二次世界大戦より少し前から魔術師を殺すための兵器を開発し、それを使用した。
(迷ってる間にも、こっちが凍り殺されちまう。)
ハヤテは迷っていた。その物を引き抜くかどうか。
今の平和な時代においては遺物であり、異物。
ソレがあるだけで人は簡単に死ぬ。人が沢山死ぬそんな戦争を引き起こさんとする兵器を。
悩むうちに身体はどんどん冷えていき、ハヤテの研ぎ澄まされた感覚はなくなっていき足はもう、ほとんど動かない。アルケミラの体重がかかった重い一撃を耐えるので精一杯。迷ったら殺られる。
命の取り合いはこれほどまでに人を悩ませ禁忌を犯させんとする。ハヤテは迷い決断する。
アルケミラの一撃を受けてる刀で受けたまま身体を少しずらし、力を抜く。その場所に留められていた力が溢れんばかりのスピードで振り下ろされるアルケミラの必殺とも受け取れる重い一撃。それをハヤテは左腕を犠牲にして受ける。
風圧を受けるほどに速い一撃はハヤテの左腕を容易く斬り裂き、その斬られた腕からは大量の赤い血液が溢れ出しハヤテは苦痛に顔を歪めアルケミラの大剣を血に染める。
すぐさまハヤテは内ポケットに隠し持っていた物を引っ張り出す。その物はかの世界大戦において『砂漠の鷲』の名前を持ち、無能力者達が能力者達を殺さんとする為に作り上げた。叡智の輝きである。その輝きに相応しく、その取り出された物は太陽に照らされ銀色に光を反射し会場にいる観客席の目を釘付けにする。
それを見る会場の魔術師達のほとんどはその物がどれだけの危険性があるのかを知らない。知ってる人間は顔に少しの恐怖と忌みを浮かべ、知らない人間は目を丸くしてハヤテの内ポケットから取り出された銀色に光りを反射する物に魅了されていく。
ハヤテはそのL字型にも似た物にある引き金に指をかけ
アルケミラの胸の中心目掛けて発砲する。鈍く響く発砲音と共に放たれた銀色の物体は真っ直ぐアルケミラの胸に目掛けて飛んでいく。その姿は正しく獲物を狩る鷲そのもの。今目の前の獲物を食い破らんと飛んでゆく銀色の物体、アルケミラは警戒し氷の壁を展開するがその程度で防げるものではなく錬成されていく氷の壁をぶち破っていきアルケミラの胸の真ん中も貫き少しばかりの穴を空ける。空いた穴からは先ほどハヤテの腕から流れ出たものと同じ赤くドロドロとした血液が溢れ出し、逆流した血液はアルケミラののど元に溜まり「ごふ」吐血する。
2人のいる間をお互いの血液で赤く染め、2人の濃密な殺し合いの時間がついに幕を下ろした。会場の人間は全員目を丸くし、起きた出来事を凝視する。ハヤテが右手に持つ無能力者によって作られた能力者を殺す兵器をみなまじまじと見つめざわつきだした。そんな中でも職務をまっとうする見守の勝者の名前を呼ぶ声がただただ虚しく澄み渡った空に響き渡るのであった。
なかなか書けなくてごめんなさい。
これからも頑張っていきます