変わっていく日常を2
今私がいるのは、妃殿下に割り当てられた私的なサロン。目の前にいるのは、もちろん妃殿下。今日のお茶会というのは、妃殿下と二人だけのものである。あの温室以来、妃殿下と一緒に行動することが増えた。お茶会に孤児院の訪問、何故かアーデスト領地の視察にも連れられたりしている。それだけでなく、アーデストの歴史や王族の役割など、講師より更に具体的なものを受けたりと、ここまで教えても大丈夫なのかと問いたくなることまで教えてくれる。厳しくもあるけれど優しくもあるから、妃殿下といることが苦痛に感じたことは一度もない。今日もどんな話を聞けるのか、楽しみにしているほどに。
「今日は予定がないから呼んでしまったけれど…大丈夫だったかしら?休みの日は無理に付き合わなくて良いのよ?」
妃殿下はそう言ってくれたが、昨日の夜に妃殿下付きの侍女から聞いた言伝の際にも同じことを言ってくれていた。『貴女のしたいことがあれば、それを優先して』と。こうして気遣ってくれる優しさを知っているから、私は怖くも苦痛にも感じない。
「いえ、予定はありませんでしたし、妃殿…シリーネ様のお話を聞くのが楽しみなのです。決して無理はしておりません。」
「また妃殿下、と言いかけたわね?そろそろ慣れてちょうだい?」
微笑みながら言うシリーネに、癖が出てしまいました、と私も微笑みながら返す。こんなやり取りが出来るほどに、私はシリーネを慕っている。
「こちらに来てから最近まで妃殿下だったものね、ゆっくりで大丈夫よ。」
以前から名前で良い、と言われてはいたが中々変えられずにいた。シリーネは私から変えるのを待ってくれていたが、待ちきれなくなり、名前でないなら私も考えがあるわ、と言った。そう言った翌日から私が妃殿下、と呼ぶと、カレンティス公爵令嬢、と呼ぶようになったのだ。シリーネ曰く、子供の仕返しをしてしまった、と深く落ち込んでいたが。だがそれが私には思った以上に効いた、今まで親しく呼ばれていたのに急に距離を感じてしまった。変わったのは呼び方だけで、あとは何一つとして変わっていないのに、とても寂しく感じたのを覚えている。それは一週間も経たず、シリーネが寂しそうに、こんなやり方をしてごめんなさいね、と謝り終わった。でも私にも漸く分かった、呼び方だけでこんなにも感じるものが違うのだと。立場の差や年齢が違えど、思うことは同じだった。だから恥ずかしがりながらも、シリーネ様、と呼ぶととても嬉しそうにしていた。そんな経緯があったりした。




