ベスティアの大地〜ジャッカル獣人と同棲する俺が幸せになるまで〜
こんにちは、花浅葱です。
「獣人春の恋祭り」に参加してみました。拙作ですがよろしくお願いします。
ここは、地球ではない世界───地球に住む人間様から見れば、異世界と呼ばれている場所だった。
その世界の名は、ベスティア。
ベスティアにも、多く人間が生活している。いや、人間以外にも蜥蜴人間や、植人族なども人間と共に暮らしている。
だが、この物語の主人公がいるのは街中ではない。この物語の主人公───イブが住んでいるのは人里離れた山奥だった。
***
「ただいまー」
イブ───俺は、街に買い物行ってきて帰ってくる。俺は、自分の家の扉を開ける。すると───
「おかえりなのです!イブさん!」
「ただいま、ステラ」
出迎えてくれたのは、訳あって同居している人型のジャッカル───ステラだった。決して、ステラと付き合っているわけではない。寝室だって別々だ。
彼女は顔や体がジャッカルだからと言って、二足歩行をしているし服だって着る。それに、狩りなんかもしない。
───それもそのはず、彼女も生まれた時は俺と同じ人間だったのだ。
彼女が生まれつき持つとある魔法が暴走し、ジャッカルの姿になってしまったのだ。俺らの世界に蜥蜴人間などはいるが、獣人はステラ以外いないのだ。
「イブさん、今日は何を買ってきたんですか?イブさん!」
ステラは、俺の周りを尻尾を振りながら嬉しそうに走り回る。
「別に、いつもと同じように生活用品だけだよ」
「そうですか…」
ステラは振り回していた尻尾をシュンと下げる。それに連動したかのように彼女のこめかみにある犬耳───いや、ジャッカル耳も下がった。
「ちょっとイブさん!今ステラのことを犬って思いましたね?!」
そう言って、ステラは頬を膨らませる。
彼女は、「犬」や「狼」など別の動物に扱われるのが嫌いなのだ。だから、しっかりジャッカルと言わなければならない。
───もっとも、彼女はこの世界唯一の獣人なので『狼』が含まれる異名で知らされているのだが。
「犬だなんて思ってないよ」
「本当ですか?」
「あ、そうだ。ステラが好きなレタスを買ってきたよ」
「レタス!」
そう言うと、ステラは俺が持っていたバッグを漁る。ステラの好物は、レタスなのだ。
そう、何の変哲もないレタス。あのキャベツに似た緑色の葉物のレタスだ。
何故、レタスが好きかは知らない。いや、何かを好きになることに理由はいらないだろう。
それに、レタスを出せばステラの機嫌が良くなるし話をごまかせるので楽だ。正直チョロい。
「レタス!レタス!」
そんな事を言いながら、ステラはレタスを齧り付いている。真ん丸のレタス───いや、レタスは楕円体だろう。楕円体のレタスのままでステラは食べているという奇怪な光景だが、俺の家では日常茶飯事なのであえて言及はしない。
「レタス、美味しいです!」
ステラは、レタスを頬張り幸せそうな顔を見せる。その姿を見ているだけで、こちらも眼福だった。
「あんまり食べすぎるなよ?」
「わかってますよ、後に取っておきます!」
「そうしておけ」
俺は、彼女の様子を小さなダイニングテーブルの前にあるダイニングチェアに腰掛けながら眺める。
「?どうしたのです?」
「いや、なんでもないよ」
「そうですか…」
俺とステラは数秒ほど見つめ合う。
「そんなにジロジロ見られると恥ずかしいです…」
そう言うと、ステラは視線をズラした。彼女の頬が赤くなっていくのが見て取れた。
***
「ボス、ついに例の獣人の情報が手に入りました!」
「そうか、よくやった…」
とある暗室。ボスと呼ばれた人物と、その子分的存在の人物がいる。ボスの顔は、暗くて見えないが子分的存在の人物は、いかにもゲスと言ったネズミのような顔をしていた。
「獣人は固有魔法を2つ持っているそうです!」
「そうか、それは珍しいな。獣人だけで珍しいと言うのに固有魔法を2つもか…」
固有魔法とは、生まれつき保有している能力のことだ。固有魔法は血筋によって決定する。
それぞれ別の固有魔法持ちが結婚し、両方の遺伝子から固有魔法の情報を受け継いだのだろう。2つの固有魔法を受け継ぐ確率は低いので、かなりレアであった。それに、「世界で一匹の獣人」というレッテルまでもを貼られているのだから、護衛用にも観賞用にも奴隷とすれば、貴族に高い値段で購入してもらえる。
「それで、固有魔法はどんな物か掴めているのか?」
「はい、1つは砂の魔法です。砂を生み出し操ることができると言うやつです。でも、砂の魔法は我々でも使用できる水魔法で完封できます!」
「そうか…ならば、魔術師部隊を集めておけ。獣人ならば捕まえておいて損はない。どこへ出しても高額で買い取って貰えるからな…それで、もう1つの魔法は?」
「それがですね…『狂乱の魔法』と言って、まだ詳しく概要は掴めていないのです…」
「そうなのか…まぁ、いい。剣士部隊も用意しておけばなんとかなるだろう…」
「それは、そうですね。ボスの保有する戦力があれば必ず捕まえることができますよ!」
子分である男は、そんな事を言ってボスをヨイショしている。
「今夜行われるのは、誘拐ではない。狩りだ。獣人を捕まえる準備をしろ!」
「ハッ!」
子分の男は、そう言うとボスの前から姿を消した。子分の男は、顔と同じく足もネズミのように早いのであった。
***
「んじゃ、ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでしたです!」
俺とステラは夕飯の食事を終える。ステラは、食事前に風呂に入っていたからもう寝間着だ。
しっかり、寝間着でも彼女の尻尾をヒョコンと服の間から出ている。もちろん、獣人用の服ではなくオートクチュールだ。作る時は、かなり不信感を抱かれた。
「───それじゃ、俺は風呂に入ってくるよ。」
「はい、いってらっしゃいです!」
俺は、ステラの頭を撫でるとお風呂に向かう。ステラは、頭を撫でると幸せそうな顔をするから、撫でる方も撫でられる方も幸せになれるのだ。皆も、ステラを撫でたほうが───いや、ステラが他の男に触られるのは少し嫌悪感がある。
やはり、ステラを撫でるのは俺の特権だ。まぁ、別に結婚しているという訳でも付き合っているという訳でも無いのだけれどな。
俺は、脱衣場で服を脱いでから風呂に入った。
一方その頃、ステラは───。
「ふんふんふーん、今日も一日楽しかったのです!」
ステラは、見ているこっちも笑顔になれるような笑みを浮かべながら、皿洗いをしていた。料理はイブが作るので、ステラは皿洗いを担当しているのだ。
彼女は、山奥にある家からほとんど外出しないのだが、暇していないようだ。「自分自身が珍しい」というのもわかっていたし、イブに「外に出ると誘拐されるぞ、外に出ちゃ駄目だぞ」と強く言い聞かせられていたからであった。
ステラは、自分とともに生活してくれているイブの事が好きだったし、憧れていたし、信頼していた。
イブが嬉しそうにしているとステラも嬉しかったし、イブが悲しそうにしているとステラも悲しかった。
「明日も、たくさんレタスを食べるのです!」
ステラはそんな事を言いながら最後の皿を洗い終える。洗い終えたカトラリーを乾かすために丁寧に並べていると───、
「ここが、獣人のいる家か?」
「そうみたいです、ボス!」
「え、誰ですか!あなた達!勝手にステラの家に入ってこないでください!」
ステラは、四つん這いになり腰を低くして威嚇するようなポーズを取る。家に入ってきたのは、筋骨隆々とした男だった。黒い髪は角刈りにされていて、左目には眼帯を付けていた。そして、分厚いたらこ唇であった。
「おぉおぉ、威嚇なんかしてやがるぜ。でも、お前の魔法なんかちっとも怖くねぇ。生きて捕えろ、高く売れるからな!」
「「「イエッサー!」」」
「ひ───」
彼女に迫ってくるのは、「ボス」と呼ばれていた男の後ろから現れた大量の取り巻きだった。
彼らは、剣を持つ人達と魔法を行使するために必要な杖───魔法杖を持つ人物の2人に別れていた。
「やめるのです、入ってこないでください!」
”メキメキメキ”
すると、ステラの目の前に砂の壁ができる。これが、ステラの持つ「砂の魔法」であった。
「行け、魔術師部隊!」
「イエッサー!ウォーター、発射!」
ステラの目の前に現れたの砂の壁に、魔術師部隊の人達は魔法で生み出した水をかける。すると「砂の魔法」はサラサラと地面───家の内部なので床にこぼれ落ちていく。
「ふぇぇぇ!どういうことですか!」
目の前で起こった、現象にステラは理解が追いつかない。
「お前ら、捕えろ!」
「サンドボールです!」
彼女は、砂でできた球を魔術師部隊の数人に投げる。だが───
「ウォーター、発射!」
再度、魔法によって生み出された水に相殺されてしまう。
「ぐぬぬ…砂魔法はお掃除が大変ですから使いたくないんですよぉ…」
ステラはそんな事を言っている。
「掃除?それは必要ねぇなぁ!お前は、俺らに捕らえられるのだからよ!」
剣を持った数人の男が、ステラに近付く。ステラは、驚きその場に丸くなってしまった。
「獣人を捕らえました!」
「おい、檻を持ってこい!」
「「イエッサー!」」
ボスと呼ばれていた男がそう言うと、数人の男が、立方体の鋼鉄の檻を持ってやってきた。
「この中に、あの獣人を入れろ!連れて帰るぞ!」
「「イエッサー!」」
「ふぇぇ…怖いですぅ…イブさん、助けてくださいよぉ…」
ステラがそう嘆くも、イブは風呂に入っているので助けに来ない。もし、これが寝室にいたなどと言うのならば騒がしくて出てきていたかもしれないが、風呂でシャワーを浴びているイブはシャワーの音にかき消されてその騒音にも気付けない。
「それじゃ、獣人を檻の中に入れるぞ!」
数人の男が、ステラの四肢を掴み投げるようにして檻の中に入れる。
「や…やめてくださいよぉ!」
ステラが、泣きそうになって叫んだ。すると───
グラッ。
ステラを先程まで掴んでいた男達の視界が揺れる。地震が起こっているのか?いや、違う。
揺れているのは彼ら自身だった。ヘロヘロと左右に体を動かしている。常人には、理解できない行動。
「ひっ!」
数人の男達が、足元を見るとそこにいたのは数匹の白い虫。ミミズやムカデなどと、見ると一種の憎悪感を感じるような虫。それが、自らの体をよじ登っているのだ。
「や…やめろ!やめろやめろ!」
数人の男たちは、突如として暴れ出す。自らの体をよじ登ってくる虫を払おうとして。
「ボスも手伝ってくださいよ、ボス───」
数人の男達の目に映ったのは、ボスではない。牛だった。人間の姿をした牛が見えていた。
「どういうことだぁ?」
数人の男たちは、自らに起こった状況が理解できない。
───それもそのはず、ステラに触れた彼らはもう「狂乱の魔法」の手中に収められているのだから。
「狂乱の魔法」にかかっていないボスや、他の隊員達からすれば先程まで平常だった人物が突如として狂い始めたのであった。その、行動に理解ができない。
「───何をしたんだ?」
ボスは、目の前で何かを踏み潰すような動作をし、暴れている隊員を怪訝な目で見る。
「え、あ…」
ステラは、目の前で起こった行動で自らのトラウマを思い出す。
───自分が魔法を使いこなせなかったせいで、自分の家族が「狂乱の魔法」にかかってしまったことを。
***
ステラの過去───。
彼女は、ベスティアに生まれベスティアで育った。生まれた時、彼女は人間の姿だった。前述した通り、彼女は「狂乱の魔法」のせいでジャッカルの姿になってしまったのだ。
その凄惨な事件を「ジャッカル事件」と呼称することにしよう。
その「ジャッカル事件」の全貌を語るには、あまりに時間が足りなさ過ぎる。故に被害だけ説明しよう。
「ジャッカル事件」にて、1500人以上もの死亡者が出た。魔法にかかり、操られたかのように死んだのだ。
それもそのはず、「狂乱の魔法」は何かを具現化するような魔法───砂の魔法や水の魔法などとは違い、人の精神を操る魔法なのだ。その中でも「狂乱の魔法」は魔法にかかった相手を麻薬中毒者のように精神を狂わせることができるのだ。
その魔法にかかり、1500人以上もの人物が狂い死んだ。そこに含まれるのは、ステラの家族もだ。
ステラの両親も、姉も死んだ。狂ったように、揃いも揃って溺死したのだ。
自分が殺めたという罪悪感や後悔と、家族を失ったという虚無感。そして、皆から大量殺人犯だと向けられる視線。そして、「狂乱の魔法」の副作用によりステラの体は獣───ジャッカルの姿になったのだ。
その後、大勢から責められる彼女を助けてくれる右目が赤い少年───イブと出会い、山に住むこととなった。イブはステラの良き理解者だったのだ。
イブにも「固有魔法」を持っていたらしい。ステラは、イブの固有魔法を見たことがなかったが彼が何らかの固有魔法を持っていることは、感覚で理解できた。
***
「狂ってるやつは、縄でも縛って連れて行け。後で殴って平常に治す」
「「イエッサー!」」
ボスは、部下が狂ってる中でも冷静に判断し命令を出す。その隙にも、ステラは檻に付いている鉄格子の隙間から、指を出して脱出を企てる。
「おい、腕なんか出してんじゃねぇぞ!」
「ひ」
彼女は、ボスと呼ばれている筋骨隆々とした男にどやされて、咄嗟に腕を引っ込めてしまう。
彼女は、この状況で威嚇できるほどの勇敢さは無かった。
「───助けて、イブ…」
ステラは、諦める風呂に入っているイブに助けを乞うことにした。家の奥───浴室のある方向を必死に見つめるも、浴室へと向かう扉から誰かが出てくるような気配はない。
「んじゃ、連れて行くぞ!」
「「「イエッサー!」」」
そのまま、ステラは連れ拐われてしまう。ステラは、立方体の檻の中で小さく丸まってしまう。彼女の目に浮かんだのは、涙。
そして、彼女を入れた檻は数人の男によって外に運ばれて───。
「おい、俺のステラに何をしている?」
「───ッ!」
その声を聞いた瞬間、ステラの耳がピンとそばだった。その心地よい声の主は、イブだった。
***
俺は、風呂に入っているとリビングの方から怒鳴り声がするのが聞こえた。そのまま、風呂から出ていってもステラを人質に取られ脅されるだけだろうから、少し思案して脱衣所で急いで服を着て浴室の窓から外に出た。そして、ステラが入っている檻を見つけたので、声をかけたのだ。
「残念だな、兄ちゃん。オレは貴様に興味はねぇんだ。オレは、この獣人さえいれば文句ないしよ!」
「そうか…今、お前は『死にたい』と言ったんだな?」
「はぁ?そっちはこっちのセリフだぜ?貴様が、オレ達に喧嘩を売って生きて帰れると思うのか?」
ボスらしき、筋骨隆々とした大男はこちらを睨んでいる。
「ハッ、面白い戯言だな。笑わせてくれる」
「───ッ!貴様ら、やってやれ!あんな雑魚の命など一瞬で刈り奪れ!」
「「「イエッサー!」」」
「イブ!」
ステラが、俺の名前を呼ぶ。その目からは、涙がこぼれていた。ステラのことを、泣かせたのはこいつらだった。
…………容赦はしない。
「揺れろ、俺の怒りに共鳴して」
グラッ
突如、地面が揺れる。これは、立ち眩みや目眩なんかじゃない。本物の揺れ───地震だった。
「な…なんなんだこれは!」
相手の一人が、そんな声をあげる。
「飲め」
そう言って、俺は指を鳴らす。すると、突如地面がささくれたように剥ける。そして、そのままそこにいたステラを連れ去ろうとした男達が飲み込まれていく。
───これが、俺の持つ固有魔法である「大地の魔法」であった。
俺らが人里離れた山奥に住んでいた理由は2つ。1つ目は、ステラを周り人の視線から守るため。もう1つは、俺がいくら魔法を使えど被害が出ないようにするため。
「クソッ、お前ら逃げるぞ!」
「この地に足を付ける以上、貴様ら一人足りとも逃しはしない」
そう言って、俺は逃げようとする誘拐犯共を土の中に生き埋めにしていく。流動的に動く大地によって、ステラが入れられている檻を俺の近くにまで連れてきた。
───これで、好き勝手にやれる。
「マズい!」
敵のボスらしき男が、そう声を荒げる。今頃、ステラを奪還されたことに気付いたのだろう。だが、もう遅い。
「逃げ場としてオススメなのは、地獄だぜ」
俺がそう言い放つ。そして。
ゴォォォォォ
山に響く、轟音と共に誘拐犯は一人残らず生き埋めになった。地下深くに埋めたので、帰ってくることはないだろう。これが、俺のステラに手を出した罰だ。
「ステラ、大丈夫か?今開けてやるからな」
俺はそう言うと、「大地の魔法」で大地を操り、鉄格子を折り曲げる。世界の持つ大地のパワーは、どんな力よりも大きかった。すると───
「ふぇぇぇぇぇ!怖かったですぅ!イブさぁぁぁぁん!」
そう言って、ステラは泣きべそをかきながら俺に抱きついてきた。
「イブさぁぁん!ありがとうですぅぅぅぅ!」
ステラは、俺の胸に顔を埋める。俺は風呂上がりにも関わらず、ステラの涙や鼻汁で汚れることは厭わなかった。
「大丈夫だったか、ステラ?ごめんな、怖い思いさせてな」
俺は、ステラの頭を撫でる。ステラの毛並みに沿うように、何度も何度も優しく撫でる。
「んじゃ、家に帰るか───」
そう言って、家に戻ろうとしたが俺らの家も「大地の魔法」に巻き込まれて半壊してしまった。
「お家…ないんですか?」
ステラは、俺に抱きついたまま心配そうな声で聞く。彼女の耳が垂れているあたり、本当に不安なんだろう。
「そう…みたいだな。またどこか遠くで建て直そうか」
「そうですね…」
彼女は、少し申しなさそうに答えた。このままでは、彼女は怖い思いをした挙げ句に、家を壊したと言う罪悪感に駆られてしまうだろう。
「ステラは、何も悪くないから。心配なんてしなくていいんだぞ?」
俺は「大地の魔法」で即席の仮屋を作る。そして、俺とステラの2人でその中に入った。
「わかってます…でも…」
彼女は、何かを言いかけて首を振った。そして───
「あの…イブ…さん、ステラってばドジばっかししちゃうから、あんまし役は立てないかもしれないです…でも、そんなステラと、これからずーっと一緒にいてくれませんか?」
上目遣いで、ステラは俺のことを見る。ステラからの、告白だった。
「───もちろんだ」
俺は、そう言うとステラの唇に自らの唇を重ねる。
───夜空に浮かぶ月が、仮屋の入口から2人を照らしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
【追記】ステラについて。
ステラの獣人化は、「狂乱の魔法」の副作用という旨を記載しました。
自分を含めた皆が、薬物中毒者の視点のように「ステラの姿」だけをジャッカルの獣人として捉えるような感じです。
赤の他人にもこの効果はあります。認識阻害魔法───と表現すればいいでしょうか?
まぁ、某漫画ではサブリミナル効果でカタツムリになるので「狂乱の魔法」でジャッカルの獣人になれどなんら不思議ではございません。
全身動物で二足歩行───がステラの認識としては正しいですね。獣人趣向者にも満足してもらえます。