不穏は未だⅡ 4
「クレアの言った呪いの壺に似た、人の血と魔力を媒介にして、絶大な力を得る…『魔呪具』って言うもんが、昔は存在したらしい。」
今も現存しているかは分からないが、と付け足し更に説明してくれる。
「魔呪具は魔法とは違って、個人単位で使うもんじゃない。大勢で魔呪具に血を注ぎ、魔力を流す。効果は魔呪具の種類によるが、本に書いてあったのは一晩にして、一国が地図から消え去った…、ってことかな。」
たった一晩で国を消し去った…、それは今の時代では有り得ないことである。いくら強大な魔力を持つ者がいようとも、相手が魔法を使えずとも、一晩で地図から消えてしまう程の事など出来ない。地図から消えるということは、跡形もなく荒野のようにするということ。それが出来てしまう魔呪具ならば…おそらくは。
「人を操る効果がある物は記載が無かったが、認識阻害に近い作用があれば、そんな物無かったと思わせられる。それに魔呪具自体が現存するか分からないからな、本に載ってないのがあったって不思議じゃない。」
「…叔父上。叔父上としては、魔呪具を使われたと思っておられますか?」
ノイルの言葉を受け止め、ユリウスがゆっくりと問う。ノイルは顎に手を当てながら、言葉を選ぶ。
「可能性はある、ってくらいだ。さっきも言ったように現存するか分からない代物だ、それをならず者が持っていることが腑に落ちない。それこそ裏で手を引いている奴がいなけりゃな。」
それに魔呪具を知らなきゃ意味がない、とも付け足して。本当に可能性の一つ、それも有り得ない方に比重が大きく傾く、と言外に言っているのが分かる。しかしそれでも、可能性の一つとして上がったのは良いことだろう、何の手がかりもないよりは、新しい視点で探すだけでも結果は異なってくるから。
ユリウスはノイルの言葉に頷き、多方面から探ってみる、と言い話は終わる。




